第十九話:協力プレイ拒否!オンライン聖域の絶対防衛
妹の彼氏、佐藤健太から届いたゲームのフレンド申請を見て、零はゲーミングポッドの中で憤慨していた。
「許せない。俺のゲーム空間は、俺だけの聖域だ。家族やましてや妹の彼氏など、面倒な人間関係の持ち込みは断固拒否する!」
零がプレイしている新作MMO「アステラ・クロニクル」は、異世界アステラとリンクしたシステムを持つ。健太がゲーム内で力をつければ、いつか零の錬成に必要な異世界素材を勝手に集めてきたり、最悪の場合、零の自宅の位置をゲーム内座標から特定しようとするかもしれない。
零は、即座にフレンド申請を拒否し、ブロックリストに登録しようとした。
その瞬間、一花が零の部屋に悲鳴を上げて入ってきた。
「お兄ちゃん!大変!健太が、ゲーム内で『賢者様のお兄さんと同じパーティーに入れないと、俺は一生外に出ない』って宣言して、ログイン拒否ストライキを始めたみたい!」
「なんだと!?」
健太が強烈なインドア願望を植え付けられた結果、今度はゲームにログインできないストレスで、物理的に家から一歩も出ないという、究極の引きこもりとなってしまったのだ。
『全知の窓』で健太の様子を確認すると、彼の自室も零に負けず劣らず、ピザの空き箱とエナジードリンクの缶で溢れ始めていた。
「くそっ、俺のチートが、また新たな迷惑な引きこもりを生み出したのか!」
このままでは、健太の家族から「零のせいで息子が引きこもった」と苦情が来る可能性が高い。それは零にとって、最も避けたい面倒な事態だった。
零は、仕方なく健太のフレンド申請を承認した。
「よし。どうせ協力プレイをするなら、あいつが二度と協力プレイをしたがらないようにしてやる」
零は、健太を自分のパーティーに招待し、早速、ゲーム内で話しかけた。
【賢者レイ】 「佐藤健太か。俺と協力プレイをしたいなら、俺が指定するダンジョンを、一人でクリアしてこい。それが、俺のパーティーに入るための『儀式』だ」
【佐藤健太】 「うおおお!賢者様のお兄さん!ありがとうございます!頑張ります!」
零が健太に指定したのは、ゲーム内でも悪名高い『無限作業ダンジョン』だった。そのダンジョンは、敵は弱いものの、無限に湧き続ける資源の採取と、無意味な作業をひたすら繰り返すという、精神的に最も消耗するダンジョンだった。
零は、このダンジョンに『自動錬成』で魔力を注入した。
「錬成開始。ダンジョン内の作業目標を、『ゲーム内のピザの空き箱10万個を分別し、リサイクルに出す』に上書き。報酬はゼロだ。究極の無駄作業を体験させてやる!」
零は、健太が無限作業ダンジョンにログインしたのを確認し、配信を開始した。
【賢者公認チャンネル・ライブ配信】
タイトル: 賢者レイの新人育成!勇者未満の男に試練を与える!
実況者(一花): 「健太、頑張って!お兄ちゃんがすごい試練を与えてるよ!」
ゲーム内。佐藤健太は、目の前に積まれたピザの空き箱の山を見て、目を輝かせた。
「おっしゃ!これが賢者様の試練か!環境問題を意識した、超ポジティブな作業だ!」
健太は、インドア願望のネガティブな影響を、元々のポジティブ思考で上書きし、ひたすら空き箱の分別作業を始めた。
零は『全知の窓』で、健太の精神状態を監視していた。
「な、なんだと?無意味な作業に、喜びを感じ始めただと!?このポジティブ野郎……!」
健太は、黙々と空き箱を分別しながら、チャットで零にメッセージを送った。
【佐藤健太】 「レイさん!これ、めっちゃ楽しいです!無心になれて、まるで瞑想みたい!この作業で、僕は最強になれる気がします!」
零は絶望した。自分の最も嫌いな「無意味な作業」と「ポジティブ」を組み合わせたチートが、ポジティブな人間には最高のメンタルトレーニングとして作用してしまったのだ。
零は慌てて、ダンジョンのチートを解除した。
「くそっ、ポジティブ思考は、俺のチートを上回る。このままでは、健太がこのゲームの最強プレイヤーになってしまう!」
零は、自らの安寧と、ゲーム内での優位性を守るため、新たな最終兵器の開発を急ぐ必要に迫られた。
よっしゃ、第十九話!妹の彼氏、佐藤健太が、まさかのポジティブ系チートキラーとして覚醒だ!
零くんの最大の武器である「無駄な作業の押し付け」が、健太の超ポジティブ思考の前では「最高のメンタルトレーニング」になってしまうという、最高に皮肉な結果になりました。零くんの想定の斜め上を行く展開ですね。
このまま健太が最強プレイヤーになったら、零くんのゲーム内での居場所がなくなってしまう!これは、世界滅亡より深刻な危機です。
次回は、この「ポジティブな侵入者」を排除するために、零くんがゲームと現実の境界を揺るがすような、どんなチート兵器を生み出すのか、お楽しみに!
今回も読んでくれて、マジでサンキューな!またよろしく頼むぜ!




