第59話ランガの森ダンジョン編㊵
「これを使って」
アレクシアが最高級ポーションをハルトに手渡した。
「なんでこんなものを?」
「私らの父さん、冒険者だったの。もう死んじゃったけど。『いつ何が起こるか分からないから備えを怠るな』って言うのが口癖でさ」
「このポーションも父から譲り受けたものなの。お役に立てて良かったわ」
2人の姉妹が少し切なそうに笑った。
「ありがとう! 助かったよ」
ハルトがポーションの蓋を開け、傷だらけのシルフにゆっくりとかけていく。
「ん……うぅん。復活!」
「このバカ! 心配かけやがってえ」
ノ―ムが泣きながらシルフに抱き着く。
「シルフ、ここまで本当にありがとな! 俺はマスターにダンジョンのこと知らせてくる。ここは任せた」
ベックは早口で言うと店から飛び出していった。
「ダンジョンで何があった?」
「とにかくヤバいことになってるの! 飛びながら話すわ。一緒に来て」
深刻な表情で話すシルフを見て、ノ―ムとハルトは事態の緊急性を察した。
「アレクシア、クラーラ。本当にすまないが急用ができた。さっきの彼、ベックは俺の知り合いの冒険者で『ブルースター』のメンバーだ。信用できるヤツだ。店は必ず元通りに直してくれるから心配ない」
「ハルトさんのお墨付きなら安心ね。受け取り伝票発行しておくわ。いつでも取りに来てね」
「ほら、急いでるんでしょ? 私たちなら心配いらないから、さっさと行きなさいよ」
2人の姉妹が笑顔で答える。
「ありがとう。また来るよ」
ハルトの体がふわりと宙に浮く。シルフとノ―ムと共に、ハルトは店を飛び出し空へ向かって急上昇した。
「飛んで行っちゃったわね……」
「うん。あの小さなかわいい子って精霊? 私、初めて見たんだけど」
「私も初めて見たわ」
姉妹はポツリとつぶやき、お互いの顔を見合わせてクスクスと笑い出した。
激戦の収束したダンジョン内は、いたるところがボロボロに崩れ、戦闘の過酷さを物語っていた。
レイピアを鞘に納めたベネディクタが崩れるように座り込む。
「ベネディ!」
「大丈夫よ。安心してちょっと気が抜けただけ」
駆け寄るマリアにベネディクタが微笑む。
マリアに体を支えられ、ベネディクタが立ち上がる。2人が足を引きずりながら、胴体から切り離されたミラーの首に近づいていく。
「一体こいつは何だったんだ?」
「ミラーが魔石を回収しようとしていたこと、魔石の影響でモンスター化したことは確かですね」
オリバーの問いにベネディクタが答えた。




