メモリー16
グロウ・イェーガーが目覚めた時、やはり幼女に膝枕をされていた。
カノの一人、白銀のツインテールに漆黒のドレスを纏ったカノ・セイフは、グロウの頭を撫でながら慈愛の表情を浮かべていた。
「おはよう、マスター」
「……おはよ、僕はどうなった?」
グロウは呆然とした頭で状況を整理するよう努める。
とりあえず五体満足の状態だ。
倦怠感は酷いが、ダメージによるものか『エナジー』を大量消費した弊害なのか分からない。怪我も軽微で、行動するに問題は無さそうだ。
周囲を見渡すと、グロウは街頭のベンチで横になっているようだった。おそらく『教団』の施設がある『シープヒル』の一角だろう。
霧が深く遠くまでは見えないが、どことなく町並みに見覚えがあった。入居前に車窓から見た景色と同じに思うが、白く靄のかかった町並みは不気味で全く違う世界のように感じられた。
「九死に一生を得た、そんな感じね」
「逃げおおせたんだ……」
「『転移』の『キャスト』が機能したおかげね。ゴルゴーンが居る間は地上と地下は隔絶されていたみたいだけど、その障壁は無くなってたから」
「そっか……ここは?」
グロウは体を起こす。
予想は着いていたが、念のために問いかける。
「まだ『シープヒル』の中よ。過疎化してるから住人は少ないけど、ここで出会う人間は基本的に『教団』に所属していると思った方がいいわ」
「つまり、まだ安全ではないってことね」
「呑み込みが早くて助かるわ」
セイフはそう言うとグロウへ『カミラ』を差し出す。
それを受け取りつつ、小柄な幼女が持つとどこか玩具のようだと思った。
「ラピスは引っ込んでもらったわ。彼女、人型だけど目立つから」
カノ・ラピスは人間の女性に酷似した容姿をしているが、如何せんエルフ耳とビキニアーマーが目立つ。
ドレス姿でもカノ・セイフの方が、グロウと並んでいて不自然感は少ないだろう。
「どこへ行く?」
「とりあえず、服を探しましょう」
「何でまた?」
「その格好のままじゃ、流石に不憫だわ」
そう言われてグロウは自らの服装を見下ろす。
施設で生活していた時のまま、上下灰色のスウェット姿であった。そのスウェットもボロボロで、おまけにアヤ・ライトニングから借りた防弾ベストを装着しているという、とても不自然な格好をしている。
つまるところ、ダサいのだ。
「まぁ、この際、服はどうでもいいよ」
「あら? ファッションセンスに自信が無いなら、私達に任せてちょうだい」
「心強いね。けど、そんな気分にはなれなくて」
「そう。なら、先を急ぎましょう」
セイフはそう告げると、グロウの手を取る。
小さくて柔らかい手のひらは、自然と人間の庇護欲をそそるものであった。
「それで、どこへ行くの?」
「アヤ・ライトニング。彼女と合流するわ」
「……へ?」
懐かしくも意外な名前の登場に、グロウは間の抜けた声を上げた。
「あの人と合流? 何でまた?」
アヤ・ライトニングはグロウが教団に生け贄として捧げられていた際、教祖に斬りかかった少女だ。結果は惨敗でグロウと共に一時撤退したのだが、グロウが廃病院へ転移させられたことではぐれてしまった。
不死の能力を有しているようで死ぬことは無いと思ってはいたが、まさか無事に脱出したとは思わなかった。
しかし、それよりも意外なことは、カノがアヤとの合流を提案したことだ。グロウの記憶では、一度殺されかけた。未遂に終わったが、確かに彼女はグロウごとカノという邪神を斬り捨てるつもりだった。
そんな彼女との合流を提案するなど、何事かとグロウは疑った。
「少し事情が変わったのよ」
「事情って?」
「会えばわかるわ」
「……君って大事なことを隠すとこあるよね? 楽しんでるの?」
「わかってるなら納得なさい。まぁ、悪いようにはしないわ」
「ついさっき死にかけたんだけど?」
そんなことを話しつつ、グロウとセイフは霧の下り立つ『シープヒル』の街道を歩いていく。
ホワイトアウトした景色の向こう側に待ち受ける存在に、グロウは気付くことは無かった。
カミラのモデル
ギャレンラウザーが一番近いイメージです
→初心者向けのイージーガンを描きました
→弾数は無限です




