#049 ━登場━
「おーい!起きるのです!」
「うぅん……」
(……なんだぁ?せっかくのとびきりの睡眠だったのに……)
僕のファーストクラスの快眠は強制終了。
何処かで聞いたことのある声によって鼻提灯を割られてしまった。
(急かすなよ、アーズロイ。もう少しだけ休ませてくれたっていいじゃないか。)
唸り声をあげ温もりの残る布団に潜り込み再度夢に戻りたかったのだが、生憎そんな都合の良いものは無くなっていた。
「愛くるしい星の住人さん、おはよう。そしてようこそ。」
(なんだその強烈な言い回しは。)
知らないノロールム人らしき男の聞き慣れない声は僕を覚ましてくれた。
ぼやけた視界にはニオ、アーズロイ……そして話しかけてくれた大人は誰?
というかどこだここ。
ラノハクトでも美術館でも無さそう。
「はっ……あなたは……?」
「あぁ、私はハイドって言います。お待たせしました。私がこのAIくんに主人と紹介されてしまった人物です。そんな言い方されると私が黒幕みたいに思われてしまうので怖いのだけれど……」
感じの悪くない大人は独特の雰囲気を醸し出している。
「は、はぁ。」
「今度から気を付けるのです!後でこういうときの紹介を教えてほしいのです!」
(お次は一体何なんだ。)
(もういいって。寝かせてくれ。)
骨董品らしきものが辺りにごちゃつき、大きなモニターに何かが映し出され、何本もの発光している線が張り巡っている。
これらは何を意味してどんな役割を果たしているのか……
今まで見てきた何処にも当てはまらない艶やかに栄えた不安な景色だ。
「胸の内に星の数ほど気になることがあるのだろうけれど、君が落ち着いて私の話を聞いてくれそうな青年で良かったよ。はい、ここに座ってくれ。」
「それは……どうも。」
(早口……口の動きが頭の回転に追いついていないタイプの人だ。)
(これから先めんどくさそうだな。)
言われるがまま、よくわからない空間の浮いた輪の内側に腰をかけた。ツッコみたいところが多く、なんとも落ち着かない。
僕はそんな人物が存在するのならもっと奇怪で堅苦しいサイエンティストなんだろうなと勝手に想像していた。
この人物の正体は計画的殺戮者かもしれないし、侵略者かもしれない。
まさか布が仮想空間と繋がっていて計画の首謀者と話せるなんて。
でも、そんな人物の見かけ、表情、口振りとは到底思えなかった。
第一印象を簡潔に表すと、優しそうだな——なんて。
「失礼、君、黒くていい目付きをしているね……」
「そうですか……」
(なんだ?人の目付きをその場で指摘するのか。やっぱりめんどくさそうじゃないか。)
「アーズロイも二人を待たせてくれてありがとう。」
「はいです!」
彼は二歩下がると、
「早速だが、まずは君たち二人に謝らせてくれ。本当に申し訳無い!!」
彼は頭を低くし、僕らは謝られたようだ。
「……」
その謝りの気持ちは受けとるけれど、今、寝起きでそんなことを言われても……という感じである。
(思ったより丁寧だ。)
そういえば起きてから口を開いてくれないニオは困り顔と退屈そうな顔の中間の顔をしている。
なんと言えば良いのか──。
「私たち二人の他にも私の先生や友人……地球人の皆さんにも……謝ってよ。」
この空間でようやくニオの声を聞くことができた、と思ったのだが。
「あの紳士のことか。……重ねてお詫びする、申し訳無い。全て私の責任だ。」
どうやら彼は計画に巻き込んでしまった罪の意識があるようだ。
(んんー、突然現れて謝られても理解が追い付かないんだって。)
「一からこの事を君らに説明しようとすると、果てしなく時間がかかる……」
「それでも、私たちに説明してよ」
「ニオ……」
「五十年以内には……できるでしょ?」
何だかニオは泣きそうな、悔しそうな顔と強い言葉で自分の本心をさらけ出していた。
「許せないよね。」そんなことも言ってたっけ。
(許せないんだろうな。)




