第68話マリア救出編⑦
「マリア、この子を連れて飛ぶことはできない……」
「どうして?」
「飛行魔法で十分なスピードを維持できるのは3人までなんだ。術者含め4人で飛行した場合、格段に減速して追いつかれてしまう」
ハルトが早口で説明する。
「そうだ! シルフがアデリナを連れて飛べばいいのよ。そうすれば定員オーバーしないでしょ?」
マリアの提案にハルトが首を横に振る。
「前にも話したけど、俺の魔法はシルフとノ―ムに依存したものなんだ。シルフと同時に飛行魔法を使用することはできないんだ」
「そんな……」
マリアが口に手を当て言葉を失う
(ハルトは何してるの? マリアと何か話しているみたいだけれど。この場から早く離脱しなければ!)
ベネディクタが燃え上がる矢の攻撃を紙一重でかわし、ノエルとの間合いを一気に詰めていく。
ノエルがさらに矢を射抜く。一直線に向かってくる矢をベネディクタがレイピアで斬り落とす。
(さすがに上手い。精鋭部隊の元小隊長、戦い慣れてる。簡単には近づかせてくれないわね)
ベネディクタはこの短時間の戦闘で、かなり体力を消耗していた。自動追尾で追ってくる矢の攻撃をかわしつつ間合いを詰め、ノエルに接近戦を仕掛けようと試みるが簡単に近づくことはできない。ベネディクタの足が止まると、ノエルが再び矢を放ち、自動追尾攻撃を仕掛けてくる。
ノエルの魔法弓による攻撃は強力で、戦闘用ブラの魔法陣が盾となって被弾するたび、ベネディクタの胸に強い衝撃が襲った。
(爆破の威力が強すぎる……魔法陣は耐えられるけど、このままじゃ私の体がもたないわ)
ベネディクタは被弾するたび、胸に走る衝撃の痛みを必死にこらえた。
(しぶといヤツ。上級貴族出身って聞いたから単なるお飾りかと思ったけど、精鋭部隊でも通用する実力……集中切らしたらこっちがやられる)
ノエルは額から噴き出る汗を素早く拭い、動きを止めないベネディクタに意識を集中させた。
ノエルは初めて出会った目の前の強敵に動揺していた。
本来、弓兵部隊は遠距離にいる敵に対し全体攻撃を行うことが役目である。弓による物理攻撃は魔法攻撃と比較すると、攻撃力、命中率ともに劣るため、弓兵単体の戦闘力は低いと言っても過言ではない。しかし、ノエルの実力は通常の弓兵と一線を画すものだった。スキルによる高い命中率と自動追尾攻撃、魔法弓による広範囲攻撃を得意とする彼女は、単体で弓兵一個中隊以上の戦闘力を保持していた。
ノエルが狙いを定めた敵は、これまで全て確実に射抜いてきた。強力なモンスター、剣士から魔導士に至るまで、ノエルは自分の安全な間合いからすべての敵を倒してきた。
(クソッ。また間合いに入られた。どんどん近づいて来てる。檻から冒険者が抜け出してるってのに、こっちが手いっぱいでそれごころじゃない。こうなったら……)
ノエルがすきを見て、空へ向け1本の矢を放った。




