#050 ━観測━
目を擦って少しずつ切り替えを試みる。僕はこの人から説明を聞くべきだと思った。もちろん今までのことを許そうというわけではない。
でも僕らは“訳”を知らない。
本当に彼が積極的にこんな世界を作り出したのだろうか?本当に全ての責任が彼にあるのか?寝起きの僕は疑っている。
彼に対して弓を引くにはまだ早すぎるのだ。
見ず知らずの場所で見ず知らずの彼から説明を受けるのだろうか。
落ち着かない。落ち着くはずがない。
(待っていた。ようやくだ。)
「ふぅ。」
僕は呼吸を整え気合いをいれる。
急ぎで心の支度を行っている。
嫌な緊張ではない。
(大丈夫。説明をしてもらうだけだ。)
「……話し合う前に、伝えてあげなければならない情報がわんさかと積もっているので、すまないがある程度一方的に話をさせてもらう。教えてもらったこのニオ君たちの先生のノートに記述された言葉を抜粋し、順を追って説明をしていく。なので君たちにはしっかり聞いていてほしい。」
ニオは顔を覆い下を向いた後、僕の目を見てきた。
「……じゃあ、よろしくお願いいたします」
「……真実しか口に出さないで」
「約束する。私は真実を、知っていることを、できる限り君たちへ伝えたい。」
「あぁ!そうだ。その前にアレを渡しておこう。」
(?)
彼の背後、僕から見えない位置に置かれていた何か。
「はい、これを。」
僕は何かを渡されそうな気配を感じ取ったので、片手を広げ突き出した。
「ん?なんですかこれ?」
「これは自在粘土って言うんだ。こっちから信号を与えることで随時色んな形に変型してくれるんだよ。より分かりやすい説明するために立体模型として使わせてもらっている。」
「へぇ。」
僕の手のひらの上でふわふわと浮かんでいる発光している小さな丸い玉。
(こいつが……。)
(どうやって光らせているのだろう?)
(そのものに触ってもいいのかな?)
「では、気を取り直して……始めようか。私からは地球の人にでも伝わりやすいよう、専門用語は最低限に、カジュアルに話す。君たち二人も最初は肩の力を抜いて聞いて欲しいんだ。」
(そうですか。)
「さっきまで君たちはラノハクトの人工現実にいたみたいだけれど、どのくらいラノハクトについて知っているのかな?」
聞かれたので僕が知っていることをとりあえず答えておく。
「さっきの場所でのことでしたらニオさんからトランス・コネクターとラノハクトの住民の話はある程度教えてもらいました。」
「あと、私から学校も案内してあげました。」
「ありがとう。なるほど……」
(ラノハクト……あの場所にはもう行けないのかな……)
「皆が眼を背けてきた、隠してきたラノハクトの歴史を、現実を、私は今から語らせてもらう。」
「はい、お願いします。」
「まずはここはどこだって話からだ。二人とも気になっていたところだろう。どこだと思う?」
「さぁ?」
「地球人の僕には検討も……」
「正解はスカフェーナ地下研究室。ノートには"我々の星ラノハクト"と記されていたね。そのラノハクトの回りを巡る二つの衛星の片方、スカフェーナ。我々はその地下でひっそりとコネクターを通しAIの保管と研究そして宇宙遺跡の解体や廃品回収を行っている。私はここの観測長、ハイドだ。」
「スカフェーナ……」
(昨夜、ラノハクトから見えたやつか。)
「ここが宇宙一科学が発展した場所だと思えないだろ……はは。」
手の平の上の粘土が姿を変え、モニターと同じように星と周りを周回する衛星のように動き出した。




