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第1章(偽りの騎士)

「3,000年にわたり巨大な壁に守られた世界で、悪魔が出現し始めたとき、人類の平和は打ち砕かれた。騎士たちはその原因を突き止められなかった。そして今、最後の希望は騎士に変装する魔法使いに託されている。危険と暗い秘密の中、彼は 25,000 キロの壁に沿って歩き、世界を救うか破壊するかの謎を解明しようとします。しかし、人類に嫌われている魔法使いが、人類にとって必要なヒーローになれるでしょうか?

広大な草原の真ん中に、時の流れによって老朽化した小さな牧場が佇んでいた。牧場は高い山々に囲まれた谷間にあり、まるで外の世界から切り離されたような孤立感を与えている。一方には鬱蒼とした森が広がり、もう一方には丘から流れ出す透明な小川が草原を分けるように静かに流れている。


その素朴な牧場からは、周囲のどの山よりも際立つ一際高い山がはっきりと見える。その山は「エミルトン山」と呼ばれ、頂上は薄い雲に包まれていることが多く、その景観に神秘的な雰囲気を与えていた。この土地の所有者である老いた農夫と共に、その牧場には一人の魔法使いが住んでいた。おそらく、この世界に生き残った最後の魔法使いであった。


その朝、魔法使いは旅の準備をしていた。大きな荷物が彼の馬の鞍にしっかりと結び付けられている。農夫は魔法使いの出発を知っていたが、いつも通り畑でキャベツの収穫に勤しんでいた。涙も悲しみも見せず、ただ淡々と作業を続けている。長年共に暮らしてきた彼らの間には、言葉を超えた理解があった。


馬を進め牧場を離れようとした時、魔法使いは畑の近くで立ち止まり、農夫を名残惜しそうに見つめた。農夫は一瞬だけ顔を上げると、冷静な声で尋ねた。

「都に行くのか?」


「ああ。」魔法使いは短く答えた。


農夫はその答えに軽くうなずき、静かに言葉を続けた。

「お前は死ぬだろう。」


「わかっている。」魔法使いはそう答えると、馬を速く駆けさせ、長年住んだ牧場を後にした。


都へ向かう長い旅が始まった。彼は自分が魔法使いであることを隠すため、鎧を身にまとい、剣を携え、旅の騎士のような姿を装っていた。王国は公式に魔法使いを保護していたが、それでも魔法使いへの憎悪を抱く者たちの存在が危険をもたらすことを彼は知っていた。それでも、彼の目には微塵の恐れも見えなかった。


最初の村に到着すると、彼は収穫作業に忙しい村人たちの姿を見た。ある老人が重そうな麦の袋を運ぶのに苦労しているのを見かけ、彼は馬を降りて手を貸した。鍛えられた腕でその袋を持ち上げ、村の倉庫まで運ぶと、村人たちは感謝の言葉を述べたが、どこか警戒の色を隠せないようだった。


村人たちが距離を置いているのは、彼が魔法使いだと知っているからだけではない。かつて、騎士を装った盗賊が村を襲い、村人たちを傷つけたという出来事があった。その傷跡は深く残り、見知らぬ者への不信感を植え付けていたのだ。


別の村では、一人の母親が逃げた鶏を探して困っていた。彼はすぐにその鶏を探し、茂みの中で動けなくなっている鶏を見つけて助け出した。母親は感謝の祈りを捧げ、彼の旅の安全を願った。こうした小さな善行は徐々に村人たちの心に良い印象を残していった。


しかし、旅路は常に平穏ではなかった。広い草原を越えている途中、突然空気が変わり、奇妙な静けさが辺りを包んだ。茂みの中から狼の群れが現れ、鋭い目で彼を見据える。彼はすぐに剣を引き抜き、戦闘の構えを取った。


最初の狼が鋭いスピードで襲いかかってきたが、彼は素早くかわし、鋭い一撃で前足を傷つけた。続けて二匹の狼が同時に攻撃してきたが、彼は後退しながら体勢を整え、小高い丘の上で有利な位置を確保した。そして反撃し、二匹目を仕留めた。


