#062 ━橋━
「あー?あはは、おーい。」
「ん?」
(キミは誰…?)
(ここはどこ?)
(あれ、なんで僕はここにいるんだっけ。)
「ごめん、今は教えられないんだ。後で必ず教えてあげるから。」
「ふうん。」
見知らぬ場所で見知らぬ人?に出会った。
「ところで私と一緒に橋を作ってくれないかな?ずっとずっと遠くにある岸まで。」
「え、うん。」
「私向こうに行きたいけど行けなくて困ってるんだ。いつまでかかるかわからないけれど…どうせ暇でしょ?」
「いいよ。でも、どうやって…?」
「ここ一面にある砂を川の水で固めて橋を作るの。」
「手で、こうやってさ……」
(あぁ。楽しそう。)
「でしょ?」
「何度も同じ様に橋を架けようとした人たちがいるの。」
「上手く行った人もいるし、そうでない人もいる。」
「一人で架なきゃいけない人もいるし、皆んなで架けれる人たちもいる。」
「時間は永遠にあるから何度でも、いつまでも、諦めなければ挑戦できる。」
「でも橋を作るためにここに用意されたものが人によって違うんだ。」
「キミと私でなら、ここにあるもので橋を完成させて、渡り切れる気がするの。」
「キミはまだ、物語の途中だから」
「……なんだかよくわからないけれど、ありがとうね。」
「その言葉……」
(?)
「もう言わないで。」
「どうして?」
「私が泣きそうになっちゃうでしょ?」
「泣きたければ泣けばいいじゃん」
「それも……そうだね……私が間違ってたかも。」
そういう彼女は泣き顔を我慢していた。
彼女の頭と背中ををそっと、ゆっくり撫でてあげた。
彼女は泣き始めた。別に驚かなかった。
なんとなくしてあげたかったことをしてあげた。
「私は川に入っても浅くて流されないけれど……キミの川は深くて流されちゃうかもしれない。」
「そうなんだ。」
「だからキミは川に入っちゃダメだよ。」
ぬぐい終わると彼女は顔を上げた。
「じゃあ始めようか。」
「こんな感じでいいのかな……」
「そうそう、でも橋ならもっと大きく作らなきゃ。」
(なんだか大変そうかも)
「そんなことないって。大丈夫絶対作れるから。」
言われた通りに砂をかき集め、川の水をかけ、丸太状に形作っていく。何回も。何回も。
しばらく作業を繰り返した後、うとうとしていると、彼女が、
「この満天の星空見てよ!」
「きれいだね」
「これ全部輝いているってすごくない?」
「すごいなぁ」
「魂の数だけこの星はあるんだって。」
「私は……キミを輝かせたいんだ。」
「そうなの?」
「そう。」
(ふぅん。変なの。)
濁りの無い世界には吸い込まれるような星空があった。
なんだかよくわからないまま話し、砂の山を橋にしていった。
ずっと向こう。途方もないけれど、楽しく過ぎていくような気がした。
「よし、もう少しで一つ目の橋台と橋脚が出来上がるよ。」
「じゃあ並べようか。」
出来上がった橋台に向けて砂を固めた丸太を繋げてそれを架ける。その上から別の丸太を並べていく。
「落ちないようにね」
「わかってるって。」
並べた丸太の上から手で汲んだ川の水を少しづつかけていく。
築きあげたものは砂と水で出来ているはずなのに、全然びくともしない。人が渡れる頑丈なものになった。
「すごい。全然平気だ。魔法みたい。」
「でしょ?でも長さはまだまだ必要だから頑張ろ。」
……
最後の丸太を敷き、向こう側に到達。橋は出来上がっていた。すごく長い時間だった気もするし、あっという間だった気もする。
「完成だね。」
「うん。」
「この橋を渡り切る前にキミを抱きしめさせて」
「はい。」
ぎゅー。
「えへへ。うれしい。」
「なんだったんだ?」
「最後にキミに伝えたいことがあるんだ」
「なぁに?」
「私の名前……ニオラス・アーベントって言うんだ」
「へぇ、そうなんだ」
「で、キミは私の事をニオって呼んでくれてたんだ」
「へぇ」
……
(!?!?)
「あれ?」
(え!?え!?)
僕はずっと見ていた夢が覚めたような感覚に襲われた。
「さぁ、キミは行かなきゃ!完全に思い出す前に!あの子に出会ってあげ──、」
勢いよく背中を押された僕は思──
「あ──」




