第十八話:妹に彼氏!?賢者の自宅に新たな侵入者の影
紙コップ聖杯騒動が落ち着き、零はポジティブエナジードリンクの力で、集中してゲームの隠し要素を攻略していた。
そこに、妹の一花が、異様にソワソワした様子で部屋に入ってきた。
「お兄ちゃん、あのさ……ちょっと相談があるんだけど」
「面倒だ。用件だけ言え」
零はゲームから目を離さない。
「えーとね、私、彼氏ができたの」
零は、コントローラーを操作する手をピタリと止めた。
「は?彼氏?なんだそれ。そんな面倒な存在、この家に持ち込むんじゃないぞ」
「そんな言い方しないでよ!それでね、今度彼が家に来たいって言ってるんだけど……」
零は、椅子から勢いよく立ち上がった。彼の顔は、魔王軍が攻めてきた時よりも険しい。
「絶対に許さない。 俺の聖域、神崎家への侵入者は、母親と家族以外は全て排除対象だ。ましてや、妹の彼氏など、警戒レベルは魔王並みだ!」
零にとって、妹の彼氏というのは、自分の妹を連れ出し、自分の快適な時間を奪い、さらには自宅のセキュリティを脅かす可能性のある、極めて危険な存在だった。
「ひどい!彼は優しい人だよ!それに、お兄ちゃんのこと、『有名な配信者の天才兄』だって言って、すごく会いたがってるの!」
「ますますダメだ!俺の配信者としての評判を利用しようとする輩は信用できない!それに、俺の部屋には絶対に近づけさせるな!」
零は、一花の彼氏を何としても阻止するべく、『全知の窓』で監視を開始した。
【対象:妹の彼氏、佐藤 健太】
年齢: 21歳。大学生。
特徴: 運動部所属。声が大きい。「外で遊ぶの最高!」という危険な思想の持ち主。
零は、彼の情報を見てゾッとした。「外で遊ぶの最高!」という思想は、零の「家から出ない」という信念と真っ向から対立する、許しがたい思想だった。
「あいつは危険だ。ポジティブ教の再来だ。阻止しなければ」
零は、妹の彼氏が家に来る前に、彼を「神崎家訪問を断念させる」方向に誘導する必要があると考えた。
零は、ローテーブルに置いてあったテッシュの箱を手に取った。
「錬成開始。佐藤健太を、強制的に『引きこもり予備軍』にするためのアイテムを生成する。素材は、アステラの最高級安眠ハーブと、ゲームの徹夜明けの強烈な倦怠感の魔力を融合!」
出現したのは、見た目は普通の一本のペンだった。しかし、そのインクには、「極度のインドア願望を植え付ける魔力」が込められていた。
「これを『次元郵便』で、佐藤健太の通う大学のロッカーに転送。あいつが次に使う時、このペンを使わせる!」
零の狙いは、彼氏が神崎家を訪問する直前に、彼に強烈なインドア願望を植え付け、「外に出るのが面倒だ」と感じさせることだった。
その頃、大学のロッカーを開けた佐藤健太は、見慣れないペンを見つけた。
「あれ?誰かの忘れ物かな?まあいいや、レポート書くのに使おう」
健太がそのペンでレポートを書き始めた、次の瞬間。
彼の頭の中に、強烈な誘惑の声が響き始めた。
「レポートを書くのも面倒……。いや、そもそも大学に行くのが面倒……。家でゲームしながら、一花ちゃんとネットで繋がれば最高なのでは? 外出なんて、時間の無駄だ……」
健太の顔色が変わり、急にやる気を失った。
その様子を『全知の窓』で見ていた零は、満足げに頷いた。
「よし、これで彼は神崎家に来ることはない。俺の平和は守られた」
しかし、その夜。一花が零の部屋に、スマホを持ってやってきた。
「お兄ちゃん、健太がね、家に来るのやめるって」
「ほう。賢明な判断だ」零は内心でガッツポーズ。
「でもね、健太、『どうしても、お兄ちゃんとゲームで繋がりたくて、オンラインで協力プレイをしたい』って言ってるの!今からお兄ちゃんのフレンド申請するって!」
零は、コントローラーを落としそうになった。
「な、なんだと!?物理的な侵入を防いだら、ネットワーク経由で侵入してきただと!?」
零にとって、ゲームの世界は唯一の安息の地だった。そこに、妹の彼氏という「外部の人間」が入り込んでくることは、自宅に土足で踏み込まれる以上の屈辱だった。
「許さない!俺のゲームの安寧まで奪う気か!」
零は、新たな敵「妹の彼氏(オンライン版)」の参戦により、自らの最も大切な領域を守るための、次の戦略を練り始めた。
よっしゃ、第十八話!妹の彼氏という、零にとって新たなタイプの「侵入者」が登場しました!
物理的な侵入を「面倒くさくなるペン」で阻止したのに、まさかの「オンライン経由」で再アタックしてくるという、現代的な展開!零くんの行動原理は、いかに自分の聖域(自宅とゲーム)を守るか、ですから、これは魔王軍よりタチが悪いかもしれませんね。
それにしても、妹の彼氏が即座にインドアに転向して「オンライン協力プレイ」を求めてくるあたり、零くんのチートが強力すぎます(笑)。次回は、零くんがゲームの世界で、妹の彼氏をどう排除するのか、楽しみにしていてください!
今回も読んでくれて、サンキューな!またよろしく頼むぜ!




