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メモリー17

 グロウ・イェーガーは半壊した教会を望めるビルの屋上に立っていた。

 霧は相変わらず深く多少の距離はあれど、教会は辛うじて視界に収められ、壊れた屋根から中の様子を窺い知ることができた。

 大聖堂と思われる場所には、教団の信者らしき白装束の人影が数人と、椅子に拘束されたポニーテールの少女が一人確認できる。


「何やってんだ? あの人は?」


 ポニーテールの少女はアヤ・ライトニングだ。遠目に、しかも霧で視界が悪くても美人だと分かる。

 そんなことはどうでも良くて、明らかに捕獲され尋問を受けているとしか思えない状況であった。


「捕まってるのは、わざとかな?」


「そんなわけないでしょ。ヘマして捕まったのよ」


「あれじゃ、合流できないじゃん」


「合流するとは言ったけど、安全と言った覚えはないわ」


 カノ・セイフは悪びれる様子すら見せず語る。

 秘密主義の幼女へ恨みたっぷりの視線を向けるグロウだが、セイフは蠱惑的な微笑を口元に刻むだけであった。


「それで、マスターはどうするのかしら?」


「どうするって?」


「彼女、助ける? 放っておいて逃げるって選択肢もあるわよ」


「助けるに決まってるでしょ。見殺しにはできないし」


 昨日はグロウを殺そうとしていた女剣士ではあるが、窮地と分かっていて見て見ぬふりなどできない。少なくとも不死身の能力を持つ彼女が呆気なく死ぬことは無いだろうが、それでも見捨てるなどできるはずがなかった。

 グロウの決断にセイフは相変わらず蠱惑的な笑みを浮かべるばかりであった。


「とはいえ、どうしようか。敵の数が多すぎるな」


「人手なら私達がいるわよ」


 瞬間、グロウの体から黄緑色透明のゲル物が滲み出て、長身の女性の姿を象った。

 ボロボロの黒い軍服を身に纏い、全身に重度の火傷を負ってその傷を包帯で覆った女性であった。血走った巨大な左目がグロウを見下ろし、乱杭歯のような歯をギラリと見せ付けつつ小刻みに痙攣している。右手には巨大なサバイバルナイフを持っていた。


「これは……随分と怪物らしいカノだね…………」


「イェアリ・ク…………」


 軍服のカノは体を痙攣させながら、いつもの不可思議な鳴き声を漏らす。

 見た目こそ化物染みているが、カノはカノ。

 グロウとの意志疎通は問題なさそうで、ある程度のコントロールは可能のようだった。


「マスター、名付けてあげれば? 喜んでくれるわよ?」


「あぁ、そうだね。ーーーーリッパー、君はカノ・リッパーだ」


 カノ・リッパーと名付けたその怪物は、おぞましい口元をグニャリと曲げて笑みを浮かべた。

 口数は少なそうだが、感情表現は豊かなようだ。味方だから可愛げに感じるが、敵だったらおぞましいことこの上無いだろう。


「よし、リッパー、吶喊してできるだけ相手を混乱させて。その隙に僕がアヤ・ライトニングを解放する」


「イェアリ・ク……」


「セイフ、悪いけどここから見張りを頼む。増援が来たら直ぐに知らせて。彼女を助けたら合流だ」


「分かったわ」


 カノ達へ指示を出したグロウは、次いで『カミラ』へ意識を向ける。

 強襲はリッパーに任せるとしても、グロウはグロウで戦う必要があるだろう。ならば、相応の武器が必要となる。

 特に今回は、連射できて消音性の高い武器が必要だ。


「よし、行動開始」


 五分後、リッパーが教会の正面扉を蹴破り突入した。

 教団の信者達は突然の化物の登場に狼狽し、統率の取れていない烏合の衆よろしくバラバラに動き始めた。

 反撃する者、逃げ惑う者、呆然とする者。

 しかし、その結末は全て同じであった。

 リッパーは強靭にして凶悪であった。

 その火傷だらけ体に弾丸は通用せず、『キャスト』による攻撃も効果はない。全身を痙攣させているため動きは緩慢に思われたが、その実は俊敏で逃げ惑う信者を一人も逃さない。

 冷酷なサバイバルナイフは一振するだけで、凄まじい衝撃を生み出し信者を切断と共にバラバラに砕く。

 本来なら人々の憩いの場として扱われるはずの教会は、あっという間に阿鼻叫喚の地獄と化した。


「女を連れていけ! 早く!」


「車まで走るんだ! 振り向くんじゃない!」


 そんな地獄を抜け出すことのできた幸運な一団があった。

 アヤ・ライトニングを連れた信者達だ。

 彼等は教会の裏門から脱出し、そこに停めていた大型車へ駆け寄る。

 大聖堂が地獄の様相を呈している間は、怪物が追ってくる可能性は少ない。車に飛び乗り全速力で逃げれば、生存の可能性は高まることだろう。

 そんな期待が油断となり、信者達は車の陰に隠れていたグロウの存在に気が付かなかった。


「ーーーーッ!」


 信者達が十分に車へ近付いた瞬間、グロウは飛び出した。

 そしてサブマシンガンの形態へ変化させた『カミラ』を操り、信者達をフルオート射撃で横薙ぎに銃撃する。

 完全に油断しきっていた信者達は、ほとんど何もすることはできず『エナジー』で構成された弾丸に倒れるのであった。


「…………思ったより簡単だった」


 油断していたとは言え、武器を持った信者四人を瞬殺した自らに驚くグロウ。

 そしてアヤ・ライトニングと視線が交じる。

 二度目の邂逅。

 後ろ手に手錠を掛けられた少女は、感情の読めぬ微笑を浮かべていた。

カミラ・ランチャーのモデル

 FAZZの担いでるハイメガキャノンがモデルです

  →一発のみの撃ちきり兵器です

  →個人が扱える兵器では一番の威力となります

  →外伝作品って惹かれてやまない魅力がありますよね

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