#060 ━青空━
……
気付くと目の前が眩しい。瞼越しでもだ。濃い眠りから目覚めたような感覚で頭がボーっとしている。
伸びをして起き上がり、見渡すとトリアンドルスの制御室?に戻ってきたのがわかった。
この布一枚で色んなことが……
なんというか、戻って来た現実で体を動かしても、思い通りには動かしにくく、その上少し味気ない気がした。
「う、うぅん……」
ニオもお目覚めのようだ。
青と水色の混ざった綺麗な瞳。
「どう?目は覚めたかい?」
「はい。まだ寝ぼけているような感覚ですけど……」
「体に問題は無いか……、大丈夫そうだね」
「では、トリアンドルスのコアボトルがある場所まで案内したいから、早速私の指示の通りに向かってくれないか?」
彼の声が広い制御室内に響き渡る。
「ニオ、行こうか。」
「……。」
ところどころ汚れた元の姿で言われるがまま広い空間を歩いている。
会話は無い。淡々と響く足音が続いている。
(こんなに広々としてなくていいのに。)
……
「本当にそれでいいんだね……。」
「はい。」
「君の意志を尊重するよ。」
大きな水槽の横にある頑丈に作られた金庫らしきものへ、言われた通りにコードを話しかけていく。
「ピシ、ピシ」
徐々にヒビが入っていき、最終的にボトルが中から現れ、手に取ることができた。聞いていた通り抱えることのできるサイズだ。
(こんな使われたく無いところにも粋な演出が仕込まれているのか。)
トリアンドルスの模型と液体が少し入ったボトルを手に取る。
(これがトリアンドルスの本体……、これを……破壊すれば良いのか。ボトルは思っていたより軽くて丈夫そうだ。)
「へぇ、中身が精巧にできているなぁ」
「このコアボトルとトリアンドルスは一心同体。ボトルの中の核を壊せば同時にトリアンドルスも同じように壊れてしまう。精巧に出来ているのはコアボトルの中身をそのまま拡大したものがトリアンドルスのボディとなっているからなんだ。」
「へぇ」
ボトルの中に浮いたトリアンドルスを傾けじっくりと観察。高値で取引されていそうな、ずっと見ていられるそんな代物だ。これを壊すなんて随分勿体無い。
「次、地球へ来るときは計画に不備がないようにお願いします。」
「私の招いたことで……なんと言ったらいいのか……申し訳なかった。」
呼吸を整え、自分の決めた道と向き合う。
自分がこれがいいのなら、これでいいだろう。
僕はすでに死んでいた。そこから色んな事を体験して、色んなものを見れて、死ぬ前よりも後の方が感情が豊かだった。嫌なこともあったけれど、総評したら悪くない。
十分に人生のボーナスステージを楽しめた。
だから、もう良いんじゃない?
神様、ありがとう。
「そっちに行くの?」
「壊す前に、この景色を見たいなって」
僕はトリアンドルスの窓際に向かって歩く……
(……。)
「あぁ、ここ開いているのか。」
「地球の風が……」
「じゃあ、元に戻してくる。今度会うときは素敵な星で会おうね。」
「ちょっと……何を……!」
ボトルを抱え、足を宙へ。天高く舞う鳥から外へと。
「壊すだけでいいんだって!——」
(そんなのわかってる。)
青空が綺麗だよ。




