第12話ゴブリン襲来編⑥
ゴブリンの奇襲攻撃に対応できず、防御の遅れた魔法剣士たちが次々に倒れていく。さらに前衛の冒険者たちを矢が貫き、あちこちから悲鳴が上がる。
「弓隊、応戦しろ!」
ローガンの声で冒険者たちが弓を構えて前に出た。
森の中から甲高い奇声が上がり、ゴブリンの群れが一気に押し寄せてくる。ゴブリンたちが剣やナイフを振り上げ弓隊に襲い掛かる。冒険者たちはなすすべなく、ゴブリンの刃の餌食となり、あっという間に真っ赤な血の海が広がった。
「ば、バカな! ゴブリンがなんで武器を装備してる!? 知能の低いゴブリンが戦術を使うなんてありえないっ」
想定外の事態にローガンが狼狽する。
ゴブリンは人間の形を模した小柄なモンスターだが、加工技術を持たないため本来、剣や弓などの武器は使用できない。こん棒による打撃や石の投てきが主な攻撃手段である。さらにゴブリンは知能が低いため、戦術を駆使した戦いや統率のとれた動きを行うことは不可能である。
武器を使い、軍隊のように統率されたゴブリン軍団の攻撃に、冒険者たちが次々と倒れていく。腹を切り裂かれて腸が飛び出し、首を突かれて血しぶきが飛ぶ。この世の地獄と言える残酷な戦況を目の当たりにした初級冒険者たちが、泣きわめきながら逃げ出していく。
前衛の中級冒険者たちも、ゴブリンの激しい攻撃に圧倒され、戦線を維持できなくなっていた。前衛ラインを突破したゴブリンたちが、逃げ惑う初級冒険者の背中に襲い掛かる。若い冒険者たちの悲痛な叫び声が戦場に虚しく響き渡った。
「だ、ダメだ……このままだと全滅する。撤退、撤退だ!」
真っ青な顔でローガンが叫んだ。
すでに統率を失った冒険者たちはバラバラとなり、混乱の中で必死に生き残ろうと剣を振っていた。ほとんどの初級冒険者たちは戦線を離脱し、逃げる途中で命を落とした。
「いやだ、いやだっ。死にたくない!」
地面に倒れたベックに3匹のゴブリンが襲い掛かる。泣きながら抵抗するベックの腕に、ゴブリンたちがナイフを突き立てる。
「うあぁぁぁっ。イテェェェ! 助けてくれぇぇっ」
腕から血を流しながらベックが叫ぶ。
ゴブリンがベックの顔面めがけてナイフを振り下ろす。その瞬間、3匹のゴブリンの体は大剣で真っ二つに切断され吹き飛ばされた。
「立ちなさい! 立って戦うのよ!」
マリアがベックの腕を掴んで引き起こす。
「む、無理だよぉ。魔法剣士も中級冒険者もみんなやられちまったぁ。もうおしまいだよぉ」
「しっかりしなさい! こんな時だからこそ冷静に戦うのよっ。武器を装備していてもゴブリンのステータスは変わりない。いつも通り戦えば倒せるわ!」
泣き言を言うベックの目の前で、マリアが周囲のゴブリンを撃破していく。
「す、すげぇ……」
「さぁ、ベックも戦って!」
「お、おうっ」
正気を取り戻したベックがゴブリンを斬り倒す。
「そう、その調子よ」
マリアは他の冒険者たちを助けに奔走した。
「撤退しちゃダメ! 私たちが逃げたら町が襲われる。絶対にここで食い止めるの!
戦える人は近くの人と連携して。即席パーティを組んで戦って!」
マリアの声が戦場に響いた。
金髪美少女剣士の活躍に命を救われた冒険者たちが団結していく。彼女の俊敏な体捌きと華麗な剣技を目の当たりにした冒険者たちが、再び敵に立ち向かう。
マリアは大剣のリーチと破壊力を存分に生かし、小柄なゴブリンたちを次々撃破していった。劣勢の冒険者たちを助け、迫りくるゴブリン軍団に先陣を切って切り込んでいくマリアの姿に、冒険者たちは奮起した。
ギルドマスターであるローガンの言葉に、もはや耳を傾ける者は一人もいない。突如として頭角を現した金髪美少女剣士の一挙手一投足と、彼女の言動によって冒険者たちの士気は向上し、劣勢だった戦況は互角にまで持ち直していた。




