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私の平穏?2

慎ちゃんから来てる、3件もある着信。思わず何か自分やったかなぁ、なんて思う程度には珍しいこと。私たちの連絡はもっぱらメールが主。それは慎ちゃんの仕事の関係だからなんだけど…。


「掛けなおすべき…?」


携帯片手に思案するけど、寝起きの頭では解決策を導き出してはくれない。それに、掛けてもきっと仕事中だよねー、と考えてしまうと電話なんかできないじゃないか。仕方ない、と思い蘭ちゃんのメールから開封する。

メールの内容は。予想してた通り井上くんのことだった。…うん、後回ししよう。

井上くんのメールは突然ごめんなさい、これからよろしくお願いします、的な内容だった。


さして重要じゃない内容だから、メールの返信は後回ししよう。問題は、着信の方。

携帯を持ったまま、リビングに降りていくと、いつもは帰りの遅いお父さんが珍しくもう家にいた。


「お父さんおかえりー」

「ただいま。ご飯の時くらい、携帯触るのやめなさい」


食事だってのに携帯を持ってリビングに来たことが不満なのか、注意される。いつもなら確かに持ってこないけど、慎ちゃんから電話がかかってくるとなると、緊急事態な気がするんだよね…。


「でも慎ちゃんから電話かかってきてて。掛けたほうがいいかなぁ?」

「慎之介くんが? …ならすぐ掛けなさい」


まったく、お父さんも慎ちゃんには弱いなぁ。と思いながら、ソファに移動して着信履歴から電話をかける。トゥルルルルル、と鳴る電話。1コール、2コール…10コール目になると、さすがにあきらめの境地。15コール目を数えた頃には、さすがに切ろうと携帯を顔から話すと、コール音が消えた。


『もしもし?!』

「慎ちゃん?碧依だけど、電話なんだった?」


急いでたのか、電話の向こうは少し荒い息。


『あー、うん。今日から母さんが父さんのところに行くんだけど、俺明日の夜からまた地方ロケ入るために移動するんだ。だけど、荷物纏める時間ないから碧依…頼まれてくれない?』


慎ちゃんの言葉に、思わずカレンダーを見る。我が家のカレンダーには、お隣さんの上条家がお留守にすることを書かれていることが多い。だから、今回もそうなのかな、とカレンダーを見てみると案の定、今日から1か月ほどおばさんは渡英するようだ。


「ん、わかったー。ないと困るものだけメールで教えてー?」

『Thank You! ホンット悪い!お土産は買ってくるから!』


うーん、相当困ってたんだなぁ。慎ちゃん、スタイルいいから日本製のブランドとかだとボトム系裾足らずになるって言ってたし、仕方ないのかもー。


「ん、わかった。荷物は取りに来るの? それとも届けたほうがいい?」

『あー、ちょっと待って』


坂田さんと相談かな?電話から遠く離れたところで話す声が聞こえてくる。そうだよね、スケジュールの空きがないと取りにも来れないよね。明日は3者面談初日で授業早く終わるから午後からなら荷物届けに行けるけど…。


『悪い、明日授業何時に終わる?』

「1時くらいには終わるよ、明日から3者面談で午前中で授業終わるから」

『…ごめん、明日授業終わったら持ってきてもらっていい? 場所はメールで知らせる』

「仕方ないなぁ。今度、慎ちゃんのオフの日に私とデートね。勿論慎ちゃん持ちで」

『勿論です、お姫様。…ホントありがと。助かるよ』


電話の向こうが少しうるさくなってきた。きっと、今お仕事の合間だもんね。慎ちゃん忙しいなぁ。体崩さないといいけど。


「ん、どういたしまして。じゃ、今から準備しに行くから。忙しいならとりあえず着替えとか色々入れるね。何泊?」

『えーと、とりあえず4日分の着替えをお願いします。ボトムは2着くらいでいいから』


じゃ、慎ちゃんがお気に入りだっていうジーンズと、楽だって言ってたサルエル?でいいかなー。あとは私の好みでチョイスさせていただこう。


「はーい。じゃ、お仕事頑張ってね」

『ん、助かりました。じゃ、イッテキマス』

「イッテラッシャイ」


私がイッテラッシャイ、と言った直後プチ、っと切れる電話。ホントに忙しいんだな~。地方に行く準備をしに帰ってくることすらできないなんて。電話を切って、ポケットに携帯を突っ込んで、鍵かけにかかってる神城家の家のキーを取る。


「慎之介くんは忙しいんだな」

「うん、電話もちょっと慌てて出て、切ったからお仕事の途中だったんじゃないかな。じゃ、お隣行ってくるね」

「そうね、早く戻ってきなさいよ」

「ハーイ」


勝手知ったるお隣の家。

私は約1年ぶりに慎ちゃんのお部屋に入る権利を手にしたのだった。

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