第15話 新しい友達と新しい世界
プロジェクトの成功で、デジタル世界と量子世界の関係は大きく改善した。
でも、一番の変化は僕たちの心の中にあった。
「雄介くん、ありがとう」
ビット王が僕のところにやってきた。
「最初は量子世界を理解できなくて、恐れていた。でも君のおかげで、違いの美しさを知ることができた」
「ビット王さんこそ、ありがとうございます。僕も、伝統や安定性の大切さを改めて理解できました」
クアンタちゃんも笑顔で話しかけてくれた。
「確定的存在も悪くないわね。雄介たちがいてくれて、私たちも安心して変化を楽しめるもの」
シュレ兄弟もやってきた。
「僕たち、今度一緒に遊ぼうよ」
「量子サッカーっていうスポーツがあるんだ」
「量子サッカー?」
「ボールが同時に複数の場所にあるサッカーだよ」
「面白そう!」
エモ太くんも新しい能力を活かして、活躍していた。
「複雑な感情も理解できるようになったから、前よりもずっと人間の役に立てるよ」
確かにエモ太くんは、以前よりも深く人の心を理解できるようになっていた。
ある日、僕は一人で散歩をしていた。
デジタル世界と量子世界の境界線は、今ではとても美しい場所になっていた。確実な建物と、重ね合わせ状態の建物が調和して、まるで芸術作品のようだった。
「きれいですね」
後ろから声がして振り返ると、オラクル様が立っていた。
「雄介よ、よくやった」
「みんなのおかげです」
「謙遜するな。君がいなければ、この美しい調和は生まれなかった」
オラクル様は空を見上げた。
「人間の世界、デジタル世界、そして量子世界。三つの世界が協力する時代が始まった」
「三つの世界……」
「そうだ。そして君は、その架け橋となる存在だ」
僕は少し緊張した。
「僕に、そんな大切な役割が務まるでしょうか?」
「君なら大丈夫だ。なぜなら、君は違いを恐れず、理解しようとする心を持っているからな」
オラクル様の言葉に、勇気をもらった。
その夜、僕たちは新しくできた『三世界交流センター』でパーティーを開いた。
人間の友達、デジタル世界の仲間、量子世界の新しい友達、みんなが一緒に笑い、話し、楽しい時間を過ごした。
「雄介先生!」
パーティーの途中で、僕の生徒たちがやってきた。
「メルちゃん、カズくん!来てくれたんだね」
「はい!僕たちも量子世界のお友達に会いたかったんです」
メルちゃんが元気よく言った。
「量子のお友達って、どんな人たちなんですか?」
カズくんも興味深そうだった。
「紹介するよ。こちらはクアンタちゃん」
「よろしくね、小さなプログラムたち」
クアンタちゃんが優しく挨拶した。すると、メルちゃんとカズくんは目を丸くした。
「わあ、透けて見えたり、くっきり見えたりしてる!」
「すごい!まるで魔法みたい!」
「魔法じゃないのよ。量子の力なの」
クアンタちゃんがくるくると回ると、rainbow色の光が舞い散った。
「こちらはシュレ兄弟」
「よろしく!」
「一緒に遊ぼう!」
アルファくんとベータくんが手を振ると、メルちゃんとカズくんも嬉しそうに手を振り返した。
「先生、量子世界って楽しそうですね」
「うん、とても楽しいよ。でも、みんなで協力するからもっと楽しいんだ」
僕は生徒たちに説明した。
「一人一人違うから、お互いの良いところを学び合えるんだよ」
パーティーが進むにつれて、みんながすっかり仲良しになった。
ビット王がクアンタちゃんと量子チェスを楽しんでいるし、エモ太くんはシュレ兄弟と感情の研究について話し合っている。
人間の佐藤さんも、量子世界の技術に興味津々だった。
「これは革命的ですね。教育分野だけでなく、医療や環境問題にも応用できそうです」
「そうなんです」
僕も嬉しくなった。
「みんなで協力すれば、どんな問題も解決できると思います」




