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序章5:接触 - 学園都市コロニー・ルウム (5) ホテルでの時間

会談予定日の前日。

学園都市ルウムの喧騒に紛れるように、一隻の民間シャトルがひっそりとドッキングベイに降り立った。

ハッチが開き、質素なワンピースに身を包んだ若い女性、ミネバ・ラオ・ザビが降り立つ。

その後ろには、飾り気のない服装のアウロラ・レヴィアが控えていた。


「アウロラ、本当に目立っていないわね?」


ドッキングベイの人波に紛れながら、ミネバは周囲を見回し、小さく声をかけた。

アウロラは冷静に周囲を見渡し、頷いた。


「はい、ミネバ様。服装も一般市民に溶け込んでおり、特に警戒すべき人物は見当たりません。」


二人は、人目を避けるように予約していたホテルへと向かった。

チェックインを済ませ、部屋に入ると、ミネバは窓に歩み寄り、眼下に広がる学園都市の風景を眺めた。

ネオンサインが眩しく、行き交う人々は楽しそうだ。


「…あんな風に、何の心配もなく過ごせるのね。」


ミネバの言葉には、わずかながら羨望の響きが込められていた。

アウロラは、無言で部屋のセキュリティを確認していたが、ミネバの言葉を聞き逃さなかったわけではない。


「ミネバ様も、かつてはそうした日常を送られていました。」


「そうね…」


ミネバは小さく微笑んだ。


「でも、もう戻れないわ。」


そして、振り返り、アウロラを見つめた。


「アウロラ、今日はもう休んでもいいわ。」


「しかし、ミネバ様の護衛は…」


アウロラの返答は、予想通りだった。

ミネバは、少し困ったように眉をひそめた。


「分かっているわ、アウロラ。あなたの忠誠心は、いつも感謝している。でもね、明日は大事な会談でしょう? あなたもゆっくり休んで、万全の状態でいてもらわないと、私が心配なのよ。」


アウロラは、ミネバの言葉をじっと見つめ返した。


「ですが、ミネバ様の安全が第一です。」


ミネバは、優しく微笑んだ。


「もちろん、あなたの安全もよ。それに、ずっと私の影のようにいる必要はないの。少しぐらい、この街を見てきてはどうかしら? 何か面白いものが見つかるかもしれないわ。気分転換にもなるでしょう?」


「しかし…」


アウロラはなおも躊躇した。

ミネバは、少しだけ声を強めた。


「アウロラ、これは命令よ。行ってきなさい。そして、明日に備えて、ゆっくり休むのよ。」


アウロラは、しばらく考え込むように目を伏せた。そして、ゆっくりと顔を上げた。


「…承知いたしました。何かあれば、すぐに連絡いたします。」


ミネバは、ほっとしたように微笑み、アウロラに少額のクレジットを渡した。


「ありがとう、アウロラ。楽しんできてね。」


アウロラは、ミネバに丁寧に一礼すると、部屋を出て行った。

ミネバは、扉が閉まるのを見届けて、ようやく肩の力を抜いた。

アウロラの存在は安心できるが、常に気を遣ってしまう。窓の外の賑やかな風景を眺めながら、ミネバは小さく呟いた。


「少しだけ、私もあの頃に戻りたいわね…」


明日からの会談に向けて、つかの間の休息を噛み締めていた。

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