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第62話マリア救出編①

 ベネディクタが再び目を覚ましたのは、ルドルフの町に搬送されて1時間後のことだった。ギルド協会の一室に寝かされていたベネディクタが、ゆっくりとベッドから起き上がる。すぐそばで付き添っていたオリバーが、椅子に座ったまま居眠りしている。ベネディクタはその様子を微笑ましく見つめた。

「おっ、起きたのか? 体は平気か? 傷はポーションで完治してるが、まだ体力が回復してないだろ? これ飲んどけ」

「これは、最高級ポーションではないですか!」

 手渡されたポーションを見てベネディクタが驚く。

「ああ。ハルトが知り合いから譲ってもらったそうだ。おかげで俺も完全回復だぜ」

 オリバーが両腕の力こぶを見せる。

「ハルトは?」

「今、ギルド協会支部長と話してる。事態はかなり深刻だからな。お前さんが起きたこと、知らせてくる」

 オリバーが椅子から立ち上がった。



 

 アルデア王国は大陸東部に位置する小国である。豊かな自然と豊富な水資源に恵まれ農業が盛んな一方、魔石の採掘量にも優れている。周囲を3つの大国に囲まれながら併合を免れてきたのは、食糧や魔石を安定した価格で取引し、良好な貿易関係を築いてきたからである。

 近年3つの大国は口裏を合わせたかのように、同じタイミングで値下げ交渉を仕掛けてきた。軍事力で劣るアルデアは、値下げをきっぱり断り切れずに頭を悩ませていた。


「陛下、計画は順調に進んでおります。ご安心ください」

 城内の一室で王国騎士団長が国王の前にひざまずく。

「うむ。頼りにしておるぞ。完成まであとどれくらいの時間を要する?」

「試作品が2日後には。3日後には量産体制に移行いたします」

「素晴らしい! 任せたぞ」

 国王の表情が明るくなった。

「はっ。量産体制に入るまで、値下げ交渉を出来る限り引き延ばしていただきたくお願いいたします」

「うむ、すでに担当大臣に申し付けてある。この計画が成功すれば、三大国の顔色をうかがう必要も無くなるわっ。はははははっ」

 国王は豪快に笑いながら部屋をあとにした。


「団長、マリアの搬送ですが若干の遅れが生じております」

 慌ただしく入室した王国騎士団第4連隊長が報告する。

「何か問題でも?」

「マリアが暴れ、兵士が負傷いたしました。バーリー中隊長が取り押さえ、厳重に拘束いたしましたので、もう問題はないかと」

「そうか。剣無しで兵士を。体術の強さも父親譲りだな……」

 騎士団長は物思いにふける表情で、窓から遠くの空を見つめた。

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