第二十五話:超ポジティブ男の復縁アタックと、最強妹の華麗なる拒絶
妹の一花が次元喰らいのバハムートをミニサイズにしてペットにしたことで、零の家は「異世界への最強玄関口」として、さらに不安定な平和を迎えていた。零は、リビングのテレビゲートを監視しつつ、自室でゲームに集中していた。
そこに、インターホンが鳴った。
零は『全知の窓』で玄関の様子を確認し、目を細めた。
「なんだと?あの汚物恐怖症のアウトドア野郎が、なぜ我が家に……」
玄関に立っていたのは、以前のインドア願望を完全に克服し、極端なアウトドア派に戻った佐藤 健太だった。彼は以前よりも体が分厚くなり、顔は太陽の光を浴びて健康そのもの。そして、その手には、岩を持っていた。
「一花いるかー!俺は諦めないぞ!別れは、よりポジティブな再会のための準備期間だったんだ!」
健太は、ポジティブ思考を通り越して、もはや一種の信仰の域に達していた。
零はため息をついた。「また面倒なやつが来た。しかも、ポジティブな魔力を充満させてやがる……」
一花が玄関に出ていった。
「健太!どうしたの?」
「一花!聞いてくれ!別れてから、俺は悟ったんだ!お前との別れは、俺に『真のポジティブな探求心』をくれた!俺は今、『素手で岩を登る修行』に夢中だ!もうインドアなんて絶対にしない!復縁してくれ!」
健太は、手に持っていた岩を掲げ、熱意をアピールした。
一花は、その岩を見て、目を輝かせたが、その理由は健太の熱意ではなかった。
「わあ!健太、それ、異世界の鉱石じゃない?色といい、硬度といい、ミニバハムーの餌にぴったり!」
一花は、岩を手に取ると、零の錬成魔力と自分の覚醒した魔力を無意識に混ぜた。
キラリと光を放った岩は、ミニバハムートが喜んで食べる、最高級のエナジーゼリーへと変化した。
「すごい!健太、最高の差し入れだよ!ありがとう!」
健太は、自分の愛の告白が、目の前でペットの餌にされてしまったことに、唖然とした。
「え、あ、いや、一花……あれは愛の証として持ってきた、俺が登頂した山の岩で……」
一花は、ミニバハムートにゼリーを与えながら、あっさりと言い放った。
「ごめんね、健太。私、もう外で遊ぶ人とは付き合えないんだ」
「なぜだ!?俺はもうインドアなんかじゃないぞ!毎日体を動かしている!」
一花は、リビングのテレビゲートを指差した。画面には、アステラ王国の魔術師ギルドの団員が、一花に**「掃除機で吸い込むべき新たな魔獣」**の相談をしている様子が映し出されている。
「だって、私は今、テレビ越しに異世界で大活躍して、ミニバハムーまで飼っているんだよ?現実で岩登りしている健太とは、住む世界が違いすぎるよ」
一花の言葉は、文字通り「次元が違う」ことを示していた。
健太は、自分のポジティブ思考が、妹の「次元を超えた大活躍」という現実の前で、完全に打ち砕かれているのを感じた。
「そ、そんな……。俺は、お前を連れ出して、最高の景色を見せてやりたかったのに……」
一花は、笑顔で健太に、ミニバハムートと遊ぶ様子を撮影したスマホの画面を見せた。
「ありがとう。でも、私、もう次元喰らいのバハムートを捕獲する景色を見ちゃったから。健太の登った山より、異世界のダンジョンの方が、動画映えするんだよね!」
健太は、自分の全身全霊のポジティブアタックが、「動画映え」という一花の新たな価値観によって、完膚なきまでに論破されたことを悟った。
「わ、分かった……。俺のポジティブが、まだ足りなかった……。俺も次元を超えて、お前を追いかける!」
健太は、さらなるポジティブの極地を目指し、その場で「次元を超えて異世界に行くための、究極のポジティブトレーニング」を考案し始めた。
零は、自室で再び頭を抱えた。
「くそっ、妹との破局で、また新たな次元侵入者予備軍を生み出してしまっただと……!しかも、今度はポジティブな魔力で次元を突破してきやがる!」
こうして、妹の失恋は、零の平和を脅かす「佐藤健太の異世界侵入計画」という、新たな面倒を引き起こしたのだった。
よっしゃ、第二十五話!最強のポジティブ男、健太が、最強の妹に華麗に玉砕したぞ!
健太の熱烈な復縁アタックも、一花ちゃんの「バハムート捕獲」と「動画映え」という、次元が違う現実の前には無力でしたね。そして、別れのショックで「次元を超えるポジティブトレーニング」を始めるという、健太の異常なポジティブ思考は健在です。
零くんにとっては、妹との破局が「健太がいつか自宅に侵入してくるかもしれない」という、新たな火種を生んだわけで、まったく休まりません。
次回は、この「次元侵入予備軍」となった健太を監視しつつ、一花ちゃんがミニバハムートを連れて、テレビゲートから本格的な異世界冒険に乗り出す展開にしようかな!
今回も読んでくれて、マジでサンキューな!またよろしく頼むぜ!




