メモリー15
邪神ゴルゴーンとの戦闘において、体内に蓄積していた『エナジー』の大半を使い果たしたグロウ・イェーガーは疲労困憊に陥っていた。
端的に言えば、一歩も歩けないほどに疲弊していた。
カノ・ラピスにもたれ掛かる形で何とか立ってはいられるが、それ以上の行動は厳しかった。ともすれば、睡魔に負けてその場で寝てしまいそうなほどの疲労感だった。
故に、危機察知能力が低下していたのかも知れない。あるいは、ゴルゴーンという凶悪にして強大な存在を打ち倒したことにより、油断をしていたと指摘されれば反論のしようがない。
いずれにせよ、グロウが敵の存在を認識したのはカノ・ルージュが水の刃で八つ裂きにされた後であった。
「ルージュ!?」
驚愕するグロウを嘲笑うかのように、ルージュは黄緑色透明のゲル物となってから消えてしまった。
「マスター!」
次いでカノ・セイフの叫び声が聞こえたかと思うと、頭上から針のように細く鋭い水の刃が降り注いで来た。
ドーム状の『エナジー』による障壁が、その刃を防ぐ。
セイフの『キャスト』である。
「水の攻撃って、まさか……!」
降り注ぐ刃の雨の下、グロウは攻撃を繰り出す『ウィザード』を探す。
邪神すら屠る威力の『キャスト』を繰り出す『ウィザード』など、心当たりは一人しかいなかった。
やがて雨が降りやむと、一人の青年が柏手を打ちながら食堂に現れた。白いローブを身に纏った顔立ちの整った青年こそ、この『教団』と呼ばれる宗教団体の教祖である。
「やぁ、グロウ・イェーガー。よくぞゴルゴーンを倒してくれたね。おかげで、この施設を取り返すことができた。全く、理性を失っていようと邪神は邪神。定期的な生け贄を与えなければ、こちらと全面戦争するつもりで困っていたのだよ」
「生け贄……?」
「まぁ、『邪神召喚』の贄にすらなれない欠陥品を与えれば良かっただけだから、大した痛手では無かったのだが。この施設はまだ利用価値があって、取り戻したかったのだよ」
淡々と語る教祖にグロウは沸々と怒りを覚える。
カルテにあった少女の顔が頭を過ったのだ。
それをまるで自分の玩具のように告げる教祖に、どうしようもない嫌悪感と怒気を抱いた。
「我らがマスター、落ち着いてください」
ラピスが小声で告げる。
グロウも理解していた。
ここで憤慨しては体内のカノが過剰に反応し、グロウに残っているなけなしの『エナジー』を貪り尽くしてしまうのだ。『カミラ』の強化に使用されたラピスなら、グロウの感情の昂りがもたらす結果など容易に想像できるのだろう。
「それで、ゴルゴーンを倒したお礼が不意打ちなんて、随分となめられたものね」
「私とてバカではありませんよ、邪神カノ。危険の芽は摘める時に摘んでおかなければ。完璧なタイミングでの不意打ちだったのですが、流石は高位のお方。一人削るのに精一杯でしたか」
「どうあれ、私達への攻撃なんて不敬極まりないわ。ーーーー覚悟はできているのでしょうね?」
セイフの雰囲気が一変し、その小さな体の内側から邪な気配が滲み出る。
常人ならそれだけで発狂するような代物だ。
しかし、教祖は平然と言葉を紡ぎ続ける。
「邪神カノ。ここは提案です。グロウ・イェーガーの命は助けましょう。その代わり、この世界を治めていただきたい」
「不敬ここに極まれり。誰が貴方の手先になどなるものか」
「いいえ、仕えるのは私の方です。どうかこの腐った世界を破壊し、新たな神として君臨していただきたくお願い申し上げます」
教祖は恭しく敬服する。
本当に敵意など無く、素直に仕えるように見える。
「言葉など不要。私達が手に入れたいものは私達で手に入れる。貴様の介在する余地などない。ーーーー死ぬがいい。ただただ死ね」
その言葉にグロウを支えるラピスの手に力が籠る。
彼女の顔を見ると、教祖に対する明確な敵意があった。
しかし、教祖は気にする素振りすら見せず、仕方なしと次の行動へ移った。
「言葉では分かりかねますか。では、私の力をお見せいたしましょう」
次の瞬間、教祖の足元に巨大な水溜まりが出現した。
酷く淀んだ瘴気を放つ水溜まりの中から、何かがこちらを覗いている。それはゴルゴーンよりも邪悪で、グロウはもちろんカノでさえ身を強張らせセイフが慌てて防御の『キャスト』を行使するほどであった。
「ウヤ・ウィール、ウヤ・ウィール。ーーーーどうか、死なないでくださいね。流石にがっかりしてしまいます」
次の瞬間、水溜まりが蠢動し高密度の『エナジー』がグロウ達を襲った。
濃密な『エナジー』には現代には無い神秘の力が込められており、その衝撃は地下施設ごと廃病院を吹き飛ばすほどである。
視界の全てが闇で塗り尽くされたところで、グロウは意識を喪失させた。
カノ・ラピスのモデル
ダークエルフのまんまです
→エロい雰囲気のエルフです
→煩悩の産物です
→手先が器用でエンジニアのような立ち位置にしてます




