序章15:接触 - 学園都市コロニー・ルウム (15) シャトルの中の静かなる闘志
ルウムへ向かうシャトルの中。客室とは別の区画に設けられた、臨時の整備スペース。
レオ・ヴァンシュタインは、真紅の機体、シナン・スカーレットの傍で、静かに目を閉じていた。
機体はまだ調整段階にあり、各部の装甲が外され、内部機構が露わになっている。
シナン・スカーレット。
それは、後にシャア・アズナブルが搭乗するシナンジュの試作機として、極秘裏に開発が進められていた機体だった。
サイコフレームは搭載されていないものの、その設計思想は次世代のMSへと繋がる重要なステップとなる。
真紅の機体色は、いつか総帥がこの機体を駆る未来を予感させるようだった。
レオはゆっくりと目を開けると、傍らに控える整備兵に声をかけた。
「各部の反応は?」
「良好です、レオ大尉。エネルギー伝達、スラスターの反応、問題ありません。」
整備兵の報告に、レオは小さく頷いた。
彼は強化人間を嫌悪していた。自身の能力を過信し、機体の性能に頼る者を軽蔑していた。
パイロットの技量こそが戦場の全てだと信じている。
だからこそ、このシナン・スカーレットのような、パイロットの能力を最大限に引き出すことを目指した機体に、特別な思い入れがあった。
「親衛隊の機体の調整はどうだ?」
レオは、整備スペースの隅に格納されている二機のMSに目を向けた。
ヤクト・ドーガとローゼン・ズールの間に位置するような、独特なシルエットを持つ機体。
それが、シャアの親衛隊のために用意された、ロクト・ドールだった。
総帥の身を守る精鋭である彼らの能力を最大限に活かすために、操作性と機動性に重点が置かれている。
「こちらも問題ありません。動力系の最終チェックを終えたところです。」
報告したのは、親衛隊の一人、隻眼の男、ヴォルフ・ランツァーだった。
長年シャアの側近を務めてきた歴戦の勇士であり、レオも厚い信頼を置いている。
「うむ、ご苦労。」
レオはヴォルフに軽く頷くと、もう一人の親衛隊員、長髪の男、エルンスト・ハインリッヒに目をやった。
エルンストは、機体のセンサー類を熱心に調べていた。
冷静で分析力に長けた男で、親衛隊の中でも特に情報収集能力に長けている。
「エルンスト、センサーの調整は念入りに行え。ルウムでは何が起こるか分からん。」
「承知しております、大尉。あらゆる状況に対応できるよう、最善を尽くします。」
エルンストは、静かに答えた。
レオは再びシナン・スカーレットに視線を戻した。
ミネバ・ラオ・ザビ。そして、ビスト財団。
彼らがルウムで何を企んでいるのかは不明だが、いかなる事態にも対応できるよう、準備は怠れない。
シャア総帥がいつ目覚めても良いように、そして、総帥の理想を繋ぐために。
真紅の機体に宿る、静かなる闘志。
ルウムへの到着は、単なる情報収集の始まりではなく、レオ自身の忠誠心と覚悟が試される場となるだろう。
シナン・スカーレット
・(IFストーリーとして)後にシャア・アズナブルが搭乗するシナンジュの試作機として、極秘裏に開発が進められていた機体。
・サイコフレームは搭載されていないものの、その設計思想は次世代のMSへと繋がる重要なステップとなる。
・真紅の機体色




