第58話ランガの森ダンジョン編㊴
「なるほど。冒険者が着けている戦闘用ブラを見て、女性客が殺到したってことね」
ハルトの説明に納得したクラーラが頷く。
「一般向けの下着を私たちのお店で委託販売してほしいということで間違いないかしら?」
アレクシアが確認する。
「ああ、その通り。俺が注文を受けたお客は皆ルドルフの住民だった。わざわざロームまで足を運ぶより、ここで商品を受け取った方が楽だろ? もちろん2人には手数料も支払うよ」
「うちは構わないよね?」
クラーラがアレクシアの顔を見る。
「ええ、もちろん。でも、ハルトさんにメリットが無いように思えるのだけれど……」
「成り行きで一般向けの下着を作ることになったけど、俺の本職は防具職人だ。もし2人の店に冒険者が来たときは、俺の店を紹介してくれないか?」
「なるほど、手数料はハルトさんのお店を宣伝するための広告料ということね」
アレクシアがにっこり微笑んだ。
「交渉成立だね」
「ああ、よろしくな」
クラーラが嬉しそうにハルトと握手を交わした。
「早速だけど、今回の納品分がこれだ。注文したお客の名前を書いたタグが付けてある」
「けっこうあるわね」
「ライバル店出現って感じ」
2人がバッグの中身を確認する。
「俺はデザインの知識もないし、完全に素人の自己流さ。変わった下着が珍しかったんだろ。そのうち注文も減っていくさ」
ハルトが苦笑いを見せる。
「それじゃ、受け取り伝票書くわね。クラーラ、手伝ってくれる?」
「オッケー」
2人が立ち上がった瞬間、大きな衝撃音と共に店の扉が破壊された。
クラーラとアレクシアが叫び声を上げてうずくまる。
「ノ―ム!」
「ここにいるわよっ」
身構えるハルトの呼び声にノ―ムが答える。
「ゲホ、ゲホ……」
土埃の中から男がせき込みながら立ち上がる。
「扉を破壊して入店とは穏やかじゃないな。一体どういうつもりなんだ?」
警戒するハルトに男がよろめきながら近づく。
「すまない。これは事故だ。信じてくれ。俺はギルド『ブルースター』のベックだ。森のダンジョンで危険なモンスターが出現した。これから住民を避難させないといけない。店の修理費用は必ず――」
「おい、ベックなのか? ハルトだ。ダンジョンで何が起こった?」
ハルトが慌ててベックに駆け寄る。
「えっ! ハルト? なんでここに……それよりシルフがやべぇんだ! ケガしてんのに俺をここまで運んでくれて」
ベックの両手の平の上で、シルフは傷だらけになり横たわっていた。
「シルフ! なんでこんなっ」
ノ―ムがシルフの体を抱きかかえる。
「クソッ。ベック、この町にSランクのポーションを売ってる店は?」
「そんな高級品置いてる店は無い。ノーマルじゃダメなのか?」
「精霊の傷を癒すには純度の高いポーションが必要なんだ。このままだとシルフが……」
ハルトが表情を曇らせる。




