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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

キミにささげる鎮魂歌

掲載日:2026/07/30

本作品は、7/31まで募集している

「第一回AWs小説コンテストぷち(AWsコンぷち1)」

に応募した短編です。

https://www.anotherworlds06.com/campaign/AWsCon/AWsCon1.html


世界観を知らなければ、

初見では少し理解が難しいかと思いますので、

簡単ですが、説明用のTIPSを本編前に書きました。


読まなくても問題ないように本編を書いていますが、

読んだ方が、すんなりと話に入りこめると思います。


TIPS:科学統一世界

 複数の世界観を同時に有するマルチワールド、AWsの世界の一つ。

 科学があらゆる困難、差別、紛争を解決した平和な世界で、

 科学により解決できない “ 神秘 ”を扱う “ 魔女 ” だけは排除対象とされている。

 ――そんな矛盾した未来の世界。


TIPS:魔女

 2016年生まれの少年少女。

 彼らは第二次性徴期以降に “ 魔法 ” を発現する可能性がある。

 それまでは普通の人間と同じ扱いを受けている。


TIPS:魔法

 現実世界を書き換える超常技術。

 魔女は一語で表せる “ 属性 ” とそれにまつわる “ 魔女名 ” を持ち、それに紐づく “ 神秘 ” を使える。


それでは、本編をどうぞ。

科学により、あらゆる困難、差別、紛争が解決された。

そして世界に平和が訪れた。


科学万能主義の巨大連合政府――科学統一政府。

2032年現在、その傘下には、ほぼすべての国家が加入している。


科学がもたらした恩恵は大きい。

政府主導のもと治安は圧倒的に良化し、街から監視カメラが姿を消した。


科学がもたらした恩恵は平和だけではない。利便性もだ。

網膜映像投影型の超小型ARウェアラブル量子通信デバイス “ オーグギア ” 。

イヤーフックやピアス、イヤリング等の形をしたその端末によって、

人々は瞬時に各種情報にアクセスできる。


かくいう私も身につけているんですよ。

左耳につけたダイヤ型の透明なイヤリング。

これが私のオーグギアです。


どうですか?


腰まで届く銀色のゆるふわロングヘアを、耳上でゆるく結んだハーフツイン。

光を受けるたびに少し透ける髪と、アクアマリンの瞳。

水色のキャスケットを被った、華奢で儚い薄幸の美少女。


そんな私によく似合う、とても素敵なイヤリングでしょう。

兄妹で一対のイヤリングになっていて、私のお気に入りなの。


平和で活気にあふれた街並みを眺めていると、

過去に戦争があったなんて、まるでおとぎ話のように感じてしまいます。


それなのに――

この平和な街の喧騒は、どこか自分とは無関係な世界の出来事のようで。

私はキャスケットのつばを軽くおさえながら歩き出しました。


大通りから離れた小路こみちを抜け、オーグギアが示す穴場のカフェへ入ります。

ラテアートが美しい、静かな憩いの場所なんです。


ハート模様のラテアートと、白く透き通るレアチーズケーキ。

午後の陽射しが差し込む窓辺に座り、ゆったりとした時間が流れます。


(贅沢な時間の過ごし方だわ……)


微睡に身を任せようとした、その瞬間――

遠くで、かすかな喧噪が聞こえました。


周囲のお客は誰も気づいていないようです。

もしくは、気にする必要がないのでしょう。


私はコーヒーとケーキを平らげ、音のした方向へ歩き出します。

次第に人の気配が薄れ、喧噪の源へ辿り着いたとき――

そこには、小柄な少女と、それを追う複数の影がいました。


追われている少女は――魔女。

衣服は破れ、全身が傷だらけです。


それを追う影は――魔女狩りの連中。


全身を覆う黒い無縫ローブ「カウナケス」。

閉じた瞼の模様が描かれたフードは顔を完全に隠し、

手には先端に瘤のついた二又の槍「トゥクルの槍」。


顔は見えないのに、

その奥に “ 醜く歪んだ笑顔 ” が浮かんでいることは容易に想像できました。


(やれやれですわ。

 私の待ち人では、なかったみたい。)


科学はあらゆる問題を解決した。

しかし、科学で解決できない “ 神秘 ” を扱う “ 魔女 ” だけは排除対象にされている。

魔女狩りは、警察手帳を持った国家の犬どもだ。わんわん。


魔女――2016年に生まれただけの普通の少年少女。

“ 魔法 ” さえ発現しなければ、普通の人間と同じ扱いを受けて生きていける存在。


少女を襲う畜生どもを前に、

私はマークスマンライフル「SCAR-H」を構えます。

魔女狩りが好んで使う銃の一つです。


(ま、アイツらは街中でこれを使えないんですけどね。

 補給前なので、無駄な弾は打ちたくありませんが……仕方ないですね。)