最後に残った一匹は他の狼よりも大きく、驚くほどの知恵を持って彼を攻めてきた。巧妙なフェイントに一瞬惑わされたものの、彼は正確な垂直の一撃でその狼を倒した。草原には血が流れ、彼は息を整えながら剣を拭き、再び馬に乗って旅を続けた。この戦いは、魔法の力だけに頼らずとも世界の危険に立ち向かえるということを彼に思い出させるものだった。


日が暮れた頃、彼は次の村にたどり着いた。体は埃と小さな傷で汚れていたが、その姿はまるで本物の冒険者のようだった。村人たちは彼に休む場所と食事を提供し、彼は静かに食事をとりながら、まだ続く長い旅路に思いを馳せていた。


通常、都への道は一ヶ月で行ける。しかし彼は「エミルトン山脈」を通る遠回りのルートを選んだ。このルートは険しい地形と凍える寒さ、そして「ズラ」という名の謎の存在にまつわる噂で悪名高い。「竜の山」とも呼ばれるこの山脈は、オーロリア王国が成立する以前、伝説的な竜たちがその頂に棲んでいたと信じられている。竜同士の戦いが山に深い谷を刻んだという話は、今でも地元の長老たちによって語り継がれていた。


エミルトン山脈を越えて進む魔術師


貴族たちの脅威から身を守るため、魔術師はこの道を選んだ。自分の存在が単なる魔術師としてだけでなく、過去の悲劇を象徴する者として多くの者に疎まれ、命を狙われていることを彼はよく理解していた。

エミルトン山脈は貴族の密偵から身を隠すには最適だったが、それでも他の危険がなくなるわけではなかった。


険しい山道を登りながら、魔術師は絶え間ない挑戦に直面した。雪解け水で滑りやすくなった岩だらけの道、そしてその横に口を開ける深い崖――彼は一瞬たりとも気を抜けなかった。最初の夜、彼は狭い洞窟で小さな焚火を起こし、体を温めた。炎の明かりが洞窟の壁に刻まれた爪痕のような跡を映し出した。最初、彼はこれを竜の仕業だと思ったが、その大きさが竜には小さすぎることに気づいた。


3日目、雪が激しく降り始めたとき、魔術師は足音が近づくのを聞いた。反射的に構えを取ると、濃い霧の中から4人の男たちが姿を現した。厚いコートに顔を隠したその姿は明らかに殺し屋だった。おそらく貴族が彼を首都に到達させないために差し向けたのだろう。


「標的は鎧をまとった魔術師だ」と一人が低い声で言った。「該当する者は全員殺せ。」


魔術師は彼らの動きを注意深く観察し、一人のコートに刻まれた紋章を見てすぐに気づいた。それはかつて王国が魔術師たちを大量処刑するために雇った集団のものであった。彼は静かに剣を引き抜き、戦闘の準備をした。


戦いは白く染まった雪の中で始まった。殺し屋たちは訓練を受けた動きで精密に短剣や投げナイフを使ったが、魔術師はそれ以上に迅速だった。彼はかつて騎士として学んだ剣術の技を駆使し、地形を利用して身を守った。短い時間で、彼は2人の殺し屋を地面に沈めた。


残る2人は不利な状況を悟り、逃げ出した。魔術師は追いかけず、その場に立ったまま、荒い息をつきながらも勝利を収めた喜びをかみしめた。素早く戦闘の痕跡を消し、彼は旅を再開した。


1か月が経過し、エミルトン山脈を下り始めた魔術師。冷たい空気がますます肌を刺すように感じられ、降り積もる雪が彼の歩みをさらに重くした。険しい山道の脇で、彼は2つの凍りついた遺体を見つけて足を止めた。


彼は遺体を慎重に調べた。表情は恐怖と苦痛に歪み、凍りついたまま固定されていた。戦闘の痕跡はなく、ただ彼らの所持品だけが散らばっていた――カビの生えた硬いパンの切れ端や、破れた袋など。


