序章14:接触 - 学園都市コロニー・ルウム (14) ラー・カイラム艦内にて
ルウムへ向かうラー・カイラムの艦内では、それぞれの思惑が交錯していた。
ユウ・カジマは、自身の専用となるラビアント・エクリプスガンダムの調整状況を確認するため、格納庫へと足を運んでいた。
その後ろからは、ジェスタ試作機のテストパイロットであるイアン・クロフォードとセレナ・ロッソがついていく。
格納庫では、メカニックたちが忙しなく作業を進めていた。
アストナージ・メドッソも、ラビアント・エクリプスガンダムの傍で最終チェックを行っている。
「アストナージさん、調子はどうですか?」
ユウが声をかけた。
アストナージは顔を上げ、ニッと笑った。
「ああ、ユウか。ラビアント・エクリプスガンダムは上々の出来だ。アナハイムの連中も、相当な技術を詰め込んだようだな。特に、この機体に搭載されたサイコフレームは、本来ならニュータイプの高い感応波に対応するためのものなんだが…」
ユウは、機体の複雑な機構を興味深そうに見つめた。
「この機体のテストパイロットに選ばれたのは、やはり苦肉の策だったんでしょうね。」
アストナージは、少し複雑な表情になった。
「まあな。連邦軍も、この機体のポテンシャルを最大限に引き出せるニュータイプパイロットを探していたんだが、適任がいなかったらしい。君の卓越した操縦技術と、過去にEXAMシステムに感応したことがあるというデータが決め手になったと聞いている。」
ユウは小さく息をついた。
「EXAMの件は、今となっては良い思い出とは言えませんね。」
「それでも、君の腕は確かだ。ラビアント・エクリプスガンダムの性能を引き出せるのは、君しかいないと上は判断したんだろう。」
アストナージはそう言って、ユウの肩を軽く叩いた。
「期待してるぞ。」
その様子を少し離れた場所から見ていたイアンが、冷静に口を開いた。
「アストナージさん、ジェスタ試作機のほうの調整はいかがでしょうか?」
「ああ、そっちも問題ない。イアンの機体も、セレナの機体も、模擬戦レベルならいつでも出撃できる状態だ。」
アストナージは、ジェスタ・プロトとジェスタ・キャノン・プロトに目を向けながら答えた。
「だが、今回はテストだからな。無理はするなよ。」
セレナが明るく割り込んだ。
「もちろんです! 新しい機体に乗れるのが楽しみで!」
そこに、チェーン・アギが書類を手にやってきた。
「ユウ、イアン、セレナ。艦長から、ルウム到着後のテストスケジュールについて、改めて説明があるそうだ。準備ができたら艦長室へ。」
チェーンは、メカニックたちにも目を配り、指示を出す。
「アストナージ、ラビアント・エクリプスガンダムとジェスタの最終チェックは念入りに頼むわ。今回の任務は、テストだけじゃないかもしれないから。」
アストナージは、チェーンの言葉に頷いた。
「分かってるさ。念には念を入れてやる。」
ユウ、イアン、セレナは顔を見合わせ、頷いた。
艦長からの指示、そしてチェーンの言葉。
ルウムでの任務が、単なる新型機テストだけでは終わらない可能性を感じていた。
それぞれが、期待と緊張感を胸に、艦長室へと向かった。
格納庫には、メカニックたちの作業音が響き、新型機たちが静かにその時を待っていた。
EXAMシステム
システム概要 NTを打倒・駆逐するために作られたソフト・ハード一連の機器のことを指す。
開発経緯
当初、ジオン公国軍のフラナガン機関にてニュータイプ (NT) を研究していたクルスト・モーゼス博士は、NTの驚異的な能力・戦闘力を何とかサポートシステム化し、ジオン戦力の底上げを図る研究をしていた。
その過程において、クルストは研究対象であるNTの能力を知れば知るほどに驚愕し、畏怖や恐怖を経てとある考えに取り付かれるようになる。NTが人類に代わる進化した存在であるのなら、進化に取り残されたオールドタイプ (OT) は、かつて現人類に滅ぼされた旧人類のようにNTに駆逐されるのではないかという強迫観念である。
危機感に駆られたクルストは、やがて研究内容を変更し、OTでもNTを倒せるシステムの開発に着手する。そして、そのシステムはテスト中に発生した偶発的な事故でNTの少女「マリオン・ウェルチ」の精神波をコピーしたことによって完成するが、この事故で彼女は意識不明となった。クルストは、完成したシステムに「NTを裁くための (examination) システム」として「EXAMシステム」と名付けた。




