それ、には逆らえない
現在十二時、一時間ほどかけSIA本部からパブへ向かった。
店の前に車を止め、店の中に入る。ドアを開けるとカランッカランッと人が来るとすぐわかる音が鳴る。
そして店主は音と共にドアを見た。
「ヨォ、エヴァン今日はどんな酒にする?」
「それよりこの音はやく変えてくれよ、まいかい喫茶店に来た気分だ」
後ろに親指を刺しながらカウンターへ歩き店主の前の椅子に座る。
「酒はいつのもやつそれと依頼状もくれ、明日はオフだから何件か行ける」
「はいよ。それと音は変えられねぇ、あれは俺のおばあちゃんが作ったやつだから」
店主は店の裏へ行った。
するといきなり後ろから女に肩を組まれた。少し驚いたがここではよくあること。
けれど見ない顔の女、エロさと可愛さを兼ね備えた最高の女だった。
「ワオッ、……なぁこうちゃんこの子なんなんだ?」
テーブル席にいたこうちゃんは手話で答えた。
「そいつはかなり訳ありだぜへっへ。ここに来るやつは異常者か元犯罪者のどっちかだけど、そいつはそのどっちでもねぇ。まぁ話聞いてやれへっへ」
肩を組んできた女はかなり酔っている様子、だからこその無防備さがよりエロさを感じさせる。
「ねぇあんたここで一番イカれてるって聞いたけど」
ひとまず、ずっと肩を組ませるわけにもいかず隣に座らした。
「一番イカれてる? ここにいる奴らに比べたら序の口も序の口だ」
エヴァンはカウンターへ移動し勝手に水を注ぎ女に渡した。
「ひとまず飲め。……あんた名前は?」
一口溝を飲む。
「……あんた私とセックスしない?」
エヴァンも水を注ぎ飲んでいたが、唐突も唐突の言葉に持っていたグラスを落とし割ってしまった。
「……マジで言ってんの?」
「いろんな奴に聞いた。あんた一番イカれてんでしょ、だったらあんたの何もかもをあたしのせいにしていいからどお? するの?しないの?」
「……表に車が停めてある」
カウンターを出てエヴァンは車に向かうが、後ろで誰かが倒れた。振り向くと誘ってきたエロい女が倒れていた。
飲みすぎて一人じゃ歩けないレベルだった。
「こりゃ重症だな」
女を担ぎ店を出て車に乗せ、近くのホテルへ直行した。
その直後店主が酒と依頼状を持ってきたがそこにエヴァンの姿はなく、カウンターに割れたコップと水がぶちまけられていた。それもここではよくあること。
やれやれと両手を上げ、近くの客にエヴァンの所在を聞いた。
「初めてきた女とどっか行ったぜ。それとそれもエヴァンがやったやつだ」
「はぁ……マジかよ」
ホテルへ向かってる車の中、今にも寝落ちしそうな女。エヴァンは濃厚な熱い夜を過ごそうと思い彼女に話しかける
「……さっき聞けなかったけど、あんた名前は?」
「どおだっていいでしょ、自分の欲をぶつけるための女の名前なんて」
「どうだってよくはないさ。なんでもそうだ、知れば知るほど良さがわかる、会話だってそれの一部だ。相手を知ればセックスの内容が良くなる」
女は小声で「どうだっていいじゃん……」そう言ったがエヴァンは聞きとれず流した。
気分が変わったのか女はいきなり笑い出した。
「そんな知りたいなら教えてあげる。名前は革野 エリ、バカな女よ。……ねぇそれより……」
エリはエヴァンの太ももりを触り始めた。
「おっぱじめるにはちょっと早すぎるぜ」
「もうここでいいじゃん。こんな時間だし誰も通らないよ」
エリはエヴァンの服を脱がしお腹を直に触った。
うわ……けっこうムキムキ。
「オレはムードお大事にしてる。こんなところで始めたら長く楽しめない。だから手どかしな。触ったオレちゃんの筋肉想像しながらすぐヤレるように濡らしたきな。だからと言ってここでオナニーするなよ」
そう言っても手をどかさない、仕方なくエヴァンは自らで彼女の手をどかした。
なんだかエリはしゅんとした。
