第74話マリア救出編⑬
「私の家は貧しくてね。親も早くに亡くして弟や妹の面倒は私が見てた。弓の腕を認められて騎士団へ入隊したんだ。弓は猟師だった父親から教わった。騎士団の報酬は安定してるけど、弟と妹4人を食べさせていくには少なくてね。少しでも多く仕送りしてやりたかったんだ……」
「人の弱みに付け込んでグレイって男、最低なヤツね!」
ノエルの話を聞いたシルフが憤慨する。
「俺たちはこれから王都に向かう。顔の知られてるベネディクタとオリバーは行動が制限される。俺たちを信じてくれとは言わない。ただ、マリアを助け出すためにノエルの力を貸してほしい。お願いできないかな?」
「私も真実を見極めたい。報酬目当てで入団した騎士団だけど、多くの人の命を救ってきたことに誇りを持っていた。グレイ大隊長のやろうとしていることが悪ならば、
それに加担してしまった私が落とし前をつけなければならない」
ハルトの頼みにノエルが応えた。
「改めてよろしくお願いします。ベネディクタと呼んでください」
「防具職人のハルトだ。よろしく頼む!」
「私は風の精霊。シルフでいいわよ」
「貴族出身の騎士に防具職人と精霊か。面白い組み合わせだな」
ノエルが3人を見比べ笑みをこぼした。
「あっ、ノ―ムが戻って来たわ。ベックとオリバーも一緒よ」
シルフの言葉にハルトがうなずく。
「合流したら町へ入ろう。作戦会議だ」
ノエルという協力者を得たハルトは気持ちを切り替え、マリアの連れ去られた方角をジッと見つめた。
エドワードの部隊が王都に到着したのは明け方のことだった。ハルトたちの襲撃を恐れたエドワードは、休憩も取らずに夜通し馬を走らせた。エドワードは上官であるジャック・クール連隊長へ報告を済ませると、疲弊しきった様子で詰め所の自室に入りそのまま眠りについた。
マリアはアデリナと共に、王都の収容施設へ搬送された。王都で犯罪を犯した罪人たちが収監される施設である。
「ヒューッ。すげぇイイ女だぁ」
「おい、ねぇちゃん。おっぱい何カップだぁ? 挟んでくれよぉ」
囚人たちが鉄格子に掴まり、マリアの体を舐めまわすように見つめる。
卑猥な言葉を浴びせられても顔色一つ変えずに、マリアはアデリナの手をしっかりと掴んで進んでいく。凶悪な大人の男たちを前に、アデリナは小さな体をブルブルと震わせていた。
「大丈夫よ。心配しないで。お姉ちゃんがついてるから」
マリアがアデリナに優しく話しかけ、微笑みかける。
アデリナは小さくうなずいて、マリアの手をギュッと握り返した。




