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私の災難。1

碧依視点に戻ります

そして、撮影が始まった。

生徒のいる時間が限られているから、とエキストラが必要なシーンから撮るらしく、私たちエキストラに選ばれた生徒は衣装である、普段着ている制服とは違い制服に着替えて、撮影現場となる教室に待機させられている。

時折、廊下で慎ちゃんが撮影スタッフさんと真剣に話してたり、談笑してるのか笑顔だったりして、普段見れない慎ちゃんの姿を見れるのは正直楽しい。


まず、撮影したシーンは私たちエキストラ=生徒が先生の来る前の教室で喋っている映像だった。どんな流れでどういう風に撮るかとか聞いてないけれど、カメラが回っているとなると少し気後れする。一緒にエキストラに選ばれたクラスメイトの戸田さんは、他のクラスの子に部活が一緒だった子がいたらしく、その子と喋っている。私はエキストラの中に知り合い、という存在は正直言って戸田さんだけだったから、彼女がいなくなってしまえば話す相手がいない。教室っぽく見せるため、私物のかばんを持ち込んでいい、と言われていたので私はその中に入れていた読みかけの文庫本を出して、カメラテストを乗り切った。クラスに一人は必ずいるしね―友達と喋らずに、本を読んでる人って。


OKの声がかかると、キャーという悲鳴。慎ちゃんが廊下の窓にべたりと張り付いて様子を見ていたらしい。メインの人間がこんなところにいてどうすんのよ、と思わないでもないけれど、私たちのことが気になったんだろう、と結果づけて私はもう一度本に視線を戻した。

他の子たちは慎ちゃんに近づこうと必死のようだけれど、私は助ける気なんてさらさらないし、自分と慎ちゃんが知り合いだということを知られたくない。あとから文句言われるかもしれないけれど、慎ちゃんには慎ちゃんで捌いてもらおう。仮にも芸能人なんだしー私には実兄よりも甘い”兄”だけど。


暫くすると、カメラテストではなく本番として同じことを要求された。私は本を読むだけだから全然問題ないんだけど―それでも、廊下から私を見てくる慎ちゃんの視線が痛い。


無事、本番も終えてしばしの休憩。撮るシーンは少なくても、それに伴う行程はいろいろと必要らしい。私は主に撮影スタッフさんたちが出入りする前の扉ではなく、後ろの扉からお手洗いに行こうと教室を出た。少し離れたところのお手洗いに入り、用を足してから教室に戻ろうとすると、人のよさそうな感じの、さっきの撮影で指示を出していた人に呼び止められた。


「ねぇ、君」

「……私のことでしょうか?」


パッと見、40前半というところか。と言っても、業界の人は外見と年齢がイコールしない、と慎ちゃんから聞かされていたからこの人はホントはもっと年上かもしれないけれど。


「うん、そう。もしかして、君が神城クンの幼馴染?」

「は?」


…私、今日は一切慎ちゃんと接点持ってませんけども。


「いやー、だって他の子たちは結構神城クンの周りに群がってたけど、君だけ無関心だったし」

「……そうですか」


その気になればいつでも見れた、見慣れた顔に今更キャーキャーするものでもないしなぁ。確かに美形だということは認めるし、私が面食いになった原因だけど。


「それに、神城クンがずっと君のこと見つめてたんだよねー」


…何してんの。ってそういえば隠すどころか堂々と言っちゃった、と言っていたっけ。ああ、面倒くさい。でもこのまま、ハイソウデスと答えていいものか悩んでしまう。答えることで慎ちゃんの仕事の邪魔にならないかな、とかやっぱり気になるわけで。


「あ、無言ってことは肯定ってことでいいんだね。じゃ、ちょっとおじさんとお話しようか」

「え、どういうことですか?」

「大丈夫大丈夫、変なことはしないから。ちょっとこの子と話してくるねー!」


ガシ、と腕をつかまれて、ズンズンと教室から離れて行かされてしまう。視界の中にはびっくりしてる顔の慎ちゃん。


……ほんとにびっくりしてるのは私の方ですから!!!

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