第二話:ゲーミングチェアは聖剣を超える
アステラ王国の勇者パーティーは、難攻不落の巨大地下ダンジョン「鉄塊の迷宮」の最奥で窮地に立たされていた。
立ちはだかるのは、高さ10メートルを超える岩石の巨像「グラヴィティ・ゴーレム」
勇者の剣も魔法使いの炎も、その硬い装甲には弾かれてしまう。
「くっ、これほど硬いとは……!何か突破口はないのか、リネット!」
勇者ガリオスは、魔力切れで肩で息をしている魔法使いのリネットを振り返った。
地球の自室。神崎 零は、ディスプレイの分割画面で戦況を眺めていた。一つはゴーレムの動き、もう一つはリネットの疲労度ゲージだ。
「やれやれ、相変わらず面倒なボスだな。あいつ、耐久力だけは無駄に高いんだよ」
リリアーナが隣室(異世界と繋がった転送用マジックサークルがある部屋)からおそるおそる声をかけた。
「零様!王国から緊急の連絡です!勇者様たちに『伝説の聖剣』を転送してはいただけないでしょうか!?このままでは全滅してしまいます!」
零は鼻で笑った。
「聖剣?めんどくさい。聖剣を錬成する素材を探す手間、あれこれ設定する手間を考えろ。それに、聖剣で殴るより、一発で終わらせる方がエコだろ」
零は、自室の隅で使わなくなったキャスター付きのオフィスチェアを『自動錬成』のターゲットに指定した。
「錬成開始……素材は、アステラに豊富にある魔力凝縮材と、極上の休憩効果を発揮する精霊樹の繊維を使用」
光が収まると、そこには黒と赤の流線形の、まさに「最高級のゲーミングチェア」が完成していた。背もたれには「CHAIR OF HERO(勇者の椅子)」と金色の刺繍まで入っている。
零はこれを『次元郵便』で、戦場のリネットの真後ろに転送した。
ズドン!
突然、背後に現れた、場違いすぎるフカフカの椅子に、リネットだけでなく、ゴーレムも思わず動きを止めた。
「な、なんだこれは!?伝説の聖剣と聞いていたが……椅子!?」勇者ガリオスが叫ぶ。
零は『全知の窓』を通して、リネットに直接、思考を送信した。
「おい、魔法使い。お前、魔力切れだろ。その椅子に座れ。これ、ただの椅子じゃねぇ。魔力回復速度が五倍になる『賢者の休憩空間』だ。」
リネットは混乱しながらも、藁にもすがる思いでその椅子にドカッと腰を下ろした。
次の瞬間、彼女の疲労は嘘のように消え、体内に渦巻く魔力の奔流を感じた。
「これは……!何という回復力……!体が軽くなる……!」
リネットは深呼吸すると、ゴーレムに向けて、このダンジョンで最大級の威力を誇る、上級魔法「メテオ・ストライク」を詠唱した。
ゴーレムが動き出すより早く、巨大な隕石が天井を貫き、岩石の巨像に直撃した。
ドォォォン!!
一撃でゴーレムは粉砕され、ダンジョンに静寂が訪れた。
零は、画面越しに「ふぅ、これでよし」と頷き、エナジードリンクを一口飲んだ。
「結局、戦闘の面倒な部分は、一番効率のいい奴に任せるのが、俺にとって一番楽なんだよな」
そして、次の日の朝食の献立を考えるのだった。もちろん、自室から一歩も出ずに。
いやー、今回の話も無事終わりましたね。お疲れ様です!
まさか聖剣じゃなくて、ゲーミングチェアを送りつけるとは(笑)。でも、考えてみてくださいよ、疲れてヘロヘロの状態で強い魔法なんて使えないじゃないですか。まずは「休む」。これ、鉄則ですよね。零がエナドリ飲みながら即席で作った椅子だけど、結果的に魔王軍をボコれたんだから、効率最強ってことでOK!
零くんの行動原理、完全に「いかに自分が楽できるか」一点突破ですからね。ゲーム中にフリーズするくらいなら、世界の一部を壊してもいいと思ってるタイプです。
次回は、ついにネット回線問題が浮上します。引きこもりにとって、回線速度が落ちるってのは世界の終わりと同義。アステラ世界、震えて待て!って感じです。
じゃあ、また気が向いたら続き書きますんで。読んでくれてサンキューでした!




