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メモリー1

 この小説は今まで長編小説を書き上げることができなかったため、とにかく一つの完結を目標として書いた小説になります

 設定など甘い点が多々あるかと思われますが、ご興味の続く限りお付き合いいただきたくお願いいたします


※前書き、後書きにキャラクターや設定の元ネタをたまに記載します

 読み飛ばしていただいて問題ありませんが、個人の妄想に付き合っていただければ幸いです

 グロウ・イェーガーは朦朧とする意識の中で、自らが目の当たりにする光景を理解することができていなかった。

 『エナジー障害』という奇病を患っているグロウは、療養のため『シープヒル』という森林に囲まれた田舎町の療養施設に入居していた。

 『エナジー障害』は体内を巡る『エナジー』が放出されない病気で、放っておけば蓄積した『エナジー』によって身体に異常を来す。酷くなれば生死に関わる病を引き起こすことになる。

 その影響から、髪と肌は色素が抜け落ちたように真っ白になる色素欠乏症を併発させていた。

 蓄積した『エナジー』は通常、外部デバイスを使って放出し体調面のバランスを保っているのだが、デバイスの使用を禁じられていたグロウはわずか一週間で蓄積した『エナジー』に殺されかけていた。生まれつき人並み外れた『エナジー』の生成能力と蓄積容量の高さを持っているが故に、短期間で死に至るほどの重篤な症状を誘発してしまっていたのだ。

 先ほども述べたが、この施設には『エナジー障害』の治療を目的として入居した。

 『エナジー障害』という奇病が両親の負担になっていることを知っていたグロウは、この療養施設に入居することはある種の救いでもあったのだ。

 グロウがいなくなれば両親の負担も減り、あわよくば『エナジー障害』を治療する方法が見付かれば、普通の生活が送れるようになる。

 そう思えば、親元を離れることも苦では無かった。

 しかし、治療の一貫としてデバイスを取り上げられたことで、日に日に体調は悪くなる一方。遂には自分で動けなくなるほどの高熱と意識障害に苛まれ、緊急治療室へと運ばれることとなった。

 運ばれた先は想像していた場所と違っていた。この光景は高熱がもたらす幻覚なのか、あるいは現実なのか。今のグロウには判別できなかった。


「ここは……?」


 喉の奥から絞り出すように声を漏らすが、傍らで作業を行う施設員は言葉を返してくれない。届かなかったわけではなく、ただ冷たい一瞥をくれるだけだった。

 様子がおかしい、とグロウは改めて部屋を一望する。

 周囲を岩壁に囲まれた薄暗く冷たい部屋。

 蝋燭の灯火が揺れ動き、壁際に並べられたグロテスクな装飾品が妖しく光る。


「ウヤ・ウィール、ウヤ・ウィール」


 不意に聞き慣れない言葉、おそらく呪文の類いを呟きながら、複数の白い頭巾を被った白装束の集団が部屋に入ってきて、中央に寝かされるグロウを取り囲んだ。

 明らかに治療とは思えない光景だ。

 幻覚か現実か。

 どちらにせよ、得も知れぬ恐怖に見舞われたグロウは、逃げ出すべく体に力を入れる。が、自らが蓄積した『エナジー』によって虐げられた体を動かすことは叶わず、焦燥の吐息を漏らすことしかできなかった。

 やがて呪文を唱える声が大きくなり、グロウが寝かされていた地面が赤黒い燐光を放ち始めた。

 この時、ようやくグロウは儀式の触媒にされていると気が付いた。いわゆる、生け贄というものだ。

 体に蓄積していた『エナジー』が燐光に吸い取られていく感覚に戸惑う。


ーーーーイェアリ・ク


 感覚的に『エナジー』が七割ほど吸い取られた時、何かの鳴き声が聞こえた。

 最早、現実か幻覚か判別など付かないが、確かに耳朶を打つ声を認識した

 その時、地面がより一層、光を激しくした。

 その光景に周囲を取り囲んでいた人物から歓喜と驚愕の声が漏れる。

 グロウは恐怖におののき、心中で父と母に助けを叫んだ。


ーーーーイェアリ・ク


 やがて限界まで蓄積した『エナジー』が底を着く直前、地面から黄緑色をしたゲル状の生物が沸き出てきた。それはグロウを呑み込むように包み込むと、水が乾燥した地面に染み込むようにグロウの体内へと沈んでいった。

 一瞬の出来ごとだった。

 あまりに早すぎて状況を理解できず、とにかく恐怖も限界でグロウは悲鳴にならない悲鳴を上げて体に力を込めた。すると、先程まで全く動かなかった体が、バネ人形のように地面から飛び起きた。


「何だ!? 何なんだ!? お前ら僕に何をしたんだ!」


 堪らず叫ぶと自分でも驚くほどの大声が出た。


「これは素晴らしい。初めてのケースだ」


 白服の一人が歩み出る。

 その声には聞き覚えがあった。


「名前は何だったか? あぁ、グロウ・イェーガー。『エナジー障害』の子供か」


 白服の男性は頭巾を外し、手元にあったカルテを眺める。

 予想通りの人物だった。

 グロウが入居した施設を運営する施設長の男だ。


「君は邪神をその身に宿した上で、理性を保っている。素晴らしい精神力だ。あるいは私と同じ適合者か」


「何のことだ?」


「直に分かるさ。君自身のことだからね」


 施設長はニヤリと口角を上げる。

 寒気を感じる不気味な笑みに、グロウは体を震えさせた。


「教祖様!」


 不意に女性の声が部屋に響き渡ったかと思うと、白頭巾の人物が一人、施設長へと駆け寄る。


「侵入者です! 警備員が殺られました!」


「情報は?」


「不明です! 教祖様のお命を狙っている可能性が高いかと」


 ざわめきが起こる。

 しかし、施設長改め教祖は顔色一つ変えずに全体へ聞こえるよう声を大にして指示を下す。


「慌てるな、敬虔な信者諸君。侵入者など取るに足りん。即座に排除し、儀式を続けよう」


「し、しかし、相手は不明なのですよ!」


「何、全ては大いなる神々の思し召すままに」


 教祖が女性信者の前に手のひらをかざす。

 瞬間、嫌な『エナジー』の流れを感じ取ったかと思えば、凄まじい水流が教祖の手のひらから放たれ女性信者の胸を鋭利な刃物がするように貫いた。

●グロウ・イェーガーのモデル

 仮面ライダークウガのグローイングフォーム

  →白い身体に赤い複眼が好きで外観と名前のニュアンスだけをモデルに組み立てました

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