#047 ━区別━
「……だから大人は居ないのかってキミは言ってたけど、今この星に住んでいる人々は地球と比べたら、ごくわずかで人口のほとんどは楽園凍結をしているんだ。」
(成熟したら楽園かぁ。そりゃあ、環境的には仕方のないことなのかも知れないけれど……)
「住人はノロールム人を含む四種界が同じ比率で満遍なく暮らしているんだけど……それとはまた違う枠組みでラノハクトは住民を四種類に分類しているの。」
「複雑なんだね……」
「まずは一つはリサーチャー。リサーチャーは指導者や研究者など星の維持に必要な大人の人達のこと。私たちが尊重すべき存在。
そして二つ目ユートピアン。いわゆる楽園凍結者のことで住民の九割以上を占めている。子供を産み、学生まで育て上げた後、凍結を望んだ、もしくはこれから望む人々。
三つ目ライファー。生き方にこだわりを持つ少数派、現実観測主義者の人達のことで、その実態はよくわからない。今でも星に一定数いるけれど、私は良い印象は抱かないな。
最後に四つめ、学生。私たちのこと。星に暮らす人々の過半数は学生なんだけどその親のほとんどはユートピアンなんだ。」
「そんな風に分かれてるんだね……」
(むしろその四つしか無い——とも言えるのかもしれない。)
僕が地球でそうしたようにラノハクトの何もかもを教えてもらいたかった。
「だからこの星の人は切り離されてて、多様性が無く偏っている。文化も考えも。そして技術も限界が見えていて、いくつかは急速な退化が始まっている。地球とは違って狭い現実に生きている。」
「そうなんだ……」
「私は将来何かになりたかった……何になればいいんだろうね……」
(……。)
「ごめんね……こんなこと言っても、君に気を遣わせるだけだったね。」
「いやいや——」
「この星のこと嘘偽り無く、ただ伝えたいって思ったんだ……」
僕はただその事実を聞いてあげることしか出来なかった。
出来そこないでも……この世界をどうにかすることはできないのか……
(人に胸を張って言える目標なんて一つもなかったけれど、今初めてそれができた気がする。)
(変えたい。)
「着いたときから無数に空に浮かんでいるあれってさっき言ってた別荘?」
「そう。大昔の貴族の別荘だね。天空から近場の宇宙にかけて点在しているらしいよ。何故か少しずつ減ってきてるんだよね」
背を向け空を見上げながら答えてくれた。
しかし、僕は不思議でたまらなかった。あんなに空高く浮く建物を作る技術、地球に来て時間を止めるくらいの技術、果てし無く高度に発展しているのに、こんな風に都市が丸々水没してしまうなんて。
(なんとか出来ないものなのか?)
「でも、キミを人工現実のここへ連れて来れて、一緒に見て周って、色々教えれて嬉しかったなぁ。よかったよかった。」
「こちらこそ。教えてくれてありがとう。」
「キミの初めて見た純粋な感想を聞けてなんかスッキリしたよ。」
話をしていたら、知らぬ間に鉄塔の影が伸びてきた。
「暗くなってきたね。」
「夜が近くなるとこんな感じになるなんだな」
「今夜は満朋だから明るいねぇ。そういえば地球は大きな月が一つだけだから色々と予測しやすそう。」
(あ、ほんとだ二つある……。)
「すごいなこの夜空。」
知らない月夜がしんみりしていた僕らを迎えてくれた。
ここにも“知らない”がある。
「パン、パン、パン」
「すいません!ユセテピ二つ!」
(今度は何だ?)
「これ、蛇腹状の……何て言うか、就寝専用テントなんだ。」
もぞもぞとそれに入っていくニオ。
「この中に入って、団子虫みたいにぐるりと丸く繋ぎ会わせて……出来上がり。」
(はぁん。面白いなぁ。)




