起床
ジリリリリリリリっと荒らしく鳴り響く目覚まし時計の音で僕こと、語間十哉は目を覚ました。
昨日セットした目覚まし時計の時刻は午前六時三十分っと正確な時間を刻んでいた。
「あー・・・」
やる気が出ない
なんか昔の夢見てた気がするけどまったく思い出せない・・・
まぁあ、思い出せないってことは別に大した思い出でもないのだろう
僕は重たい体を無理やり動かし、部屋を出た。
そのまま、右に進み、僕の部屋から三番目の扉を開いた。
「ん?おう、おはよう」
僕が扉を開けると、洗面所には歯磨きをしている先客がいた
彼女の名前は澄川麗奈さん。僕が住んでる『日暮れ荘』の204号室、僕の部屋からして目の前の部屋に住んでる人だ。
整った顔立ちに、すらりとしたウエストかつ高身長。上下共々、真っ黒な色のジャージを着、少し茶色かかった長い髪はポニーテイルに縛っている
「おはようございます。これからランニングですか?」
「そうだよ。いやぁーやっぱ朝はランニングに限るね!」
澄川さんは毎日といっていいほど運動や、体を動かすスポーツをしている運動マニアだ
「どう?明日あたしと走らない?」
「僕、朝弱いんで遠慮しときます」
「連れないなぁ~・・・そうだあたしが毎朝起こしに行ってあげようか?」
「全力でお断りします」
「あ、もしかして、えっちぃこと考えた?十哉君ってやらしぃ~」
「僕が間接技きめられながら、死と生をさまようってとこまで予想できました」
「・・・チッ」
今チッって言った。この人チッって言った。
「んだよぉ~ちょっとくらいえっちぃこと考えてもいいんじゃねーの?別に、起こしてあげるのは建前で、本当は新しい技の開発の実験台にするとか思ってもないのに」
「思ってないならそんな恐ろしいことスラスラ言わないでください」
断ってなかったらさまようどころか即死だったな
「まぁ、いいや、気が向いたら一緒に走ろうぜ。んじゃね」
そういうと澄川さんは出て行った。
ここ日暮れ荘はトイレと洗面所は共同で、お風呂はお隣の古風な銭湯(日暮れ荘住人は半額)を使って過ごしている。
故に朝こうやって誰かと鉢合わせすることは特に珍しいことではない。
むしろそれが普通である。
ちなみに僕的には朝、最初にあったのが澄川さんでちょっと嬉しいとか思っている
「ん?カタちゃんおっはー」
っと、ちょうどブラシに歯磨き粉をつけた時後ろの扉が開き、矢嶋七海さんが入ってきた。
「おはようございます。あれ?今日起きるの早くないですか?」
「いやー違う違う寝ずにちょっとゲームやってて」
言われて見れば矢嶋さんの髪はボサボサで、目の下にクマができていた。
「またですか・・・なんのゲームやってたんですか?」
「どうぶつの森」
徹夜で!?一人で!?普通RPGとかそういうゲームじゃないの!?
「いやーやりだしたらとまんなくなっちゃってーハハハハ」
「いや止めましょうよ!あれ息抜きに買ったって言ってたのに本気でやってどうするんですか!」
きっと今はもう借金返し終えて、数日にはアイテムコンプとかしてるんだろうなこの人・・・
「やっぱ息抜きっていってもゲームだからねぇ~本気になっちゃうのがあたしの性分なんだよねぇ~」
「これがオタクか・・・こわいなぁ・・・」
そう、矢嶋さんは一見、小柄で顔もかわいく、元気っ子な人に見えるが、中身は真正のオタクである。
前に一回矢島さんの部屋を見してもらったが、そこらじゅうアニメのポスターが張られていたり、
壁際一面ある本棚には店一つ経営できるんじゃないかと思われるほどのラノベやDVDがおいてあり、
足場や机やベッドにはアニメ関連の人形やクッションが置いてあるほどのオタク部屋だった。
時折、ラノベを貸してもらうときがあるが、うん、なんというか・・・オタクも悪くないと思う。うん。
「そんないつも徹夜してたらいつか体壊しちゃいますよ?」
「大丈夫大丈夫!あたし超ウルトラハイパーな体でできてるから!」
「なんですかその小学生が考えたような体・・・」
体も胸も小さい分、脳内も幼いらしい。これで僕より年上ってのがおどろk
「グボォア!」
矢嶋さんに鳩尾突きを食らった
これはまずい。なにがまずいってシャレになってない痛みである
立てないこれは立てない。
「なんか失礼なこと言われた気がした。後悔も反省もしてない」
いつの間にか真横にいた矢嶋さんがビーム出せるんじゃないかと言わんばかりに僕をにらんでいた。
なんでこの人この体系でこんな強いの・・・いや僕が弱いのか?
「うわぁ・・・朝からえらいもん見てもた・・・」
と、またまた扉から登場したのは一階の104号室に住む宇陀湊さんだった。
短髪に黒縁メガネ。かなりのイケメンかつ高身長で、この近辺の女性の半数が宇陀さんを狙ってるとか狙ってないとかで有名である
「んー。うあっいおあおう」
「歯磨きしながらしゃべらんでええから。とりまおはよう」
「あー痛み和らいできた・・・ていうか宇陀さんどうしたんですかこんなとこに来て?」
ここ日暮れ荘は一階と二階に分かれており、どちらともに洗面所は完備されている
僕たちは二階に住んでるため、二階の洗面所を使っているが、宇多さんは一階に住んでるので、めったにここの洗面所に顔をださない
「あーせやった。澄川みんかった?」
「澄川さん?さっきランニングにいきましたよ?」
「あー・・・逃げられたか・・・」
宇陀さんは肩を落としその場でため息をついた
「なにかあったんですか?」
「いや、なんもない気にせんでええよ。ほな邪魔したな」
宇陀さんはそういうと手を振りながら出て行った。
「これは・・・まさか色恋沙汰か!?」
いつの間にか歯磨きを終えた矢嶋さんがいつになく目を光らせていた
「いや、なんでそうなるんですか」
「なぜうだっちはスミレンを探しているのか・・・!そう!それは愛の告白をしようとしているからなのだよ!!!うだっちは毎晩毎晩スミレンのこと思って胸をどきどきしていたのさ!そして今日!朝!この気持ちをぶつけようと!そう覚悟してうだっちはスミレンを探してるんだよ!!!!」
「あーそーですねー」
この人の話、というか妄想はほとんど流したほうが吉である
僕は延々と矢嶋さんの妄想暴走を聞きながら歯磨きと洗顔を終え、宇陀さんが南極大陸まで行ったくだりで洗面所を後にした。