私の災難。3
文章に不可解なところが発見されたので修正いたしました
そう、その時はそれで終わったんだ。
慎ちゃんが助けてくれて、無事エキストラに戻って、与えられたことを終わらせていつも通りの生活に戻った。
はずだった。
中間テストを翌日から控えた日曜日、私の家に来客が来た。
私は自分の部屋で勉強の息抜きと称した読書をしていたけれど、母親も父親も在宅していたから気にせずそのまま読書を続けていた。
だけど、暫くすると階下から『碧依ー』と私を呼ぶ声。
何だろう、とちょっと前に慎ちゃんがくれた猫のブックマークを読んでいた本に挟んで部屋から出た。
「なにー?」
階段を下りると、玄関に見慣れないヒールの靴と、男物の靴。誰のだろう、と思いながらとりあえずリビングのドアを開く。
リビングにあるソファに、何度か会ったことのある慎ちゃんのマネージャーさんと、見慣れない男性。
「…坂田さん?」
「あ、私の名前覚えてくれてるのね。有難う」
にっこり、と薄い茶色のボブを揺らす坂田さんはとっても美人さんだった。
「慎ちゃんのことですか?」
いや、でもそれだったらお隣のおばさんのところに行くだろうしなぁ。なんで此処にいるんだろう。
とりあえず、私もソファに座るとお母さんが坂田さんとその隣にいる男性、お父さんとお母さん、私の分のお茶をテーブルに置いてくれた。
「恐れ入ります」
「ありがとうございます、御馳走になります」
お母さんもソファに座って、自分で入れてきたお茶に口を付ける。私もふーふーして冷ましながらちびちびとお茶を飲む。
「…改めて、突然の来訪、失礼いたしました。わたくし、神城慎のマネージャーをしております坂田しずく、と申します。こちらは、先日お嬢様―碧依さんがエキストラに参加しましたドラマの撮影監督で、プロデューサーの上村智樹です」
「初めまして、上村と申します」
ああ、この人監督さんかー。すっかり記憶から削除していて覚えてなかった。
「碧依の父の、美島大助です」
「母の翠です」
2人の名刺を受取って、お母さんたちがそれぞれ名乗ったけど…一体なんだろう。
だって、ドラマの撮影は終わって、クランクアップしたよ、と慎ちゃんからメールが着たしドラマの最終回もつい先週放送された。私も映っていたけれど、慎ちゃんがメインのドラマの、最後数シーンにしか映らないエキストラ。だからヘマをしたとかそんなのはないだろうし…なんでこの人たちは来たんだろう。
「実は、碧依さんをぜひ今度神城慎が起用されている携帯電話のCMに出演していただきたく、こうしてご挨拶に上がりました」
……………………………えぇ、華麗に忘れてました。
この人、私をCMに起用しようとして私を攫ったんだった。
嗚呼、慎ちゃんに言われて諦めなかったんですね…。