第65話マリア救出編④
「う……うぅん」
気を失っていたマリアがゆっくりと目を開ける。
(ここは……馬車の中?)
マリアが鉄格子を両手で掴み、外を確認しようと試みる。しかし、馬車は大きな布地で覆われているため周囲を見渡すことはできない。
(そうか。私、兵士に拉致されて……)
マリアは額に手を当て、ダンジョンでの出来事を思い出しながら頭の中を整理した。
(ベネディたち、無事だといいんだけど……)
マリアが両膝を抱えてため息をつく。
「あれ? あなた……」
マリアは自分の他にも檻の中に閉じ込められている者がいることに気がついた。
小柄な少女が暗がりでうずくまり、肩を震わせながら泣いている。
「大丈夫よ。何もしないから安心して。私はマリア。あなたの名前は?」
「……アデリナ」
少女が小さな声で答える。
「アデリナはどうしてここにいるの? 兵士に連れてこられたの?」
「……私、パンを盗んで捕まったの。うち、食べるものが無くて。だけどお母さん病気で動けなくて……」
アデリナの目から涙が溢れる。
「そうだったんだね。つらかったね……」
マリアが近づき、アデリナを優しく抱きしめた。
「お姉ちゃんも悪いことをしたから捕まったの?」
「お姉ちゃんは……なんで捕まったのかよく分からないかな」
マリアが困った顔で笑う。
「私、牢屋に入れられちゃうのかな? もうお母さんに会えないのかな?」
アデリナがマリアに抱き着いたまま声を震わせる。
「大丈夫だよ。お姉ちゃんがアデリナをお母さんに会わせてあげる」
「本当?」
「うん。お姉ちゃん冒険者なの。けっこう強いんだから。アデリナをここから連れ出して、お家まで連れて行ってあげるから」
「お姉ちゃん、ありがとう」
アデリナが笑顔を見せ、マリアの首に抱き着いた。
馬車の動きが止まり、幌の中に兵士が入って来た。兵士は無言で檻の中にパンを2つ押し込んだ。
「お腹空いたでしょ。ほら、食べて」
マリアが2つのパンをアデリナに差し出す。
「え、でもお姉ちゃんの分が……」
「お姉ちゃんはお腹いっぱいだから食べて。それにダイエット中なの。お姉ちゃんの友達にベネディって子がいてね。お姉ちゃんより背が高くてスタイルがいいの。だからお姉ちゃんも頑張って……」
マリアが言葉に詰まる。目頭が熱くなり、涙が溢れそうになるのを必死でこらえる。
「お姉ちゃんはお友達のベネディに会いたいの?」
「うん、そうだね。ベネディに会いたい。みんなに会いたい。だからアデリナの気持ち、よく分かるよ」
マリアが涙をぬぐい、笑顔で答えた。




