お隣の女の子。1
慎之介視点です
小さい頃、隣の兄ちゃんに妹が出来た。母親は一人っ子、父親はイギリス人の俺にとって、赤ん坊というのは未知の存在だったのだけれど、ある日突然現れた赤ん坊は、俺にとってとても印象深く。気付いたら今まで後ろをついて歩いていた兄ちゃんよりも赤ん坊にべったりくっついた。
碧依。
小さな小さな手が俺の指を掴んで笑った瞬間、俺は碧依をなんとしてでも守ろう、と決めたんだ。
碧依が幼稚園に入った頃、同じクラスの男の子に苛められた。碧依は可愛い。それはわかる。けど、だからってそれを苛めていい理由にはならない。よくおばさんに代わって碧依を幼稚園に迎えに行っていたおれはその現場―碧依は、その男の子に水道の水を浴びせられていた―を見て、ゴツン、と一つ頭に拳骨を落とした。一応、手加減して。
碧依を苛めていた男の子は泣き出し、先生に助けを求めたけれど、いくら夏とはいえ水道の水で水浸しになっていた碧依を見て、喧嘩両成敗になった。
碧依が小学5年生くらいのころ、変質者に遭遇した。俺は受験生だったけど、中学校と小学校が隣り合わせだったことをいいことに、俺が迎えに行くまで絶対に一人では帰らないように行って、それから俺の卒業まで一緒に帰宅した。
中学生になると、碧依は一段と綺麗になった。碧依は「私なんか平凡だもん」というけれど、そんなの嘘だ。俺がそれこそ赤ん坊の頃から見てるんだ。可愛くないわけがない。それは幼馴染、の欲目もあるかもしれないけれど客観的に見ても碧依は可愛い。一緒に出かけると、男たちが碧依を見るからよくわかる。けれど、その頃になると俺は大学と、趣味で始めた音楽で忙しくなってしまい、あまり碧依を構わなくなってしまった。
高校は、近所でも有名な女子高に進んだようだった。碧依はもっと可愛い制服が似合うのに、と進路を決めるときに散々口出ししたけれど、結局碧依は自分の意志を通した。女子高だから、変な目には会わないだろう、と安心しているけれどそれでもおばさんに行って防犯ブザーを持ち歩くように言って貰ってる。
そして今の碧依は。
本人は気付いてないけれど近所でも有名な美少女へと変身し、俺のマネージャーがウチの事務所に入ってくれないかなー、と言い続けているのを必死に俺が勝手に拒んでいる。碧依にはこの世界に入ってもらいたくないし、第一あの子にはなりたいものがあるんだから、それを俺が邪魔をしてはいけない。
けれど、碧依が高校にあがった頃、俺の中で碧依への想いが変わった。
中学校のセーラー服から、高校のブレザーに変わった制服を見て、心臓がドキン、と高鳴った。
碧依は可愛くない、と言っていたし、正直もっと可愛い制服の学校はあるけれど、碧依の進んだ高校の制服は、近隣男子からは羨望の的だ。その制服を身に纏った碧依を見て、ただの”妹”から”女性”に変わりー。
俺の心を奪っていった。