第三話:回線速度は生命線!賢者の怒りが世界を穿つ
神崎 零の自室は、いつも通り、エナジードリンクの空き缶とポテチの袋、そしてゲーミングPCの光に満ちていた。零は、楽しみにしていた新作MMOの巨大アップデートをダウンロード中だ。
「よし、この調子ならあと30分で完了だ。今日の夕飯はピザ頼んで、徹夜でレベリングだな。完璧な引きこもり計画……」
零がにやつきながら画面を見つめていた、その時だった。
【現在のダウンロード速度:10KB/s】
画面に表示された数値が、突如として赤く点滅し、急降下した。
「は?ウソだろ?光回線契約してるんだぞ!?な、なんでADSL時代みたいな速度になってんだ!?」
零は絶叫し、すぐにPCを再起動、ルーターも叩いてみたが、速度は一向に回復しない。怒りに顔がひきつった零は、すぐに『全知の窓』を開いた。
「おい、リリアーナ!今すぐ説明しろ!俺の回線速度が死んでるんだが、まさかお前らの世界のせいじゃないだろうな!?」
魔法陣の部屋から慌てて顔を出したリリアーナは、青ざめていた。
「れ、零様!大変です!たった今、王国中の魔術師ギルドから報告が……!世界を巡る**『マナの流れ』**が異常な速度で滞り始め、魔力の供給が不安定になっているのです!このままでは魔法が使えなくなり、魔王軍が……」
零はリリアーナの言葉を途中で遮った。彼の視界には、アステラ世界全体の魔力供給路が、ドロドロのヘドロのように目詰まりを起こしている映像が映し出されていた。
「マナの流れ?ふざけんな。それが止まるってことは、俺が錬成に必要な異世界素材の転送速度も落ちるってことだろ!そして何より、俺の回線速度が回復しない!」
零にとって、世界の危機より、ネット回線の危機の方がはるかに重大だった。
「リリアーナ!今すぐ、このマナの流れを詰まらせている**『異物』**を探せ!場所はどこだ!」
「そ、それが……マナの濁流の中心は、地図にない場所、**『大地のへそ』**と呼ばれる古代ダンジョンの最深部だと思われます……誰も踏み入れたことのない危険地帯です!」
零は、目の前のキーボードを強く叩きつけた。
「ちっ、面倒くさい。でも、このままじゃ新作ゲームができない。これは、全世界の引きこもりに対する挑戦だ!」
零は立ち上がった。そして、自室の床に放置されていた、大量の宅配ピザの空き箱を**『自動錬成』**の対象にした。
「今回のアイテムは、**『強制開通!ハイパー・ドリル』**だ。アステラ中のマナと金属資源を集中させろ!」
空き箱は激しい光を放ち、やがて、見た目は工事現場にあるような巨大なドリルだが、刃の部分が純粋な魔力で構成された、超高速掘削兵器へと変わった。
「リリアーナ、これをその『大地のへそ』とやらの真上に転送しろ。座標は……ここだ」
零は『全知の窓』で、古代ダンジョンの真上の、誰にも気づかれない荒野の座標を指定した。
「あとは、自動で動くようにプログラミングすれば……」
零はドリルに魔力で直接コマンドを打ち込んだ。
【ドリルへの命令】
直下のダンジョンへ向け、最大速度で掘削を開始せよ。
マナの流れを阻害する『異物』を検知した場合、問答無用で粉砕し、浄化せよ。
作業完了後、回線速度が999Mbps以上であることを確認し、その後、元の座標で待機せよ。
途中で電力(魔力)が切れるな。
ドゴオオオオオオオン!!
アステラ世界の荒野に転送されたハイパー・ドリルは、轟音と共に回転を始め、大地を穿ち始めた。その振動は、数千キロ離れた王都にまで伝わり、人々は「新たな魔王の出現か!?」と騒然となった。
数分後、零のPC画面に通知が表示された。
【全知の窓より通知】
『異物:古代竜の巨大な抜け殻(マナの流れを堰き止めていた)』を粉砕・浄化しました。
マナの流れ、正常化。
【現在のダウンロード速度:999Mbps】
零は深く頷き、満足そうに微笑んだ。
「よし。これでピザが届く頃にはダウンロードが終わってるな。危なかったぜ、俺の週末が」
そして、アステラの賢者は、今日も家から一歩も出ることなく、世界の危機(彼にとってはネット回線の危機)を見事に解決したのだった。
よっしゃ、第3話、完結!
今回のモチベーションは完全に「回線速度」でした(笑)。家から出たくない人間にとって、ラグは物理的な危機よりも恐ろしいんですよ。もう世界を救うとかじゃなくて、自分の快適なネット環境を守るために、古代の竜の抜け殻をドリルで粉砕するっていうね。発想が雑すぎる!
リリアーナさんが毎回顔面蒼白になってますが、零にとっては全部「面倒な雑用」ですから、その辺の温度差がこの物語の肝です。次回も、零くんの「効率と引きこもり愛」が世界をどう変えていくか、楽しみにしてください!
読んでくれてマジ感謝!またな!




