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第9話ゴブリン襲来編③

「うちのベックが失礼した。すまない」

 ギルド『ブルースター』のマスター、ローガンがマリアに声をかけた。

「いえ、気にしてませんので」

 マリアが短く答え、軽く会釈して歩きはじめる。

 すかさずローガンが彼女の横に並んで歩調を合わせる。

「以前もお願いしたが、うちのギルドに加入してくれないか? うちに入ってくれたら、モンスターとの危険な戦闘をする必要もない。秘書として私をサポートしてもらいたいんだ」

「その話はお断りしたはずです。私は冒険者を続けます」

「君の意思は立派だと思う。だけどもう少し現実を見た方がいい。私の秘書になってくれたら月50万ギル払うよ。君には色々頼みたいことがあるんだよ。君にしかできないことさ」

 ローガンが大きな手振りで話を続ける。

「単なる秘書にしたらずいぶんな好待遇ですね。まわりくどいのではっきり言ってくれませんか?」

「君も子供じゃないんだから、分かってるだろ? そんなに大きくて立派なものぶら下げてるんだ。私のを挟んでくれればいいんだよ。16ならもう何本か挟んだことくらいあるだろ?」

 防具で隠れたマリアの胸元にローガンがいやらしい視線を送る。


(紳士的な態度で接してたけど、こいつも本性現したわね。この町のギルマスはみんな同じ。私の胸しか見ていない……)


 マリアはローガン以外のギルマス2人からも勧誘を受けていた。マスターたちはマリアを戦力としてではなく、彼女の巨乳で己の性欲を満たしたい一心でしつこく勧誘を繰り返していた。

 最初は気さくに、あるいは真面目に接していた彼らもしびれを切らし、露骨に莫大な報酬を提示して卑猥な表現でマリアに迫った。彼女は冷静に対処し、マスターたちの勧誘を迷うことなくはねのけた。

 ルドルフに寄るたび繰り返されるやり取りに、マリアは辟易としていた。


「なあ、毎日とは言わない。週3で挟んでくれればいい。月60万でどうだ?」

「今まで挟んだことはありませんし、今後も挟むつもりはありません! 失礼します!」

 マリアが語気を強めてはっきりと断り、足早にローガンから離れた。


(1時間後にゴブリン殲滅作戦があるっていうのに、ギルマスのくせになに考えてんのよっ。どいつもこいつも男ってホント最低だわ。だけど、アイツはちょっと違ったな。採寸とかスキャンとか初めはびっくりしたけど、真剣に私のこと考えてくれて戦闘用ブラを作ってくれた)


 マリアが立ち止まり胸を抱えるように両腕を組む。


(ハルトなら挟んであげても……ってなに考えてんの私! クエストに集中!)


 金髪美少女が力いっぱいバチバチ頬を叩く様子を、通りに行き交う人々がクスクス笑いながら眺めていた。

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