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メモリー35

 アヤ・ライトニングは暇を持て余していたため、ドクター・ヨハンソンの発明品である謎の機械を手に取って掌の上で転がしていた。

 半透明の白色球体のそれはビー玉ほどの大きさしかなく、材質は触った感じからプラスチックのようだった。軽量かつ小型で、こっそり持ち運ぶには最適と言えた。


「気に入ったかい?」


「気に入るというか、これは何なの?」


「爆弾」


「……ん?」


「小型軽量化爆弾の試作品さ。君のよく知る成形爆薬と同等の威力がある」


 ドクターの解説にアヤは球体を転がすのを止め、ゆっくりと元の場所へ戻す。


「そんな危ない物をそこら辺に置かないで!」


「ちゃんと安全には気を遣っているよ。起爆装置は『エナジー』だから、滅多なことでは爆発しないさ。試しに踏んづけてみるといい」


「そんなことしないわ! ーーーーったく。あら、もう時間ね」


 常識に囚われない親愛なる友人の発言に頭痛を覚えたところで、集合予定時刻が近付いてることに気が付いた。

 グロウは依然として試験室から出てくる気配すら見せず、アヤは呼びに行くことにした。


「待ちたまえ、私も行こう」


 ドクターは傍らに寝かせていた布に包まれた三角形のプレートのような物を持ち上げる。

 体半分をすっぽりと隠してしまえるほどの大きなプレートだ。


「何それ? 爆弾? それとも大量殺戮兵器?」


「君は私のことを何だと思っているのかい?」


「マッドサイエンティスト」


「……まぁ、快楽殺人鬼と思われてないだけマシか」


 そんな皮肉を言いつつ、アヤは試験室のドアを開く。

 重厚な作りの鉄扉を開いた先には、グロウの似合わない神妙な顔付きが待っていると思っていた。


「グロウ、一時的にでも私の部隊に入隊するなら、時間くらい守りなーーーー」


 開いたドアの先には、『オリジン』のグロウ・イェーガーが立っていた。

 色素の抜け落ちた白い肌と反するような黒い礼服を身に纏い、『カミラ』を携えた青年のグロウは、アヤを認識すると微笑を浮かべた。


「どう、アヤさん。これ似合ってる?」


 口調は少年のグロウのそれだった。

 困惑するアヤをよそに、ドクターは興味津々に彼へ歩み寄る。


「ほう、なかなか凝った作りの礼服だ」


「『メンズフォーマル』って言って、ラピスが僕のために作ってくれたんです」


「悪くないね。防具としても一級品だが、人混みに紛れても違和感のないカモフラージュ性能も高い。何より素材が良い。こんなもの、どこで見付けたんだ?」


 ドクターはグロウの背後で満足げに佇んでいるラピスへ問い掛ける。が、彼女は頑なに口を閉ざしていた。


「素材は教えてくれないんです」


「守秘義務ってやつか? まぁ、世の中には知らなくて良いこともあるものさ」


 ドクターは訳知り顔で得心する。

 二人のやり取りを傍観していたアヤは、このグロウは『オリジン』でないと理解した。ただ黒い礼服を着ただけのグロウなのだ 。


「馬子にも衣装ね」


「何?」


「故郷のことわざよ。中身が伴ってなくても、見た目だけで立派な人間に見えるって意味」


 アヤは嫌味を込めて言葉を放つ。

 しかし、グロウは今一つ理解していなかったらしく、自らの服装を眺めて得意気な表情を浮かべる。

 褒められたと勘違いしたようだ。


「こういう服って、大人びて見えるよね」


「よく似合ってるよ。――――そんな君へプレゼントだ」


 そう告げてドクターが布に包まれたプレートを差し出す。

 グロウは困惑しながらそれを受け取ると、おもむろに布を取り払った。


「これはーーーー!」


「フフン、君専用の『バリスティックシールド』だ」


 布の下から現れたのは、白亜に彩られた逆三角形のシールドであった。

 『バリスティックシールド』という現代のシールドを手にしたグロウは、子供のような笑みを浮かべた。


「もしかして、この前、盾が欲しいって言ったの覚えててくれたんですか?」


「用意すると言ったろ? 約束は違えないさ」


 シールドを左腕に装備したグロウは使用感を確かめ始め、ドクターは自慢げに腕を組んでその様子を眺めていた。

 アヤはと言うと、色と形状は違えど『オリジン』のグロウと同一の装備をしている彼に対して、ある種の恐怖心を覚えた。

 自身が殺されたことへの危機感ではなく、この世界のグロウが変質してしまうことに対しての悲しさであった。


「どう、アヤさん? これで戦力アップだよ」


 無邪気に笑むグロウに近付いて、盾の表面をコンコンと拳で小突いてみる。


「悪くないわ。強度に対して軽量だし、『キャスト』を使えない貴方でも身軽に立ち回れるでしょう」


 シールドの感想を述べてグロウが油断したところで、流れるような動作で彼の懐へ入り込むと、両腕を背中に回して優しく抱き締めた。

 それも束の間、ゆっくりと体を離して彼と目を合わせる。

 目を白黒させている彼に対し、アヤはかける言葉を慎重に選んでいた。


「スペックが憑依してる?」


「そうではないわ。そうではないけど、貴方は――――いえ、そろそろ時間よ。準備なさい」


 アヤは踵を返して部屋を出ていく。

 背後でグロウが困惑する様子を背中で感じつつ、この戦いに於ける自身の新たな使命を胸に刻むのだった。


●シールドのモデル

 陸戦型ガンダムのショートシールドをイメージしてます

 →キャプテンアメリカの盾と迷いました

 →名前は特に決めず、シンプルにシールドとしてます

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