1-05
夏目が来るといつもそうだった。
ある時からパシりに使われ、気に入らないと叩かれる。
そんなに力を入れてなくても大柄な夏目の手で叩かれれば痛いものは痛い。
酷い時は日奈を蹴り、ストレス発散の捌け口のような扱いを受けていた。
「夏目さん…おつまみもすぐに出来ますので…、」
出てきた夏目にペコリとお辞儀し再び調理を再開する。
夏目も流石に包丁を扱っている時は暴力を振るわない。
「ほんとお前は変わんねーな。」
「…すいません。」
「もっと佐奈を見習えよ。…まぁアイツ化粧ケバくなっただけだけどなぁ…お前は論外なんだよ。オイ聞いてんのか?」
机の下でガンッと脚を蹴られた。
夏目はそれを気に入ったのか、リズムを刻むように脚をガンガン蹴り続ける。
日奈は出来るだけ脚が後ろに行かないよう配慮した。
また先程のように後退れば、今以上に酷い目に合うのが目に見えていたのだ。
「………。」
「………。」
脚を蹴りつける音とワインを飲む音ばかりが部屋に響く。
「つまんねぇ奴。見た目も中身もくだらねぇ。」
「………。」
これ以上謝ると怒られるのを日奈は知っていた。
被害を最小限に抑える術はただ一つ。
何も話さず、彼の暴力を受け入れる事だけだった。
「ほんと、生きてる、意味ねぇな!」
「っ……、」
言葉を区切りながらガンガンと今まで以上に強く蹴り…
最後にワインを日奈に目掛けてぶっかけた。
「目障り、消えろ。」
「……。」
日奈は無言で立ち上がり先程放置した紅茶のタオルを手にとって脱衣場へ向かった。
紅茶に染まった白いタオルを湯を張った桶に入れる。
ポタポタと髪の毛からはワインの雫が落ち、白いワンピースに染みを作る。
床にもポツリポツリと跡を残してしまった事に気付き『後で拭かないと』と考えた。
自身の部屋を他人に追い出されるとは不思議な話だが、日奈にとっては当たり前の日常だった。
ワンピースを脱いで熱いシャワーをかける。
こうなれば全部洗ってしまおうと、下着も脱いで頭からお湯をかぶった。
また何か言いつけられる可能性もあるので、一通りお湯をかぶってシャワーを止めた。
『日奈。』
振り向くとモザイクがかった扉の向こう側に夏目の気配があった。
「どうしました。」
『今すぐ出てこい。』
夏目の要求は無茶なものだった。
流石に焦った日奈は抵抗を試みる。
「わたし…まだ服を着ていないんです…。」
『後五秒で出てこないと殺す。』
「っ……、」
夏目のカウントダウンが始まった。
こうなってしまえば従うしかない。
日奈は急いでお湯につけたワンピースを広げるも張り付いた衣服を五秒で着れるはずがなく、前だけを隠して扉を開けた。
きっと十秒あっても着れなかっただろう。
「…何でしょうか。」
長い髪の毛を前に流した状態で問う。
水を含んだ髪からボタボタと大きな雫が落ちた。
「何もねぇよ。」
「ぁ……、」
夏目は無理矢理ワンピースを引っ張り、日奈を壁に押し付けた。
急いでしゃがもうとする日奈に「しゃがんだら殺すぞ」と脅し、目の前に無防備で立たせる。
身長が150もない日奈に対し夏目は180もある為、上から見下ろす形となった。
「貧弱。」
まじまじと見つめた感想がそれだった。
無駄な肉がない。
そして胸がない。
佐奈と違い幼児体系な日奈の身体に溜め息を吐いた。
「もう…良いですか、」
日奈が嫌がるのを久々に見た夏目はしゃがみ込んでヤンキー座りのような格好になった。
そして高校生にもなって殆ど生えていないアンダーヘアを見つめた。
「ここ触ったことあるかー。」
大きな手で日奈の恥部を触る。
「っ……、」
そんな所を初めて人に触られた日奈の身体はビクンと反応した。
「…ないよなぁ。あるわけねぇよなぁ。」
そう言って少し弄った後「手が汚れた」と石鹸で手を念入りに洗い出した。
「やっぱ無理だわお前。」
「……。」
「気持ちわりぃ。」
服を着てないぶん更に身体が小さく見える日奈が長い髪の毛を垂らす姿は異様だった。
見てられないと夏目は脱衣場を出て行った。
その後急いで身の回りを見れるようにし、ゆっくり開けた扉の隙間から脱衣場の外を窺った。
しかし夏目の姿はなく、もう部屋を移動したのだとホッと息を吐いた。