お隣の女の子=私。2
今日は水曜日。授業が終われば、私は図書委員として図書室へお仕事をしに向かう。なんとなく、ではあるけれど司書を目指している私にとって図書室は私の身近な将来への夢の指針、と言うかなんというか。
「しつれいしまーす」
図書室の横にある準備室に入ると、司書の先生と国語担当の先生の2人が何かを広げて喋っていた。
「あ、美島さん。鍵はそこだから」
「はーい。で、先生たちはなにを見てるのー?」
高1からずっと図書委員一筋なものだから、この準備室を使っている先生たちとは割と仲がいい。時々漫画の貸し借りをするほどには。
「ああ、ホラ今度の神城慎のドラマの特集」
「ここでも神城慎なのー?」
ホラ、と刺された先を見ればテレビガイド的な雑誌に特集されている神城慎。幼馴染がこうして有名人なのは嬉しいけれど、昔を知っている身としては少々複雑な面もある。まして、神城慎は、本人とは少々かけ離れているのだから。
とはいえ、見慣れた顔とはいえ相手は美男子。イケメンを見るのは正直嫌いじゃない、というか大好きだ。身近にいた男が男なだけに、自分が面食いな自覚は十分ある。自分の7つ離れた実兄よりも慎ちゃんに懐いていたことからもそれは明白だ。
雑誌を見ながらいろいろ話している先生を尻目に、図書室開けますからねー、と宣言して私は図書委員の業務に専念した。
と言っても放課後に図書室に来る生徒は少ない。
だから、貸出カウンターにいる私も読書、もしくは勉強をしながら閉館時間まで時間を潰すのが常である。
授業が終わってから1時間半。それが図書室の放課後の開館時間だ。その時間が終われば図書委員は閉館作業をして、先生にひとこと告げてから帰る。
図書委員の仕事は一応他クラスの生徒と2人一組でやるものだけれど、相手はろくに当番の日に参加したことがない。部活をやっている、と言っていたからそっちを優先しているのかもしれない。私は別に部活に入ってないし、相手は見知らぬ男子生徒だから1人のほうが気楽でいいんよねー。
図書室を出て昇降口へと向かう。途中すれ違った先生に挨拶をして、来た時と同様、チョコレートブラウンの自転車に乗って家に帰る。
朝、偶然会った慎ちゃんはきっと今頃起きてお仕事に行ってるだろう。
こうして、慎ちゃんと私は週に1回会えればいいほうで、情報はTVや周りの人から入手するという生活を送っているのだ。