先頭の魔女狩りに照準を合わせる。

――ワンショット。腹部に命中。

――セカンドショット。後続の頭部に命中。少し逸れました。


十分な威嚇射撃を終えた私は、少女の進路を逆算し、路地裏で待ち構えます。

駆け込んできた彼女の手を引き、通路の奥へと引きずり込みました。


「ご安心なさってください。敵ではありませんよ。」


恐怖で震える彼女に優しく声をかける。


「え……? あ、あの……ありがとうございます! でも、一体どうして……?」


どうして……か。


魔女以外の悪い奴らを駆逐することが俺の使命だ。

だから、本来なら魔女を助ける理由なんてない。


ないはずなのに――

虐げられる彼女に、妹の姿が重なって見える。


俺は、魔女を助けることで、

ヤツらに殺された妹を助けた気になりたいだけなのだろう。


「気にすることはありませんよ。

 私、悪い奴らが大っ嫌いですの!」


彼女にも魔女狩り連中にも、俺の “ 本当の姿 ” は認識できていない。

―― “ 妹の姿 ” で周囲を欺いている、そんな俺の姿は。


「迷惑をかけてはいけない」と同行を拒む彼女と逃避行を続ける。

しかし、数の差は圧倒的で、やがて追い詰められてしまう。


魔女狩りどもは槍で地面を叩き、威圧しながら近づいてくる。

勝利を確信した目。本当に下種な野郎どもだ。


「あ、あの……。

 この子は悪くありません。私が脅して同行させただけです!

 捕まえるなら、私だけにしてください!!」


どうやら彼女は私の心配をしてくれているらしい。

本当に優しい子だ。


彼女の配慮を無駄にしないよう、

俺はゆっくりと魔女狩り連中に近づき、ヤツらの頭に手を触れる。


相手は膝から崩れ落ち、失禁しながら泡を吐く。

叫び声は出ず、短いなき声のあと、静かに壊れていった。


なんということはない。

俺は “ 認識 ” の魔女。

相手の脳に “ 妹の死に際の苦痛を一秒に凝縮して ” 流し込んだだけ。


狩る側と狩られる側が入れ替わった戦場。

全員が正気に戻る前に、俺は魔女狩り全員を倒した。


「え……。

 何が起こって……?」


混乱する彼女に、一言だけ伝えてその場を離れる。


「さきほどは、かばっていただきありがとうございました。

 それでは、待ち合わせがありますので、私はこれで失礼しますね。」


彼女は、何か言いたそうにこちらを見る。

でも、何も言えなかった。

俺が “ 魔女 ” だと気づいたかもしれないが、一緒にいることは危険につながる。



彼女と別れ、少し物思いにふける。


彼女を助けたことを、妹は喜んでくれるだろうか?


妹が殺された日。

妹は、何一つ恨み言を言わなかった。

ただ、静かに俺の名前を呼んで――幸せを願った。


周囲に人がいないことを確認し、俺は魔法を解除する。



街中に監視カメラはない。

しかし、人々のオーグギアの視界情報は政府に共有される。


俺のオーグギアは “ 認識 ” をいじり不都合な情報を渡さないようにしているが、

他人の視界に俺の姿が映るわけにはいかない。


「――記憶は形を変え、世界の姿は揺らぐ。

  “ 認識 ” の力よ、静かに世界を塗り替えろ。」


銀髪の麗しい少女の姿は消え、

黒髪ロングで灰色の目をもつ長身の痩せた男の姿が残る。

左耳にあったイヤリングは、いつの間にか右耳へと付け変わっていた。


「何をしてるんだろうな、俺は。」


魔法を使い続けた代償なのか。

後ろで束ねた黒髪の先端は妹と同じ銀色へと変わり、

声も妹の愛らしい声に近づいていた。


俺という存在が、妹と一つに混ざりあっていく。


――それでも。

――許さない。

――俺はこの世界の在り方を許さない。


妹は魔女狩りに殺された。

悪いことはしていないのに、ただ “ 魔法 ” が使えるだけで。


科学で説明できない “ 神秘 ” を扱う俺達は “ 恐怖 ” であり “ 脅威 ” なのだろう。


人の皮を被った虐殺者たちは言う。

「魔法は科学で解明できず、危険だから排除するしかない」と。


だから俺は、ヤツらに反逆することを決めた。

この世界に対抗することを決めた。


妹が生きていた頃にお世話になったレジスタンス――

アケメネス・ホラの皆には悪いと思っている。


消滅の魔女と呼ばれていた妹が生きていたら、

やさしい彼女は復讐なんて望まないだろう。


だけど、止まるわけにはいかない。


これが俺の――

いや、俺達の戦争だ。



風が吹き、銀色の髪が揺れる――

それは、妹と同じ髪の揺れ方だった。

お読みいただきありがとうございます。

ダークファンタジー風の物語でしたが、少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。


別作品ではありますが告知です。

8月1日には「転生×学園×ダンジョン系」ラブコメを連載予定です。

本作を気に入っていただけた方は、そちらも覗いていただけると励みになります。


よければ高評価とブックマークをお願いします。

今後の作品づくりの糧にさせていただきます。


X(旧Twitter):@yomu_kobo

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― 新着の感想 ―
同じくAWsコンの参加者です。 科学統一政府部門のお題、難しそうだなと思っていたので、世界観を綺麗に踏襲されていてすごいなと感じました。イヤリングの設定も絵になる描写で素敵です! 面白かったです!
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