第20話ランガの森ダンジョン編①
ゴブリン殲滅作戦から2週間が経過し、冒険者の半数以上を失ったルドルフの町の各ギルドマスターたちはギルド再建に追われていた。深刻な冒険者不足に陥ったギルド協会は、ギルド無所属のソロ冒険者にもクエストを発注し、ルドルフの大手3ギルドもそれを認可した。
比較的難易度の低い日常クエストを安定して受けられるため、ルドルフの町は
かつてないほど初級冒険者たちでにぎわっていた。その中でもとりわけ異彩を放っていたのが大剣を背に携えた金髪美少女剣士である。
マリア・バンフォード。彼女の名はゴブリン殲滅作戦のあと一夜にして町中に広まった。1人でゴブリン50匹を討伐し、ネームドゴブリンと互角に戦った美少女剣士。冒険者たちを助け町を救った英雄に、人々は歓喜し賞賛の拍手を贈った。
「けどよ、ギルド協会もホント融通きかねぇよな。ネームドに致命傷与えたんだから、中級ランクCに昇格したって当たり前なのによ」
クエストの帰り、ギルド協会へ向かう道でベックが不満そうに語る。
「飛び級で初級ランクAになったんだから満足よ。それにゾイドを倒したのは私じゃなくてハルトなんだから」
マリアが笑顔で答える。
「マリアがいなかったら俺らは全滅してた。それに仮面野郎さえいなけりゃ、絶対マリアがネームドを倒してたはずさ。あの場にいた全員が証言してんのに、協会のヤツら……」
戦いを終えたあと、ハルトは一つの提案をした。それは、ネームドゴブリンであるゾイドを倒したのは、マリアであると皆に証言してもらうことだった。
ハルトの性格上、防具職人の仕事以外で人から注目されることを好まなかったこと、そしてマリアがゾイドに致命傷を与えていたことが理由である。しかしマリアはその提案を受け入れなかった。結果、ネームドゴブリンにマリアが致命傷を与え、応援に駆け付けたハルトがとどめを刺したという妥協案が採用されたのである。
「まあまあ。それより、メンバーの勧誘はうまくいってるの? ベックが仕切ってるんでしょ?」
「ああ、新人の勧誘と教育は俺が任されてる。俺だってギルド入ってまだ2か月足らずなのによ。人手不足もここまでくるとホント深刻だよな」
「でもベック、顔つき変わったよ。死線を潜り抜けたせいかな?」
「ありがとよ。マリアにそう言ってもらえると正直嬉しいよ。だけど、一番変わったのはマリアだろ。一夜にして英雄になったんだから」
ベックはまるで自分のことのように嬉しそうな表情で言った。
「うん、でもまだ実感湧かないなあ。仕事が増えたのは実感してる」
マリアが自分で言って笑い出す。
「同期の活躍はすげぇ刺激もらうよ。俺もマリアみたいに強くなりてぇって思うし、みんなを引っ張っていけるリーダーになりてぇって思うよ」
「お世辞言ってもクエスト報酬割り増ししないからね」
2人は笑いながらギルド協会の扉を開き、受付へ向かった。




