第九話:賢者代理機と妹、世紀の遭遇と大騒動
時空の狭間に送り込まれた究極の吸引機のおかげで、「理の楔」の修復作業は順調に進み、ついに賢者代理機、プロキシマ レイが帰還の準備を整えた。
零は、目の前の『全知の窓』で、代理機が自宅に転送される座標を確認した。
「よし、帰還座標は魔法陣の部屋で固定。これでリビングを壊される心配はないな」
しかし、零は一つ重要なことを忘れていた。魔法陣の部屋の隣には、リビングルームがある。そして、リビングルームには、帰省中の妹、一花がいる。
零が代理機の帰還ボタンを押した、その瞬間。
ドォン!
零の家の魔法陣の部屋から、銀色の装甲に身を包んだヒューマノイド型の代理機が、低い電子音を立てながらリビングルームに歩み出てきた。その手には、時空のゴミを吸い込んだ巨大な吸引機が握られていた。
リビングでテレビを見ていた一花は、その巨大なロボットを見て、目をキラキラさせた。
「わあああ!お兄ちゃん!これ、すごいの作ったね!噂のお掃除ロボットの超進化版!かっこいい!」
一花は、代理機が異世界の理を修復してきた世界の救世主であることなど、全く知る由もない。彼女にとって、それは兄が作った「おもちゃ」か「掃除家電」だった。
一花は興奮して、代理機に駆け寄った。
「ねぇ、あなたもしかして、会話できるの?私の部屋、散らかってるんだけど、試しに掃除してくれる?」
代理機は、零のプログラムに基づき、非常に面倒くさそうな声で応じた。
「私はマスターの代理として、世界の法則を修復するために作られた、自律思考型ロボットです。掃除は私の主要任務ではありません」
「えー、ケチー」一花は代理機の腕を掴んだ。「じゃあ、この掃除機、私に貸してよ!吸引力、絶対すごいんでしょ?」
代理機は抵抗した。
「それは次元のゴミを吸い取るための兵器です。日用品としての使用は推奨できません。それに、マスターからピザのトッピング全乗せ権を受け取るまで、待機しなければなりません」
その攻防を、零は自室の『全知の窓』で見ていた。
「おい、やめろ!一花、そいつは触るな!時空のエネルギーが残ってるぞ!」
零の警告も虚しく、一花は強力な吸引機のスイッチを、好奇心から強く押してしまった。
ギュオオオオオオオオオオオ!
究極の吸引機は、時空の狭間級のパワーで起動し、リビングルームの空気を吸い込み始めた。最初に吸い込まれたのは、一花が脱ぎ散らかしていた大量の衣類。続いて、零の母親が大事にしている高級な花瓶、そしてリビングの巨大なソファが、掃除機の中に引きずり込まれていった。
「きゃー!私の服が!お兄ちゃんのロボット、壊れた!?」
零は絶望した。世界の理は修復しても、実家のリビングの理が破壊されてしまった。しかも原因は、自分の発明品と妹の好奇心だ。
零は、急いで『全知の窓』から代理機に緊急コマンドを送った。
「プロキシマ!今すぐ吸引を停止しろ!そして、吸い込んだものを全てアステラ王国の広場に転送しろ!後でリリアーナに何とかさせる!」
代理機は「了解しました。一番面倒で、後で問題が起きそうな方法で解決します」と呟き、吸引を停止。ソファや花瓶を異世界の王都広場へと次元転送した。
アステラ王都の広場。昨日まで賢者の飯テロ中継で賑わっていた場所に、突如、巨大なソファと、大量のカラフルな女性の衣類、そして高級な花瓶が降り注いだ。
王国民は騒然となった。
「な、なんだ!?また賢者様からの神託か!?」
「ソファだ!しかも、やけに座り心地のいい!神々しい!」
「このカラフルな布は……賢者様の『聖なる下着』に違いない!ありがたや!」
零は自室で額に手を当てた。
「ああ……世界を救ったのに、また新たな『賢者の聖遺物』を生み出してしまった……」
そして、背後には目を輝かせた一花がいた。
「お兄ちゃん、今のなに!?瞬間移動?すごすぎる!ねぇ、私にもそのやり方教えて!私、あのソファ、結構気に入ってたんだよね」
零の引きこもり生活は、世界の危機どころか、実妹の興味と好奇心によって、ますます騒がしくなっていくのだった。
どうだ!今回はリビング破壊と、異世界への「聖なる下着」転送で盛り上げてみたぞ!
やっぱり零くんの敵は魔王じゃなくて妹の一花なんだよな。世界の法則がどうこうより、自分の服が掃除機に吸われる方が、女子にとっては大事件だもんね。そして、その結果が王都にソファと洗濯物を降らせるっていう、最高に迷惑で適当な解決策。まさに零くんの真骨頂!
賢者代理機も、マスターに似て面倒くさがりだけど、きっちり任務はこなすのが偉い。でも、最後はリリアーナに異世界の王都広場に転送されたソファを片付けさせるっていう、丸投げっぷり。リリアーナさん、ホントお疲れ様です!
次回は、異世界で賢者の「聖なる下着」ブームが起こって、ファッション界がひっくり返る展開にでもしようかな。
今回も読んでくれてサンキューな!また楽しんでくれよ!




