メモリー18
グロウ・イェーガーは救助したアヤ・ライトニングを教会の裏手より路地に入った建物の陰に連れて行く。
教会内はすっかり静かになっており、物音一つ聞こえない。
カノ・リッパーは教団員を虐殺し、今は大聖堂に一人佇み次の指示を待っている状態だ。
「生きてたのね、グロウ・イェーガー。生け贄にされて殺されたのかと思ってたわ」
「そちらこそ、よくぞご無事で。捕まるのは趣味か何かで?」
皮肉を言い合いながら、グロウは倒した教団員から手に入れた鍵を使ってアヤの手錠を外す。
「手間を掛けさせないでよね。こっちは戦いの素人なんだから」
「知ったことじゃーーーーッ!?」
「おわッ!?」
瞬間、両手の自由を得たアヤが急にグロウに抱き付いた。
驚くグロウをよそに、彼女は頬擦りしたり体を首もとを舐めたりと驚愕の行動を連発する。
あまりの出来事に目を白黒させるグロウ。
アヤはなおも猫が甘えるようにグロウへすり寄る。
彼女の柔らかい肌や女性的な膨らみが体に押し付けられ、特有の甘い香りが鼻腔をくすぐりグロウの理性はどうにかなってしまいそうであった。
「何やってるの! 離れなさい!」
そう告げるのはアヤ本人。
抱き付かれているグロウはどうすることもできず、為されるがままになっていた。
「いい加減になさい!」
「そんなこと言われても…………」
「貴方じゃなくてーーーーあぁもう、ややこしい! ご主人様に甘えたいなら私の中から出てからにして!」
次の瞬間、何らかの『キャスト』が発動しアヤは真後ろに吹き飛んだ。
その挙動に反作用するかのように、薄紫色の頭髪に猫耳を生やし黒いジャケットに短パン姿の少女が飛び出してきた。少女はそのままグロウに抱き付き、先ほどのアヤと同様に頬擦りをしてきた。
「だ、誰!?」
「貴方のよく知るモノよ」
アヤの言葉にグロウは密着する少女を観察する。
ふと、ベルトからガスマスクがぶら下がっていることに気が付いた。見覚えのあるマスクに、グロウは記憶を辿る。
「…………まさか、君はカノ?」
「我らが主、会いたかった」
その少女はグロウが地下水道で初めて喚び出したガスマスクのカノ・スペックであった。
てっきりグロウとはぐれた後に体へ戻ったかと思っていたが、アヤと共に行動していたようだ。
「この女は居心地が悪い。緊急だったとは言え、契約するんじゃなかった」
「彼女と契約を?」
「諸事情があって力を借りただけよ。仮契約みたいなもの」
意外な情報である。
少なくともグロウの知るアヤ・ライトニングという人物は、邪神など斬って捨てて然るべきと敵対する姿勢を持っていたはずだ。
「おかげさまで教団に捕獲されるわ、貴方に抱き付くはめになるわ、散々だわ」
「話が見えないんだけど?」
「私達はただで手を貸さない。体の自由を奪わせてもらった」
「一時的だったけどね」
「一時的にでも奪えたならこっちのもの」
スペックはニヤリと笑みを浮かべる。
このカノは、グロウと合流するに捕まってしまった方が易いとわざとアヤの体を乗っ取り『教団』に投降したようだと理解した。
「合流はできた。次は教祖を殺して『教団』を潰す」
「ダメって言ってるでしょ。教祖は逮捕するわ。『教団』の繋がりを洗いざらい吐いてもらわないと」
「知ったことか。奴は我らが主を狙った。万死に値する」
「それこそ知ったことじゃないわ。教祖は殺させはしないわよ」
何故か言い合いを始める二人。
どうすべきか迷っていたグロウは、不意に悪寒が全身を走る嫌な感覚に襲われた。
反射的に振り返ろうとした瞬間、スペックがグロウを押し倒した。次いで、グロウの頭部があった場所を何かが通過し、コンクリート製の壁に激突するとそれを粉々に砕いた。
「何だ!?」
「槍」
「槍!?」
スペックの言葉にコンクリートを穿ったそれをまじまじと見詰める。壁に半分以上埋まっているが、確かに槍のようなものであった。
「チッ、貴方、さっきの連中を殺さなかったわね?」
アヤの問いにグロウは背後を見る。
そこには体が螺旋状に捻れた異形の怪物が立っていた。身を包む白装束は信者が着用する物に酷似しており、その一部分は黒く焦げて穴が空いている。
それはグロウの銃撃による『エナジー』による焦げ痕で、最早、人と言うには変化しすぎた怪物がアヤを連れ去ろうとしていた一団の一人であることは予想できた。
螺旋に捻れた信者は、異様に伸びた左腕を威嚇するように天高く振り上げ、槍状の武器を形成した。
カミラ・サブマシンガンのモデル
UMP45をイメージしてます
→何となく一番最初に思い付きました
→サプレッサーとの組み合わせとか考えましたがやめました
→アヤのサブマシンガンはベクターをイメージしてます




