第五話:自宅に侵入者?絶対に許さない
「激辛チーズ味の異世界ポテチ」のリアルタイム配信後、零の自室は平穏を取り戻していた。しかし、王都では零が転送したピザの空き箱からヒントを得た「賢者の食文化研究家」なる集団が、零の自宅がある「聖地」を特定しようと血眼になっていた。
零がエナジードリンクを飲みながら、ゲームのダンジョン攻略に集中していた、その夜遅く。
『全知の窓』の防犯カメラ機能が、零の自宅周辺に異常な反応を検知した。
【緊急通知:自宅周辺に未登録の魔力反応を複数検知】
対象: 盗賊団『夜の歯』。リーダーはA級冒険者、影のゼノン。
目的: 賢者の自宅に侵入し、彼が持つとされる「無限に湧く聖遺物」(零にとってはポテチとエナドリの無限供給権)を強奪すること。
零は思わずヘッドセットを放り投げた。
「はぁ!?何で俺の家に侵入しようとしてんだ!?盗賊?ふざけるな!」
零にとって、「家から出ないこと」は絶対のポリシーだが、「家に誰かを招き入れること」はその次に許せない行為だった。聖域である自室が穢されるなど、言語道断だ。
リリアーナは、異世界側の魔法陣の部屋から震える声で忠告した。
「れ、零様!その盗賊団『夜の歯』は、アステラでも最悪の集団です!彼らは次元の歪みを突き止め、ついに零様の自宅の次元に干渉できる地点を見つけ出してしまったようです!早く避難を……!」
「避難?なんで俺が自分の家から出なきゃいけないんだよ!」零は憤慨した。「このまま侵入を許したら、俺のゲーム環境が壊されるかもしれねぇだろうが!」
零は、目の前のゲームパッドを操作するように、『全知の窓』の防衛システムを起動させた。
「最強の引きこもりは、家にいるからこそ最強なんだ。迎撃開始!」
盗賊団のリーダー、影のゼノンは、次元の裂け目を潜り抜け、零の家の玄関先に降り立った。
「ふははは!ついにやったぞ!ここが伝説の賢者の隠れ家か!お宝は全ていただく!」
ゼノンが扉に手をかけようとした、その瞬間。
零は『自動錬成』スキルを発動させた。ターゲットは、自室の机の上にあった、使い捨てのウェットティッシュ。
「錬成開始。最強の迎撃兵器、**『絶対に滑る氷床』**を生成。玄関から庭まで全面に敷き詰めろ!」
ウェットティッシュは光に包まれ、次の瞬間、零の家の玄関ポーチと階段、そして庭全体が、見た目は普通のコンクリートだが、摩擦係数が限りなくゼロに設定された超絶氷床に変わった。
「なんだ、これ?」
ゼノンが扉に手をかけた瞬間、彼の足はツルッと滑り、バランスを崩した。彼の後ろに続いていた盗賊たちも、次々と玄関ポーチに降り立った瞬間、制御不能のスケート状態になった。
「うわあああ!滑る!止まらない!」
「くそっ、見えない氷だ!魔法か!?」
零は、『全知の窓』で、盗賊たちが玄関ポーチでコントのようにツルツル滑り、階段を上ったり下りたり、壁に激突したりする様子を、拡大して眺めていた。零は思わず笑い出した。
「ははは!これが摩擦係数ゼロの威力だ!もうそこはダンジョンじゃなくて、強制スベリ台だ!」
盗賊たちは剣も魔法も使えず、ただひたすら滑って転び、最終的には全員が玄関前の敷地の隅に設置されていた植木鉢に激突し、気絶してしまった。
零は、満足げに手を叩いた。
「よし、撃退完了。侵入者対策は大事だな」
彼は再びヘッドセットを装着し、ゲームを再開しようとした。しかし、ふと気付いた。
「あれ?これ、このままにしておくと、朝、配達員さんが滑ってピザを落とすんじゃねぇか?」
零の引きこもり生活を脅かす、「配達員のスリップ問題」。賢者にとって、この危機こそが、真の緊急事態であった。
どうですか、この「絶対に許さない侵入者」と「絶対に滑る氷床」の対決!
零くんの行動原理はやっぱりブレません。「家の安全」と「快適な引きこもりライフの維持」が最優先です。盗賊団を撃退した手段が、戦闘魔法じゃなくて摩擦をなくすっていう、完全に物理学に頼ったところが零らしい雑さですね(笑)。
そして、最後に残った問題が「配達員さんのピザ」というのが、この物語の真骨頂です。世界を救うことより、自分の今日の食事の方が大事!
次回は、この「滑る床」をどう処理して、配達員さんの安全を確保するのか、その無駄に壮大な解決策にご期待ください!
読んでくれて、本当にありがとうございます!




