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私の災難。2

腕をつかまれて、連れてこられたのはスタッフさんたちの控室になってるらしい教室の一室。いろいろな機材やら荷物やらが置いてあって、ついついきょろきょろしてしまう。


「突然ごめんねー。ボクは上村って言います、このドラマの監督ね」


そういって差し出された名刺には、上村智樹、と書かれていた。


「美島碧依、です」


名刺を渡された以上、名乗らないわけにはいかない。相手は一応慎ちゃんの仕事仲間なのだし。いただいた名刺をとりあえず、と衣装のセーラー服の胸ポケットにしまう。名刺なんて慎ちゃんのマネージャーさんにもらっただけだから扱いに困るんだよね。


「今度、神城クンが出演するCMの監督もボクがやるんだけど、もしよかったら碧依ちゃんも出ない?」

「お断りします」


即答する。CM撮影に出ないか、とか何言ってんのこの人。―と思っても、頑張って顔には出さない。ものすごく、頑張ってる。


「私は受験生ですし、そんな余裕も暇もありません。私なんかより可愛い子はごまんといますし、わざわざ私じゃなくてもいいじゃないですか」

「お金も出るよ?」

「現状に別に困ってませんし」


いや、正直欲しい本はいっぱいあるけど今はそんなに読んでる暇ないから買ったって積んじゃう一方だし。どうしても我慢できない本だけ買って読んじゃうけど。それに、相手が慎ちゃんってどんなCMなのよ、いったい。第一、慎ちゃんと並んだって120%私見劣りするよ。

それに、慎ちゃんの活躍はTVで見るくらいが一番いい。―私にとって、大事なのは”幼馴染”の慎ちゃんだから。”神城慎”は私の慎ちゃんじゃない。


「うーん、そっかー。キミならCMのコンセプトにも合うと思ったんだけどなぁ」


残念だ、と上村さんがぼやいていると、廊下を走る音と、勢いよく教室の扉が開く音がした、あまりのことに振り替えると、慎ちゃんが必死の形相で立っていた。


「上村さん! 碧依に何言ったんですか!」


せっかくスタイリストさんに決めてもらったであろう衣装も、ヘアメイクさん渾身の差うであろう髪の毛も、走ったことで台無しになってるよ、慎ちゃん…。しかも、碧依って呼んじゃったからせっかく無言で通してたのに、私たちが幼馴染だってばれちゃったじゃない…。私としては確証を持たれたくなかったんだけど。

でも、まぁばれてしまったんだからもういいか。


「慎ちゃん、髪の毛くしゃくしゃになってるよ。あと、シャツ、裾変になってる」

「え、ヘアメイクさんに怒られる」


裾はすぐ治せたけど、髪の毛はそうはいかないもんね…。せいぜい怒られてきてください。私は知らないよ。


「やっぱり幼馴染ちゃんだったか。いやー、今度のウォークマンのCMの共演者にどうかなーって」

「碧依は受験生なんです。撮影に参加するような暇はないんです!第一ウォークマンのCMってもう絵コンテ出してるんでしょう」

「そんなもの、どうにでもする」


…この人、ホントに偉い人?

そう思って思わず慎ちゃんを見上げると、私の気持ちが伝わったのかうん、とうなずかれた。…こういう人たちって変な人が多いのかしら。


「駄目です、碧依は駄目です。もしそれが原因で受験失敗したら上村さんが責任とれるわけじゃないんだし、碧依の今までの努力がたった数日でもし無駄になったら第一俺が上村さんを恨むことになる。―貴方と仕事するの、好きなんですよ」


何かから守ろうとするように、慎ちゃんの腕が伸びてきて抱き締められる。それに安心する―のは少なからず、知らない”大人”を目の前にして私は恐怖を覚えていたんだと思う。そこから、慎ちゃんは私を守ってくれた。



―やっぱり、慎ちゃんは小さい頃から私の王子様だ。

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