第39話ランガの森ダンジョン編⑳
ダンジョンを目指す騎士団一行は隊列を整え、最短ルートを進んでいた。まだ朝だと言うのに木々がうっそうと生い茂る森の中は薄暗い。時々聞こえてくる動物の鳴き声に、兵士たちは落ち着きなくキョロキョロと周囲を見渡す。
「こう言ったら失礼だけど、ずぶん頼りない感じね」
マリアがベネディクタに小声で語りかける。
「この部隊のほとんどの兵士は実戦経験が無いの」
「えっ! 王国騎士団はエリート中のエリートって聞いてますけど」
ベックが驚きの声を上げる。
「大半が貴族の親の七光りよ。一般兵士も訓練が日常で、実戦経験のあるものはほとんどいないわ。特にミラー大隊が典型的な形ね」
ベネディクタが苦笑いする。
「他の部隊には、ベネディみたいに強い人もいるんでしょ?」
「ええ、もちろん。騎士団長の武勇伝は有名よ。それに連隊長クラスは全員叩き上げの武闘派揃いよ」
「ストップ!」
穏やかに会話するマリアとベネディクタに、前を歩くベックが止まれの合図を送った。
ベネディクタとマリアが剣を構える。
「いつの間にかモンスターの群生地に入ってたみたいね」
「動くなよ。孤立したら一気にやられるぞ」
ベックが周囲を警戒しながら声をかける。
木々の陰から全長30センチくらいの植物性モンスターが現れた。徐々に数が増えていく。
「キャっ」
マリアが地面に倒れる。彼女の右足には細長い緑色のツルが巻き付いていた。
「うあぁぁぁぁっ!」
後方から兵士たちの叫び声が上がった。体をツルに巻き付かれた兵士たちが、なすすべなく地面に転がる。
「ここはいいから、ベックは後方をお願い」
ベネディがマリアの足に絡みついたツルを斬りながら叫ぶ。
「了解!」
ベックは後方の兵士たちを助けに走った。
「大丈夫?」
「ベネディありがとう。転んだだけだから平気」
マリアがお礼を言いながら立ち上がる。
ベネディクタがマリアの背に自分の背中を合わせて剣を構える。
「これでお互いの死角は防げるわ」
マリアとベネディクタが、足元に這い寄る小型の植物性モンスターたちを確実に仕留めていく。
「伸びてくるツルに気を付けて! スピードはそれほど速くないから――」
「ベネディ!」
ベネディクタの声が途切れた瞬間、彼女は地面に転がっていた。
「キャっ!」
背後から足を取られ、マリアも地面に倒れる。
足に巻き付いたツルを、2人は慌てて外そうと試みる。一見細く弱弱しく見えるツルがなかなかちぎれない。一本のツルに悪戦苦闘している隙に、何本ものツルがウネウネと這いより、マリアとベネディクタの手足に絡まった。




