第2話
使用人として初めての朝が来る。使用人の朝は早い。朝起きてすぐに朝食の準備と屋敷の清掃をまかされる。もちろん料理なんてした事がないのでアンは怒られまくっていた。
「えーと、バターと、ミルクを……」
「アン!遅いぞ!このままじゃ料理が完成するまでに夜になっちまう!とっとと動いてくれ!」
「は、はい!」
かつての使用人から怒られることはアンには少し屈辱的だった。これもあのエミリと言う泥棒猫のせいである。王子も王子だ。きっと騙されているに違いない。彼らの事を考えてイライラしていた。料理もうまくいかない。
「と言ってもどうしたら……」
スマホが震える。
「?」
画面には「効率的対処法を提示。ミルクとバターをかき混ぜてください。そこに薄力粉を入れて混ぜて型に入れて焼くだけです。この時、型にバターを塗るのを忘れずに。」と、あった。
「なるほど!」
AIの言う通りにやってみた。結果うまくいった。
「アン!やればできるじゃないか!流石は元お嬢様だぜ!!」
これには料理長もニッコリである。
「次は掃除……」
掃除なんてやった事がない。使用人の領分だからだ。うまく窓を拭けない。うまく雑巾を絞れない。水でぐちょぐちょになる。
「どうしたら……?」
スマホを見てみる。
「効率的対処法を提示。片手で雑巾を持って片手で雑巾を持ったまま回して見てください。右の角から左の角まで拭いてください。床は北側の通路から右側の通路までを拭いてください。」
「なるほど!」
早速AIの言うとおりにしてみた。雑巾はちゃんと絞れたし、窓も角から角まで拭けた。廊下も効率的に拭くことができた。
「ふふ、私には彼が必要ね!」
アンは無機質な機械に愛着が湧いてきていた。そこに母が現れる。
「アン、頑張っているそうじゃない。応援してるわ!」
「お母様、ありがとうございます。」
「ええ、なれない事ばかりだとは思うけど貴方ならやって行けると信じています!」
「ご期待に添えるように頑張ります!」
2人はふふっと笑いあった。そこに父も現れる。
「おとう……ご主人様。」
「……よく顔を見せられたな!」
「あなた!やめてください!」
父は怒鳴りつけてきたがそれを母が止めた。
「お前などが娘だったと思いたくもないわ!」
「あなた!いいすぎですよ!」
「ふんっ!」
父はギロリとアンを睨んで去っていった。
「もー、素直じゃないのね。」
「?」
「あれで貴方の事心配してるのよ?」
「そう?なの?」
「ええ。」
アンには父の思惑は分からなかった。いつも厳しい父。そんな父が何を考えているのかアンには見当も検討もつかなかった。その後洗濯をする。もちろん初めてでうまく洗えなかった。
「こんな時は!」
スマホを見る。
「効率的対処法を提示します。まず洗濯物を水に濡らして石鹸を擦り付けて布どうしを擦り付けてください。そして、水で流しながら擦り付けてください。それから物干し竿に間隔をあけて干してください。」
「さっすが!頼りになるわ!」
早速言われた通りにやってみる。みるみるうちに山盛りだった、洗濯が無くなっていった。
「ふぅ……やっぱり私の味方は頼りになるわ!」
そこにメイド長が来た。
「仕事は終わったの?……て、ええ?!あの量を初めてでここまで?!」
「全て終わりました!」
「そ、そう、じゃあお昼休憩にしなさい。」
「はい!」
食事のお盆を持って使用人用の部屋に戻る。お嬢様だった頃とは違い狭い部屋だ。そして、味方は彼しかいない。
「はぁ……」
ため息をつきながら食事をする。
「今日はもう疲れたわ……。」
なんて言っているとスマホが震えた。
「お疲れ様です。」
と、画面にある。
「ありがとう。」
その頃、他のメイド達が昼食休憩しながら愚痴っていた。
「何よ、あの子気に食わないわ!」
「元お嬢様だからって優遇されてるんじゃない?」
「こんなに仕事ができるのもおかしいわよ!」
「誰かに助けて貰ってるんじゃない?」
1人のメイドがニタリと笑う。
「ちょっと、痛い目を見てもらうしかないわね……。」