数分間の沈黙。窓から外を見ながらエリが話し始める。
「……あんたってなんであの店にいたの?」
「行きつけだ」
ふーん。
「どうしたいきなり、オレのこと気になったのか?」
「そうじゃない。なんでかな? って思っただけ」
「そうか。……じゃなんであんたはあの店に? あの店はいいやつはいるけどヤバい奴もいる、他のやつだったら店出た途端に裏路地で犯されてるぞ」
「……人生がどうでも良くなったから。あんたの言った性欲の塊に裏路地で犯されてもいいほどにね」
エリをチラッと見ると窓ガラスから反射していたエリは涙を流していた。
「……話したくないなら話さなくていいけど、何があったか聞いてもいいか?」
「それこそ、どうでもいいでしょ」
「さっきも言ったけどいいセックスは相手を知る必要がある。だからここでの話も重要だったりする」
もう二、三分で到着だったけれど、直進のところをわざと曲がりホテルから遠ざかった。
そしてまたエリはダンマリした。けれどすぐに口を開いた。
「……騙されたのよ、一番信用してた人に」
エヴァンは何も言わず話を聞く。
「いま二十五なの。その子とは十年以上の付き合いで、この歳だし私も色々一人でやろうと思って会社を辞めたの。高校からずっとバイトしててちゃんと貯金して社会人の時もかなり貯金してた……三千万くらいあった。そのお金を使って私っぽいことやろうと思って、そのことをその子に相談したの。ずっと仲良かったし私の中じゃ一番信用できたから」
またチラッとエリの方を見たら止まっていた涙がまた出始めていた。
「やることも決まった、方針も決まったあとはお金だけ。その日いろんな手続きで手が離せなかっただからその子にお金を持ってきてもらおうって思って口座を教えてパス教えてカードを渡した、けどその子はその後消えた……お金もろともね」
もう直接見なくてもわかるくらいエリは啜り泣いていた。
「辛かった。手続きは事情を説明して破棄してもらったけど、あの子がお金奪って逃げるなんて所詮私の信用したやつはそんなうやつだったんだって思うとどうしようもなく辛くて、だから全部全部どうでも良くなた。だから最後に私が今までやってこなかったセックスしてやろうって、誰かに最後求められて終わろうって。だからあの店にいたの」
正直何かを言おうとも今の彼女にはなん励ましにはならない、そう思ったが何も言わないよりマシだと思い言葉を放った。
「……君にそんなことがあったなんて思いもしなかった。辛いよな、嘘でも『わかる』とは言えない、オレはそんな経験をしたことがないから、けどな共感はできる聞いてるだけでも心が絞られてる。……だからあんたの最後に相応しい最高のセックスをしよう」
鼻を啜ったエリは頷き、その後すぐに小声で「ありがと」と言った。
そこから二人は何も話さずホテルに向かった。
数分後ホテルに到着、車を停めエリを見るとぐっすり寝ていた。ずっと泣いていたのか涙の跡が顔に残っている。
そんな彼女をおぶさりホテルの部屋に入った。
ベットに寝かせると、エヴァンは書き置きを残し部屋を出る。
エヴァンは再び車に乗り店に戻った。
数分かけ店につきさっきと同じ場所に車を停めて店に入る。
「ヨゥ、もう帰ったと思ったぜ。女とのお楽しみはどうだった」
「最高のドライブだったぜ。あんなエロい女生まれて初めて出会った」
「そりゃ良かったな」
あちゃー、完全にキレてる。
カウンターに進みさっきと同じ席に座る。
「悪かったって、弁償もするし酒代も払う」
「お前が注文した酒俺が飲んでやった」
テーブル席からの声。エヴァンは指輪差し「ありがとう」と言った。
「それに依頼も多くやる」
「許す」
それを聞きエヴァンと店主はシェイクハンドをした。
「恩に着るよ兄弟。そんで依頼はどんなんが出てるんだ?」