エリ1
気づけば知らない個室のベットにいたエリ。それに今まで経験したことのない頭痛、それに昨日の記憶がほとんどない強いて言えば知らない男の車に乗っていたことくらい。一旦洗面所に向かい鏡を見ると目がありえないほど腫れていた。
私そんなに泣いたんだ。
エリはもう一度ベットに行き枕に顔をうずくめ赤面——
……ってことは私知らない人とヤったんだ。何も覚えてないけど、この市自体日本で一番管理のできていない場所だし店もヤバめな所だから。……もう昏睡レイプじゃん。
うつ伏せの状態で足をバタバタさせる。うずくめていた顔を出し、窓の外を見る。
「けどいっか、自分が求めたことだし」
その時エリは窓側にあった机に紙が一枚あることに気づく。
「……なんだろう」
近づき紙を見ると書き置きのようだった。
「エヴァン・ガーランド? この人が私の初めての相手?」
二つ折りになっていた紙、開けるか迷った。自身のあんな写真やこんな写真、プレイの内容だったら公開しそうだから。けれどそれも覚悟の元、生唾を飲み紙を開ける。
内容としては「ホテルに着いた時、君は気持ちよさそうに寝てた。そんな君に息子を入れるのはオレのやりたいセックスじゃない、だからそこは安心して。ちなみにその部屋でオナニーもしてない。その部屋の料金なら払ってあるからもう少しゆっくりしててもいい。辛いのはわかるけどその若さで判断を誤るんじゃない、それでもっていうんならシラフの時また会おう。ひとときの時間を過ごしたエヴァン・ガーランド」だった。
エリはその手紙を握りぐちゃぐちゃに潰した。そして部屋を飛び出して昨日の店に急いで向かった。
着いた時には店は閉まっていた。そんなのはお構いなしに扉を強く叩く。
中には店主が店の掃除をしておりいきなりの音にビクッとした。
「んだよ全くもうちょっとで終わるってのに」
店主は扉を開けた。
「……来るにはまだ早すぎる」
「そんなのわかってるから。それよりガーランドって人知ってるでしょ」
このねーちゃん昨日の、ヤベー奴にマークされたなあいつも……
エリは胸ぐらを掴み店主を前後に揺らした。
「早く教えてー」
「あーもうわかったわかった、連絡するからそれ、それやめて」
その後店主は強引に押しかけたエリを店の中に入れた、というか入られた。
今日のエヴァンの目覚ましは電話の着信音。顔まで布団が来ていて前が見えない状態で音の原因を探る、そしてその原因の携帯電を見つけ耳まで持ってくる。
相手はパブの店主。
「朝から、なんだよ。……どうした」
「どうしたじゃねー」
店主ではない勢いのある女の声。耳が張り裂けそうになった。
「朝っぱらから元気なのはいいけど誰だあんた?」
「覚えてないの? 昨日一緒にホテルに行ったエリよ」
「君か、どうしたんだ? 依頼なら店主に……」
「今すぐ昨日の店に来て、早く」
電話が切れた。なんだかよくわからないけど今日はオフだしエヴァンは一回起きたら二度寝ができない。ということで支度して店に向かった。
大きな欠伸を垂れながら数分かけ店に着く。エリは店の前に止めてあった車にもたれかかっていた。
「それオレちゃんの車」
エリは歩いてきたエヴァンを見た。
「遅い、とりあえず運転して」
「人使いの粗い女だ」
二人は車に乗り店を後にする。
その後すぐに店主が出てきた。
「おいあんたのせいで、おばあちゃんの作ったこれ壊れ……ってあいつもいないし車もない。もうマジかよ」
行き先も言わずにただ走る車。車内は変な空気が流れる。
「……なんで襲わなかったの。あんな無防備だったのに」
「書き置きにもあったけど、それはオレちゃんの趣味じゃないんだ」
「男ってエロくてヤれそうならヤるんじゃないの?」
「オレちゃんは違う。危うく理性が飛びそうになったけど」
そしてまた二人の間に沈黙が走る。
「……ねぇ、お願いだから私を犯して。変なこと言ってるのはわかってるし、あなたが書き置きしてくれた言葉は正しい。けどもう全部、全部壊れて終わりたいの。もう嫌なの……」
エリはまた涙を流し、手で顔を覆い隠している。
「……泥酔してたから昨日行ったことは覚えてないと思うけどいいセックスにはお互いを知る必要がある。それにオレはちゃんはムードを大切にしたい、だからヤるのは夜だ。それまで時間はまだある、夜になるまで遊ぼう」
エヴァンはエリを半ば強引に遊びに連れて行った——