第18話ゴブリン襲来編⑫
マリアの悲鳴を聞き、ベックや冒険者たちが彼女を救おうと奮闘するが、ゴブリンたちに行く手を阻まれ身動きがとれない。
「待ってろマリア! 今助けるからなっ。クソ、こいつらきりがねぇ」
「来ちゃダメ! 罠よっ」
マリアが叫んだ時には、ベックをはじめとする冒険者たち全員が一か所に密集した状態で、大量のゴブリンに取り囲まれていた。
「グハハハハ! 邪魔な冒険者どももこれでお終いだ。最後にいいものを見せてやる。この女の巨乳が俺様のイチモツを挟んで扱くサマをなぁ」
(だめ、このままじゃ。みんな死んじゃう。お願い、助けて……ハルト)
マリアの目から涙が溢れ、頬を伝って流れ落ちた。
「風よ我に力を! 疾風となりて敵を吹き飛ばせ!」
声のあとにすさまじい風圧がゾイドの巨体を持ち上げた。風に飛ばされたゾイドが森の木々をなぎ倒しながら転がっていく。
マリアの元に一人の青年が近づいてくる。見覚えのある顔に、マリアは喜びと安堵のあまり一気に涙が溢れだした。
「町に張られた結界を破るのに時間がかかった。遅くなってすまない」
「ハルト! 来てくれたのね。私、ハルトが作ってくれたブラのおかげで頑張れたんだけど……ごめんなさい」
マリアが片手で胸を隠しながら、引き裂かれたブラを握りしめる。
「ああ、見れば分かるよ。マリアが善戦したことは。まさかネームドまでいるとは思わなかった。ブラがダメージに耐えきれなかったのはマリアのせいじゃない。俺のミスだ」
ハルトがマリアに優しく語り掛け、肩にそっと手を置いた。
「クソガキがぁぁぁ! 俺様のお楽しみを邪魔しやがってぇぇぇ。八つ裂きにしてやるっ」
怒り狂ったゾイドが大剣を振り上げ突進してくる。
「ハルト、危ない!」
「平気だ」
ハルトは慌てるそぶりを見せず、マリアに自分の上着を着せた。
「ひゃっ。ちょ、ちょっとハルト」
ハルトに抱きかかえられマリアが赤面する。
「しっかり掴まっていて」
マリアを抱いたままハルトが宙に浮かぶ。地面から5メートル以上離れた位置でハルトの体は停止した。
「逃げるなぁぁぁ!」
ゾイドが十分な助走をつけて地面を蹴る。
「貫け!」
ハルトが叫んだ刹那、地面から飛び出した鋭い石柱がゾイドの体を貫通した。
「ブハアッ……」
口から大量の血を吐き出し、ゾイドがもがき苦しむ。ピクピクと痙攣する手足は、やがて全く動かなくなった。
マリアを抱いたハルトがゆっくり地面に降り立つ。
「お、おい。ゴブリンどもが逃げていくぞ!」
「勝った! 勝ったぞぉぉぉ」
森へ撤退するゴブリンを見て、冒険者たちが勝どきを上げた。
「もう大丈夫だ」
ハルトが抱きかかえていたマリアを離す。
「マリア?」
マリアはハルトから離れようとせず、彼の首に両手を回し、ぴたりと体を寄せた。
ハルトは黙ってマリアを抱きしめ、彼女の頭を優しく撫でた。




