第71話マリア救出編⑩
「グレイ大隊長、冒険者の仲間が見当たりません!」
1人の兵士がエドワードに報告する。
「バーリー中隊長はどうした?」
「それが……中隊長の姿も見えません」
「冒険者と娘を収容しろ。すぐに出るぞ」
エドワードが馬に跨った。
「しかし、中隊長が……」
「貴様、命令が聞こえなかったのか? 命令違反は重罪だぞ」
「は、はいっ。了解しました!」
脅された兵士が慌てて馬車の方へ走っていく。
「ほら、さっさと入れっ」
「ちょっと、乱暴しないで。まだ子供よ。大の男が恥ずかしくないの?」
アデリナの背中を押す兵士に、マリアが詰め寄りにらみつける。
「気の強い女だ。お前もさっさと入れ!」
兵士に怒鳴られ、マリアはアデリナの肩を抱きながら馬車の檻の中へ戻っていった。
(ハルト、ベネディ、助けに来てくれたのにごめんね。でも、アデリナを一人にはできない。お母さんに会わせてあげるって約束したから……)
マリアはアデリナを抱きしめ背中を撫でながら、幌に覆われ暗くなった荷台の隅を見つめた。
ハルトたちは擬態機能の備わったマントをかぶり、隆起した地面に溶け込んで身を潜めていた。
マリアを収容した馬車が走り出す。やがて兵士たちの姿も見えなくなった。
「なんでコイツと一緒に隠れなきゃならねぇんだよ! シルフをやったヤツだぞっ。早く殺しちまえ!」
ノ―ムが騒ぎ立てる。
「精霊が物騒な発言するなよ。コイツは殺さない。貴重な情報源だからな」
ハルトがノエルの太ももを止血する。
「ふんっ。拷問されてもしゃべらない。お前らに情報なんてやるものか」
「んだとぉ! 今すぐぶっ殺す!」
「だから殺すなって」
ハルトがノ―ムをたしなめる。
「ハルト急いでっ。シルフの呼吸がどんどん弱くなってる」
シルフはベネディクタの手に包まれ、火傷を負った体で横たわっていた。
「こんな男ほっとけよっ。マリアをさらった悪党だぞ。出血多量で死んじまえ!」
「なんだと! 悪党はどっちだっ。イテテテ……」
ノ―ムに罵声を浴びせられ、ノエルが言い返す。
「おい、ジッとしてろよ。腹からも出血してるぞ」
「ば、バカッ。脱がすな! これは爆風で弾かれた石が当たっただけでかすり傷だ。やめろっ」
「おい、暴れるな。止血した足を動かすな」
抵抗するノエルの服をハルトが脱がす。
「きゃぁっ」
上半身裸になったノエルが叫び声を上げた。
「お、おい。コイツの胸の膨らみ……」
ノ―ムが驚きのあまり目を丸くする。
「これは……推定Bカップだな。余計なお世話かも知れないが、ブラはちゃんとつけ――」
ハルトは言い終える前に、ノエルの強烈な平手打ちを喰らって倒れた。