一人の遺体のポケットから、彼は短い指令が書かれた手紙を見つけた。その内容は「この山を越える鎧をまとった魔術師を殺せ」というものだった。


遺体の一人は手に短剣を握りしめており、何かに抵抗しようとしたように見えたが、外傷は見当たらず、ただ寒さだけが彼らの命を奪ったのだと推測された。魔術師は辺りを見回した。道は静まり返っていたが、どこかから視線を感じているような気がしてならなかった。


彼は短い祈りを捧げ、再び足を進めた。険しい山道の先に待ち受ける危険に警戒しながら――。


(続く)


しかし、彼が矢を放つ前に、鹿の悪魔は倒れ、死んでしまった。どうやら村人たちは知恵を絞り、その悪魔の足を非常に強い縄で縛っていたようだ。その結果、悪魔が倒れると、自分の巨大な体が心臓や骨を押しつぶし、瞬時に命を落としたのだ。


魔術師は矢の炎を消し、ゆっくりと近づいていった。村人たちは協力して悪魔の死体を切り分け、運び出していた。すると、村の長老が彼に近づき、尋ねた。


「あなたはこの悪魔を倒すために派遣された騎士なのか?もしそうなら、私たちは騎士の助けなど必要ないとお伝えください。」


魔術師はその言葉を静かに受け止め、長老を見つめながら答えた。「私は王国の騎士ではありません。ただの旅人で、たまたまここを通りかかっただけです。」


その答えを聞いた長老は少しだけ表情を和らげた。そして彼に村人たちと一緒に悪魔の死体処理を手伝ってくれるよう頼んだ。魔術師は迷うことなく承諾し、一日中村人たちと共に作業を進めた。


昼から夕方にかけて、魔術師は長老の家の庭で座り、疲れた体を休めていた。しかし、彼の中に湧き上がる疑問を無視することはできなかった。彼はこの悪魔がどこから来たのか尋ねようとしたが、その前に長老が口を開いた。


「お前は魔術師か?」と長老が突然問いかけた。


その質問に魔術師は驚いた。言葉を失い、どう答えるべきか迷っていた。しかし、長老は静かに続けた。「心配するな。誰にも言わんよ。今日はお前が我々を助けてくれたのだから。」


長老は薄い笑みを浮かべた。「手の傷跡を見ればわかる」と言いながら、魔術師の手を指さした。「最近の魔術師はほとんどがこの傷を持っている。杖を手に埋め込むことで、魔法を使っても周囲から怪しまれないようにしている。お前が手を洗っているとき、たまたまその傷が見えたのだ。」


魔術師は下を向き、自分の手を見つめた。杖がいつ埋め込まれたのか覚えていない。ただ、幼い頃から祖父に育てられ、その腕の傷跡は魔術師の証だと教えられていた。


長老は立ち上がり、彼の肩を軽く叩いた。「出発する前に、この肉を旅の食料として持っていけ。心配するな、誰にもお前の正体を話したりはしない。」


魔術師は安堵の息をついた。「ありがとうございます、長老様。出発する前に一つだけ質問があります。この悪魔の鹿はどこから来たのですか?」


長老はゆっくりと頷いた。「この悪魔はシルバーシェード川から来た。そこには魔術師がいるという話だが、それは子供たちを川の近くの森に近づけないようにするための作り話に過ぎない。」


「ニンフィリアの森か…」と魔術師は呟いた。その名前を古い書物で見たことがあった。「では、そこへ行ってみよう。」


出発前に彼は言った。「ところで、私は王から悪魔の侵入経路を調査するよう命じられました。質問に答えてくださり感謝します。王のご加護がありますように。それでは、長老様、お元気で。」


魔術師は鹿の悪魔の肉を馬に乗せ、旅を続けた。長老は遠くから彼の姿を見つめながら、深いため息をついた。「本当にお前を殺そうとしている者がいるのか…。この旅が、魔術師たちの過去の罪を清算することになるといいのだが。」と静かに呟き、家の中へと戻っていった。





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