第一話:勇者召喚?面倒くさいから自宅警備で
零は、地球の自室で動画配信サイトを開こうとした瞬間、眩い光に包まれた。
次に目を開けたとき、目の前にはローブ姿の美女が平伏している。
「はぁ?何このコスプレ劇。俺、このあと新作ゲームのダウンロード待ってるんだけど」
美女、リリアーナは涙ぐんだ顔を上げた。彼女はアステラ王国の宮廷魔術師だという。
「ま、まさか、召喚が成功するとは……!ああ、偉大なる賢者様。どうか、この世界を救ってください!」
零は深くため息をついた。彼の目の前には、半透明のパネルが表示されている。
【クエスト:魔王の残滓を討伐せよ】
達成条件: 討伐対象を全て消滅させる
報酬:
最高級エナジードリンク(無限供給)
有名配信者の限定グッズセット
アステラ王国からの永久的な不干渉権
「エナドリ無限はマジでありがたいけどさ……」
零は、自室のベッドの上で深くもたれかかった。
「俺、外の空気吸うの嫌なんだけど。埃っぽいし、陽射しが眩しいし、人混みがムカつくし」
リリアーナは目を丸くした。
「えっ……?しかし、魔王軍の拠点はここから遥か東の魔大陸にございますよ!」
零は、タブレットを操作するように、目の前のパネルをスワイプする。パネルには、魔大陸の巨大な砦が映し出されていた。これがスキル『全知の窓』だ。
「大丈夫。俺は移動しない。『全知の窓』があるから、ここで事足りる」
零はそう言って、リリアーナの背後にいる騎士団長が身につけている重鎧の映像に集中した。
【干渉メニュー】
鎧の耐久度を『豆腐』に設定変更する
鎧を『超合金Z』に設定変更する
鎧を『可愛らしいフリル付きのエプロン』に設定変更する
「よし、面倒くさくないやり方で済ませよう」
零は、自室の机に置いてあった食べかけのカップ麺の空き容器を手に取ると、『自動錬成』スキルを発動させた。空き容器は輝き、瞬時に「対魔王決戦兵器:究極の自動砲台」に変化した。
「リリアーナさん、これ。今すぐ、アステラの最前線の勇者に届けて」
零は『次元郵便』で、自動砲台を魔大陸の最前線にいる勇者パーティーのリーダーの目の前へ転送した。
そして、『全知の窓』で魔大陸の戦況を映し出す。劣勢だった勇者パーティーの代わりに、転送された砲台が自動で魔王軍を殲滅し始めた。戦況は一瞬でひっくり返った。
零は自宅のベッドの上で、エナジードリンクを開けた。
「ふう。これで今日はいいか。リリアーナさん、明日からはここに、アステラ世界の最高の配信環境と、新作ゲームソフトを毎日届けてくれれば、世界の危機には対応するよ。ただし、俺は絶対に家から出ないから」
こうして、「家から出ない最強の賢者」零の、引きこもりながら世界を救うゆるふわな日々が始まった。




