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メモリー13

 ゴルゴーンの咆哮に気圧されたのも束の間、グロウ・イェーガーと三人のカノは食堂の中へ駆け込んだ。

 狭い通路で巨大な敵と戦うのは愚策と判断したからだ。

 まだ食堂は平面積が広く、天井も二階層分をぶち抜いたように高い造りになっており自由度があったのだ。

 グロウとカノ・セイフは突入後、左に駆け抜け、カノ・ルージュは右側、カノ・ラピスは正面に繰り出しゴルゴーンと単騎で対峙する。


「火炎がダメなら、こちらはいかが?」


 ラピスが『キャスト』を発動し、絶対零度の冷気がゴルゴーンを包み込む。

 瞬間的にその巨躯は凍り付いたが、その凶悪な生命力を凍結させるには至らなかった。


「壊してやる!」


 ルージュが追い討ちをかけるようにショットガンのシェルを撃ち放つ。

 しかし、表面の氷は砕けたが、その下の本体は無傷であった。


「ふむ、体表の鱗が鎧の役割を果たしているのですね。単純な防御力で防がれては、こちらとしても打つ手は限られます。ーーーーおや?」


 淡々と分析結果を語るラピス。

 そんな最中、ゴルゴーンの反撃が始まった。

 まずラピスを厄介な敵と判断したゴルゴーンは、巨大な『魔法陣』を正面に描き、極太の『エナジー』による砲弾を射出した。ラピスを裕に呑み込むほどの大きさだ。

 ラピスは砲弾を正面から受け、その赤黒い光の中に消えていった。


「ラピス!? うわっ!」


 ラピスを撃破して尚、勢いをそのままに『エナジー砲』は食堂の床に着弾。凄まじい震動と爆風を撒き散らした。

 グロウはセイフを抱き抱え、柱の影に身を寄せて衝撃をやり過ごす。


「マスター、無事かしら?」


「何とか……」


 余波が消え去った頃、グロウは柱の影からゴルゴーンの様子を見る。と、彼の化物の蛇のような眼と視線が交わった。

 獲物を狙う捕食者の目をしていた。


「僕を狙ってやがる……」


 その黄色くおぞましい瞳には、グロウを捕食する感情しか感じられない。


「マスター! マスター、動いて!」


 まるで蛇に睨まれた蛙のように体を硬直させていたグロウは、セイフの声に我を取り戻した。


「旦那!」


 ルージュがショットガンを乱射しゴルゴーンを牽制する。

 標的がグロウからルージュへ変わり、毛髪の蛇の一匹一匹が大きく口を開け彼女を睨んだ。瞬間、細長い『エナジー』による光線が放たれた。


「ナメるな!」


 ルージュは脅威的な身体能力を発揮し、まるで針の穴に糸を通すように光線の隙間を縫い回避する。

 次いで本体が先ほどよりも威力を落とした砲弾を何発も放つが、彼女はそれを難なくかわした。

 注意が逸れた隙にグロウは移動を果たし、焼け石に水と知りつつも『カミラ』を構えてゴルゴーンへ『エナジー』の弾丸を放つ。

 マゼンタに彩られた『エナジー』の光弾は、やはり、その表皮を僅かにも傷付けることは叶わなかった。


「こんなの、勝てるの!?」


 全く異次元の強敵に恐慌するグロウ。

 すると、ゴルゴーンは自分の足元に幾つもの『魔法陣』を描き始めた。

 嫌な予感を覚えたのはグロウだけでなく、ルージュも慌てた様子に化物から距離を取る。と、次の瞬間、『魔法陣』の中からラミアや処刑人が何体も出現した。

 巨大なゴルゴーンが陣取る食堂に、小型の魔物が複数。お世辞にも良くなかった形勢が、さらに悪くなる。


「マジかよ! って、こいつが産み出してるんだった!」


 次々と迫り来るラミアと処刑人に、グロウは『エナジー』の弾丸を浴びせる。

 ラミアは一撃で倒せるが、処刑人はそうは行かない。グロウでは火力不足と目に見えてわかる。

 大変なのはルージュだ。

 小型の魔物を相手にしながら、ゴルゴーンの攻撃を避けなければならない。一気に余裕を無くし、防戦一方となっている。


「クソッ! セイフ、他のカノは出せないの!?」


「何かが邪魔をして召喚できないの! あのゴルゴーンが『結界』を張ってるのかも!」


 柱の影に押し込み隠れさせていたセイフに怒鳴るが、彼女は困惑した様子で絶望的な返答をする。

 こんな時、『キャスト』を使えればグロウでも『結界』の解除ないし穴を見付けることができたのだろう。が、現実はラミアや処刑人をやり過ごすことに手一杯で、どうすることもできなかった。


「何とかしないと、このままじゃ死んじゃうぞ…………!」


 焦燥は隙を生み、本能のままに襲い来る魔物はその隙を見逃さない。

 処刑人の刃をかわしたグロウの腹部に、追撃の蹴りが押し込まれた。

 呼吸困難に陥ったグロウは気を失いかけるが、吹き飛ばされ壁に激突した衝撃が意識を保つ役割を果たしてくれた。


「マスター!」


「旦那!」


 倒れた先には何か紙切れが落ちていた。

 それはカルテのようだった。

 グロウと同じく難病を患い、施設に入居した患者のカルテ。

 その結末が記された記録用紙だ。


「マジかよ…………」


 そこに記された内容を瞬時に読み解けてしまったグロウは、先程までの焦燥や恐慌が一気に引いていく様を感じた。

 次いで、どうしようもない怒りの感情が怒涛の如く噴き出した。


「お前ら、マジなのかよ…………!」


 感情を爆発させたグロウは、処刑人の頭部に『カミラ』の銃口を押し当てトリガーを引く。

 マゼンタで彩られた『エナジー』の弾丸が矢継ぎ早に放たれ、その醜悪な頭を消し飛ばした。

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