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もしも運命の人に出会えたら  作者: 柳瀬光輝
13/40

調査開始

ブックマーク登録ありがとうございます!(感涙)

最近仕事が忙しくて、書くペース遅くてごめんなさい!

 夢見が悪かった。

 懐中電灯に照らされる、濁った眼球。

 モゾモゾと這い回る蛆と蝿。

 悪夢にうなされ、まともに眠ることもできなかった。

 翌朝、緊急全校集会で、佐東の死が告げられた。

 校長の口調からすると、佐東の死は自殺と断定されているようだ。

 教室に戻ると、私語厳禁と言われた後でアンケート用紙が配られる。


「いじめ実態調査 1.あなたはこの学校でいじめに遭った事がありますか? 2.あなたはこの学校でいじめを目撃したことがありますか? 3.……」

 全て「いいえ」に丸をつける。転校してきたばかりの琴子にわかるわけもない。

 いじめ、ではなかったと思う。

 だが、佐東は確かにグループから浮いていた。

 佐東と唯一、仲が良さそうだったのが櫻子。

 櫻子はグループでもクラスでも中心的な存在だ。

 一人でさみしそうにしている子を見かけると、必ず声をかける。

 実際、琴子も転校初日に櫻子に声をかけてもらったのだ。

 佐東はどう思っていたのだろう。同情される屈辱? それとも、櫻子をただ一人の友達として慕っていたのだろうか。


「原因を突き止めなければなりません」


 そう。住職に言われるまでもない。原因を突き止めなければ、何か恐ろしい事が起きる。そんな予感がする。

 櫻子達は、まだうっすらと黒い霧に包まれている。


 放課後、櫻子が担任に、佐東の通夜や葬儀の日程を聞きに行ったが、身内だけで行うため、学校関係者の参列は一切遠慮して欲しい、と言われているとの事だった。

 オカ研部室に顔を出すと、既に和人と貴史がホワイトボートに何かを書きつけて話し合っていた。

 見てみると、事件のあらましが書かれている。


 1.古森医院の廃業 2月末

 2.肝試し 5/2

 3.佐東 自殺 5/2~5/7?

 4.肝試しメンバー相関図


   田仲  ←友人→  長瀬 

    ↑         ↑

   友人        恋人

    ↓         ↓

  ツツジ森 ←友人→ 八城小路

    ↑

   友人

    ↓

  佐東(死亡)


 5.呪いの元凶 佐東?

 6.呪いを解く方法は?

  ・元凶を突き止め浄化→呪いだけが残る可能性

  ・呪具があれば発見し、破壊

 7.佐東の霊はどこにいるのか?


 相関図では、やはり見事に佐東が輪からはみ出している。

 そしてやはり二人とも、櫻子達に呪いを掛けたのは佐東だと思っているようだ。

「ねえ、ところで、呪具って何?」

 琴子の問いに、貴史が顔を顰めながら答える。

「壺に入った犬の首とか、そんなん」

 ……あぁ。

「ここでうだうだ考えててもしょうがないな。とりあえずカズは古森医院について調べてくれ。どんな事でも。琴子は躑躅森と八城小路に、誰かに恨まれていなかったか聞いてくれ。俺は田仲と長瀬に聞く。あとは……そうだな、佐東の霊が居るとしたらどこだと思う?」

 もし佐東の霊が居るとしたら、それは自宅や学校や、思い入れの深い場所、もしくは思い入れの深い人物の側。……いや、この場合は。

「古森医院」

 自殺者の霊の多くは、自分が命を失った場所に留まっている。

「うん、俺もそう思う。佐東の遺体を発見した時、側に佐東の霊体はいたか?」

 ――――見た記憶は無かった。というか、それどころでは無かったから。

 琴子が首を傾げると、貴史は「また行ってみるしかないか」と呟く。

 できればもう二度とあそこには行きたく無いが、やはりそういう事になるか。

「じゃあ5時に慎二さんのマンション集合」

 琴子の住んでいるマンションでもあるのだが、貴史は勝手に決めてとっとといなくなった。

「私も新聞部に寄ってそのまま帰るね」

 何かをプリントアウトしている和人に声をかけ、新聞部へと向かう。


 櫻子と環奈を呼び出し、誰かに恨まれた覚えは無いかと聞いたが、櫻子は一切心当たり無し。まあ、そうだろう。櫻子を恨むような人がいるとは思えない。明るくてかわいくて優しくて、周りへの気遣いも忘れない。櫻子が恨まれたとしたなら、それはきっと逆恨みとかそんなだ。

 環奈はどこぞの企業の御曹司だの青年実業家だの、数十名の名前を挙げた。見合いを断ったとか、交際を断ったとかで。確かに、金持ちであればそれなりにプライドも高そうだし、呪術師のような人を雇うこともできるかもしれない。だが、それであれば対象は環奈ひとりのはずだ。

 マンションに来た貴史に結果を聞いてみても、やはり同じようなものだった。

 共通して4人を恨んでいるような人物は存在しなかった。

 いや、存在しないわけでは無いのだろう。恐らく本人たちに自覚が無いだけだ。


「それじゃあ、僕のほうの報告だね。一応まとめておいたから見てみて」

 和人が3枚程の用紙を二人に渡す。

 古森医院について調べた結果だ。

 大正12年創業。当初は結核の療養所だったらしい。初代の医院長は古森金蔵。人格者で、お金の無い患者も無償で受け入れていたようだ。廃業したのは、3代目の引退、後継者がいなかったため。

 2枚目の用紙には、創業当時のここらへん一帯の地図、3枚目には、病院で何かを持ち帰って呪われたというような都市伝説がいくつか記載されていた。ただし、古森病院の話では無い。

「ふーん、ここらへん、昔はなんもなかったんだね」

 地図を見ながら、自分の先祖が安いうちにここを買い占めていてくれれば今頃は……などと考えた。

 貴史が溜息を吐いたので、一瞬、自分の考えが見透かされたのかとドキリとする。

「まったく何もわからないな。佐東の霊とっ捕まえて色々聞き出せれば話は早いんだよなぁ」

「これから、行くでしょ? 廃病院。そう言うと思って、ちゃんと準備して来たんだ」

 和人がバックパックをぽんぽんと叩く。

 やっぱりそうなってしまうか。

 琴子も、渋々と準備を始めた。

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